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第4話 世界?広いらしい

神?そんな者はいない!

異世界らしい場所に連れて来られた狂科学者は

チートも神も否定して『魔導科学』で世界観をぶち壊す!

 地下書庫は多少埃っぽかったが、意外にも綺麗なものであった。

 アリス曰く換気を行っているためらしいが、地下室なんて中々で空気が淀んで滞留していそうな気がするのだけど。

 それに陽が入らないので、じめじめして薄暗いイメージしかない。


 地下室内は茶褐色の煉瓦造りになっており案外頑丈そうだが、地震が来た時はどうなるのか気になるところだ。

 見た感じではかなり年季が入っているような気がする。

 崩れないか少し心配になってしまうが、私が夢を見始めてから――生まれてから地震があったことがないので問題ないのだろう。


「アリス、換気ってどうやって行っているの?」

「それは風を送る魔導具ですよ、お嬢様。ほら、あそこの灯りなんかもそうです。魔核の力で点灯する仕組みになっているのですよ?」


 魔核か。

 家の中でお父様や騎士の人たちが話しているところを聞いたことがあるので一応は分かっている。魔物の額に付いていたり、体内に埋め込まれている魔の力――魔力?の結晶だと言う話だ


 これが現代日本人に伝わる異世界ファンタジーの世界だと言うのか……。

 まぁ仕組みは分からないけど、本を読めば分かるでしょ。


『マーミーさん! 魔力にご興味がおありで?』


 私の心を読むな。


「いや日本人なら誰しもが持っていると言っても過言ではないっ! それが魔力とか魔法とかそんなもんでしょ!」

『めっちゃ早口になってますけど?』


 ちくしょう!


「お嬢様、何かございましたか?」


 いかんいかん。

 アリスに聞かれたら今後に差し障る……。

 変人を見る目で接しられたら、流石の私もダメージでかいわ。


「な、何でもないわ。アリス、魔法について知りたいのだけど何処か分かるかしら?」

「いえ、私も初めて入りましたから……」


 それもそうか。

 禁書庫だもんね。

 アリスが色々なタイトルに目をやって探してくれているようなので、私も探してみることにした。

 魔導具があるからとは言え、地下室内は薄暗い。

 そのせいもあってか、書棚に並ぶ本はどれも雰囲気があり、古さと歴史を感じさせられる。


『それ、魔法の本ですね。でもマミさんは基礎から学んだ方がいいのでは?』

「あ、そう……そうよね」

『よろしければ私が力を授けて差し上げますよ? 神のちーかーらーでーね!』

「あーん?」


 神などいない。

 今更のうのうと神だって?

 どの面下げて出てきたのよ。


「お嬢様?」

「なぁに? アリス」

「いえ……何かすごく……すっごくドスの利いた声がしたような気がして」

「そんな訳ないじゃない。ここには私たちしかいないのよ?」


 私がそう言うと、アリスの顔色が蒼白に変わった。

 薄暗いのにもかかわらず分かるほどだ。

 相当ビビり散らかしているのだろう。

 アリスが何を想像しているかが手に取るように分かる。


「アリス、大丈夫よ。この世には神もいなければお化けなんかもいないのよ? 魔物ならともかくね!」


 私はお抱えの狩人が魔物を仕留めて邸宅に運んできたのを見たことがあった。

 地球では決してお目に掛かれないような異形であったが、強いて言えば猪に似ていただろうか。


「いやいやいや……死霊なんかは地下迷宮や墓地に現れると聞いたことがあります……」


 ガクガクと震えるアリスの肩にそっと手を添えて、私はよくよく言い聞かせてやる。


 よーく覚えておきなさい?


「HAHAHA!! アリスったら心配性ね。もしいるならどうやって倒せばいいのよ。いい? この世に殴り倒せない物なんてないの」

『はっはっは! 脳筋ですねぇ!!』


 うるせぇ!

 こちとら頭脳派だぞ!


「まぁとにかく大丈夫よ。本を探すからアリスは上で待っていなさい?」

「そんな! お嬢様をお護りするのが私の使命ですから!」


 アリス……なんて良い子!

 貴族令嬢なんて性格ブスばっかだろうと考えていた頃が私にもありました。


「あっこれがいいかな? 猫でも分かる全魔法の基礎学」


 何処かで聞いたような名前の本だが、どうにも良く分からない。

 そっと書棚から1冊を抜き出すとずっしりと本の重みが伝わってくる。

 基礎とは言え随分と分厚いものだが、これは比較的新しいのかページの風化は進んでいないように見える。


 取り敢えず目を通してみると、人間や魔物の体内には魔法の元とされるマギカと言うものが存在し、それが変質して魔法なる現象を引き起こすらしい。

 ただし魔法を使うには血統が重要視され、太古より受け継がれてきた英雄の子孫の血脈に繋がる者しか扱えないと言う。


「なんだ。皆が魔法を使える訳じゃないのね」


 また魔法には複数の属性があり、1人につき1系統しか極めることができないようだ。


「そっかぁ……色んな魔法が使えるのかと思ったけど、現実はそんなに甘くないんだね」

『私に任せて頂ければ、それはそれは甘~くさせて差し上げますよ?』


 黙れストーカー。


 おっと今は本を読む時間だ。

 気を切り替えなきゃね。


 うちはどうなんだろ?

 公爵家なんだから良い血統なのかな?

 でも私は人間その人ではなくて、血統だけで見られてるようで何だか嫌な感じがする。


 もしかするとそのせいで差別なんかがあるかも知れないし。

 あ、平民でもうすっらと血を持っている人がいるのね。

 悠久の刻を経て血も色んな人と混じり合ってるのか……。


「うん? 7英雄の血が最も尊いのね……彼らは魔帝を倒して各地に散って国家を建設したと。ふむふむ」


 魔法以外にもその成り立ちなども書かれているため、興味を持ってスラスラと読める。取り敢えずは、マギカを魔力に練り上げる必要があって、それが魔力強度となり威力に繋がるらしい。


 練成する方法は心臓に血を集めるように――


「って分かるかぁ!」

「お、お嬢様!?」


 突然の私が発した大声にアリスが驚いて声を上げた。


 はッ……ついつい声を荒げてしまった。

 だってね?

 心臓に血を集めるようにって何だ?

 普通心臓には血が集まってくるものなんだが?


「ご、ごめんなさい、アリス。ちょっと興奮してしまったみたい」

「え、ええ本当に驚いたじゃないですかぁ!」


 私が慌てて謝罪するとアリスはもう涙声になっている。

 怖いのに付き添ってくれるアリスちゃんマジ天使。


「ごめんね。アリスは何か良い本見つかったかしら?」

「あ、はい……お嬢様が世界を見ているとのことでしたので、世界地図が乗っている冒険記を見つけました」


 何やらお父様との会話を覚えていて、その関連の本を探してくれていたようだ。

 その献身性に私の心が温かくなる。

 未だかつて味わったことのない感覚だ。

 眠りにつく前に願った家庭円満が、叶えられているようでとても嬉しいんだ。


 流石はアリスね。

 侍女の鏡だわ。


「それは是非読みたいわね。でもこの本って持ち出してもいいのかしら?」

「さぁ……でもお嬢様、一応は禁書庫なので駄目なのでは?」


 尤もなことを言うアリス。

 ぐうの音も出ないほどの正論なので明日からはここに通うことにしよう。


「後で読むわ。避けておいてくれる?」

「ラジャです。お嬢様!」


 私は再び魔法書に目を通し始めた。

 練成する方法は心臓に血を集めるようにして一点に気を集中させる感覚。

 ふうん。それをイメージとして掴むのが最初のポイントかぁ……。

 それから集中させたマギカの塊をこねるように念じると。

 そして放出する。


「集中、凝縮、具現化、練成、放出ってところかしら……明日からやってみようかな」


 他に何かヒントはないかと他のページも見てみたが、あまり重要と思われる内容ではなかった。

 基礎理論と言うか、魔法に関する基礎的な知識の本だったようだ。


 魔法のこと、血統のことはお父様に聞けばいいとして、次はこの夢の世界がどのようなものか把握したい。アリスが見つけた本を開き、読み進めていくと大きな世界地図が記載されていた。とは言え、現代のような精密な地図ではなく、かなりいい加減に書かれている。


 これは想定の範囲内なので問題はない。


「ふむふむ。世界は5つの大陸に分かれていると……私がいる国はここか」


 大陸は中央に1つと、その北東、南東、北西、南西に1つずつ存在しているようで、ザルツトス帝國があるのは北東の大陸――ザルツバーグ大陸と言うらしい。

 地図によれば北東部にあるとは言っても、大陸でも南部の方だ。

 寒いと思わなかったのはそのお陰だったのだ。

 早く外に出られるようになってどんな世界か肌で感じてみたいものである。


「結構広そうだなぁ……色んな場所に行ってみたいわね。貴族だったら……無理かなぁ」


 厳しそうな感じがするが、せっかくなので様々な体験をしてみたいと思う。

 そうすることが人間性を豊かにできる手段だと思うから。

 まぁ現実ではトラウマと仕事でそれが活かせていたか疑問ではあるけれど。


「やめやめ! せっかく現実から逃げてきたんだから楽しまなくちゃね!」


 世界は広いようだし、魔法もある。

 いつ覚めるかも分からない夢だけど、私は楽しんで見せるわ!


『だからーそろそろ現実見て下さいよー』


 うるさいってば!!

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。


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