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第6話 許嫁?そんなものは解消だ

お読み頂きありがとうございます!

「な、何ぃ!? 第三皇子から婚約破棄を切り出されたと!?」


 お父様が目を向いて驚いて、叫ぶように言った。

 語気が荒いので納得がいっていないのだろう。

 そりゃそうだ。アントワネット家は王家に資金から物資まで多くのものを提供している。

 その上、隣国のグリート王国との戦争でかなりの兵を派遣しているのだ。

 貢献度で言えば、他の有力貴族であるトートライズ公爵家、フェルミン候爵家、イシュア伯爵家以上だと私は考えている。


 軽んじられているのはこの世界の多くの国家が魔法至上主義であるからに過ぎない。


 同様にお母様も口に手を当てていつものように「あらあらまぁまぁ」と呆れたように言っている。


「はいお父様。でも私は特に気にしておりませんので、お父様たちもお気に為さぬよう」

「ばっかもーん!! こんな一方的なことが許されて良いはずがなぁぁぁい!!」

「貴方、マミにそんなことを仰ってもどうにもなりませんわよ?」


 お父様が目から涙を滂沱の如く流しながら激昂している。

 大概、親バカであるが、前世で家族関係が冷え切っていたことを考えると娘想いの良いお父様だと思う。


 私は前世では幼少期から預けられていた叔母から陰湿な虐待に遭っていたのだが、あの女――名前を出すことすら憚られる――は私に無理難題を吹っ掛けて、どうにかして解決しようかとする様子をニヤニヤと観察するんだよ。

 子供の頃ってどんなふざけたことを押し付けられても、期待に応えようと真面目に頑張ろうとするものなんだけど、困っているところでわざわざ何をどうするんだっけ?なんて説明させようとしてくる。

 自慢じゃないけど、結構な早熟だった私はどう言うべきかは分かるんだよね。でもこの女は人の視線がある場所――衆人環視の中でそれをやっちゃう。

 つまりプレッシャーを与えて言葉を封じようとしてくる訳よ。

 白々しいことこの上ないし、同じことが続くとドツボにハマる。


 あのニヤケた顔、おぞましいほどの悪意が詰まった目が忘れられない。


 動けなくなって何も言うことができなくなった私の顔や体をつねってくるんだよね。

 上手く答えられない罰として。


 だから当時の私は青あざだらけで、祖母や母なんかは可哀そうと言うんだけど、助けてはくれないんだ。私はそれから強いプレッシャーや人の視線を感じると、動くことも考えることもできなくなってしまった。


 頭の中が真っ白になるって訳。

 その女は優秀だと思いたい自分の息子と私とを比べて勝てないもんだから、自分が率先して虐めるんだよね。それで私はその親戚の家では無口になって終いには"ゴロ"と呼ばれるようになった。何もしゃべらないヤツって意味ね。


 まぁそいつさえいない場所だったら快活無敵、口から先に産まれてきた女と言われたものよ!


 それからが大変だったわ。

 人生の重要な時にそのトラウマが甦ってくるんだからさ。

 最初に就職した会社なんて、何をされた訳でもないのに常に監視されているような気がして、1人緊張状態が続いて気持ち悪い汗が止まらなかったな。

 お陰で辞めちゃったんだけど、仕事のストレスじゃなくてトラウマのせいのようなものよね。


 だから1人で研究に没頭できる分野に進もうと考えたんだけど、まぁどんな仕事でも人と関わらないでいるなんて不可能な訳で……。


 たまたま生きていられたのは、科学者として好きなことができたから。


 ―――

 ――

 ―


「――様! ――嬢様! お嬢様! 大丈夫ですか!?」


 おっと何やらトリップしていたようだ。


 お父様、お母様、アリスが心配そうな表情で私を見つめている。

 そんな顔をしないで欲しい。


「ごめんなさいね。問題ないわ。でもお父様、別にこちらから文句を言う必要はないと思いますわ」

「しかしだな。公爵家としての面子と言うものがあるのだ……」


「大丈夫ですわ。帝國に貢献している公爵家当主たるお父様の面子を潰すような真似はできせんよ」

「それはそうなのだが、私はそれでも許せんのだ!」


 いつもは温厚で冷静なお父様だけど、私が絡むと暴走しちゃうのよね。

 今だって先程までとは打って変わって憤怒の表情をしているし、語気も荒い。


「お父様、私のしていることはご存知でしょう? 私はこれまで様々なものを開発してきました。それはきっと魔法至上主義のこの国の……いえ、世界の常識を覆してしまうでしょう。帝國の第三皇子程度に私の婿が務まるとお思いですか?」

「確かにマミは我が領の発展に寄与してくれた。しかし魔法至上主義を変える……? そこまでのものなのかい?」


 お父様は魔法の力がない以上、恐らく何をして貢献しようが舐められると考えている。だからこそ帝室から皇子を婿入りさせて、その血を入れることで結びつきを強めようと考えたのだろう。


 それが今回の婚約破棄でご破算になった。

 とは言え帝室にとってアントワネット家は、魔法も使えず実力もない金のなる木である。機嫌を損なわないために、破棄の件はなかったことにして面子を立てようと画策してくるだろう。


「魔法だけの価値観をぶち壊す。これが重要なんです。魔法と科学を融合させた私の『魔導科学』で領内を更に豊かにし、他の貴族や他国を依存させるのです。民あっての国家、民あっての貴族ですわ。いくら皇帝陛下や貴族諸侯が民を学も技術もない下賤な者と蔑もうとも、彼らがいなければ何もできないのが道理と言うもの」


 私には腹の探り合いや駆け引きなんかはできないと思う。

 でもお父様とお母様がいれば話は別だ。

 私が魔法を使えない者たちのために所謂、魔導具を開発してお父様やお母様がそれを売り込む。


「そこまで言うのであれば、何か考えがあるようだ。話を聞かせてもらおうか」


 心の機微を敏感に感じ取ったのか、お父様も真剣な表情になった。

 これはお母様にも話しておきたいところなので、私は両親と共にお父様個人の執務室に向かう。


「お嬢様……そんな凄いものがお造りになられたのですか?」

「まぁ今できる物は造ったわよ? 後は情報が秘匿できるかよね。でも広めるためにはなー。一応、帝國に認可された魔導具なんかは特許のような扱いにはなるらしいんだけど……」


 アリスは私の実験風景なんかを見てるけど、流石に理解まではできないからね。

 商会でも作って売り出した方がいいのかな。

 それでアリスには秘書でもやってもらうとか。

 まぁ領内には魔法を使えないけど優秀な人たちが結構集まってるから、彼らにお願いするのもいいだろう。


 執務室に着いたので、中に入るとお父様とお母様が並んで座り、その対面に私が腰を降ろす。

 すぐに侍女がやってきて紅茶とお菓子を置いて退室していった。

 何回見ても早業だわ。

 私としては紅茶よりコーヒー派なんだけど……ってまぁそれはどうでもいい。

 それにしてもお菓子も綺麗に造られてるわ。

 これぞ造形美って感じで食べるのが勿体ないし、バカ高い砂糖がふんだんに使用されているらしく、実は謝りながら食べてたりするんだな、これが。


 さてと。アリスには開発したアイテムを持ってきてもらったことだし……。

 説明する内容は頭の中に既に存在している。

 アントワネット公爵家の命運を懸けるプレゼンテーションの始まりだ。


 不安げな表情をしている両親を前に、私は自信満々に口を開いた。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新予定ですが、出来ないかも知れないです。

申し訳ございません。

ちょっと書き直す事を視野に入れております。


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