水族館に行こう
水族館に行きたい、と兄が言った。父と遊ぶのを断られた悲しみもあるのかもしれない。
という事で今日は、母と兄と私で水族館にいる。父?「人の多いところは嫌いだ」だって。まぁ共感はするけど。
「ぺんぎん、かぁいーね!」
「うん。あ、ご飯の時間だって!」
飼育員が、ぽいぽいと魚を放っていく。ペンギンが、つるん、と魚を飲んでいる。やっぱりペンギンは人気なんだろう、人がぎっしり。生き物は好きだけど、私だってやっぱり人の多いところは苦手だ。
「まま、だっこ。」
潰されそうで怖いから、抱き上げて貰う。この頃はほんと、みんな気性が荒いというか、令和よりも安全への意識が薄いというか。ほんと幼児としては怖い。恐怖が羞恥を上回る程度には。大丈夫、私はまだ三歳児。だっこされててもなんらおかしいことは無い年齢だから!
その日はそのまま、母に抱き上げられて水族館を巡った。熱帯魚やら何やら見ていた気がするけど、途中から記憶がない。寝てたんだろう。次に起きたのは土産物売り場だった。
「このクッション欲しい!」
兄の声に目を覚ました。見ると、やたらでかい(1、5メートルくらい?)あるサメ型クッション(というか抱き枕?)を兄が抱えていた。白と黒と水色とピンクがある。絶妙にゆるい感じでデフォルメされている。いいなそれ。
「しおりもほしい!しろ!」
「いいわよ。翼は何色が良い?」
「黒!」
大切にしなさいね、と買い与えられた。
そういうわけで、私は自分より大きいサメと一緒に寝ているのだ。