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祖父母からの呼び出し

私も、もうすぐ小学生。

母は、退院してから実家に帰っている。この家に帰ること無く帰省したので、私は妹に会ったことない。

実を言うと、私は母が出産する前もお見舞いに行ってない。どう考えても私の存在はストレスの原因にしかならないだろうし。ごめんね……。でも、私は生き方を変えるつもりなんて無いから。

正直言うと、私にとっての両親は前世の両親なのだ。だって過ごした時間が違いすぎる。その上、今世の母は私の面倒をお手伝いさんに任せることもよくあったし。


……ITスキルを磨いて将来バンバン稼いで恩を返すからさ。ごめんほんとに。


ということで追加パーツを色々買ってもらい、本体価格と合わせると100万に届こうかというお金が掛かったパソコン。それをいつものようにいじくっていたある日。


「栞、少し良いか?話があるんだが。」


おや珍しい。父は大抵、唐突に話し出すというか、わざわざもったいぶって「話がある」なんて言ったのは、母が入院したとき以来だ。一気に不安になってきた。

キーボードから手を離し、父に向き直る。そっと目を逸らされた。えぇ……。


「何ー?」

「私の両親が、君に会いたいと言っているんだが。」

「お祖父ちゃんとお祖母ちゃん?」

「そうだな……。」

「居ること自体初めて知ったけど?」

「そうだな……。」

「そうだな、以外何か言って?」

「すまない……はぁ。」


大きな溜息をついて、父は両手で顔を覆った。え、そんなにヤベー人なの?


「何から話すかな……。私が結婚した経緯、いや、我が家の歴史からか。」


そう言って父はまた大きな溜息を吐いた。


「生まれてからずっとここで過ごしている君には分からないだろうが、この家は一等地にある。」


知ってる。この家(というか邸宅)、庭もでかいし、そのくせ便利な所にあるし、辺りを見渡してもほんと高級住宅街としかいいようのない上品な所だ。


「私の家、三滝家は旧華族の名門でな。戦後も没落することなく、土地や山林を所持してきた。この家も、明治以降受け継いで来たものだ。……面倒な事に。」


父、めちゃくちゃお坊ちゃまじゃん!まぁ大学教授だしいいとこの出身とは思ってたけどさぁ。……うん?てことは私も結構なお嬢様では?てか、


「面倒って何?」

「しきたりも多いからな。私の両親は、私が未婚で居ることを許さなかった。結婚相手も、旧華族以外から選ぶ事を選択肢にすら出さなかった。だが、私は片端から見合いを断った。

旧華族の世界は狭い。結婚したがらない変人だとすぐに知れ渡った。そのうち、私に縁談を持ち込む旧華族家は無くなった。私の両親は悩んだ。旧華族の中でも、三滝に釣り合う家格の娘を嫁に迎えるべきだと考えて居たから。……馬鹿らしい。」


へ、へぇ……ドラマか?

父はとうとうと語りながらも、私と目を合わそうとはしない。


「そして私の両親が目を付けたのが祐子だ。

祐子の実家である御堂院家は、家格こそ高いものの戦後没落して金に困っていた。

私の両親は、多額の金銭援助と引き換えに祐子を金で買った。祐子は16歳になると同時に、高校卒業すらすることなく私と結婚した。驚いたぞ。いきなり女性を連れてきて「今日からこの人と住め」なんて言われたからな。」

「ドラマか?」


おっと本音が。ふうん、でもそんな理由があったんだ。なんか仲良く無いなーとは思ってたけど。母からすれば最低な誕プレじゃん。


「私にも好みがあるんだがな……。」

「好きなタイプとかいう概念がお父さんにあったんだ……。てか、それお母さんに言ってないよね?」

「……?その時に伝えたが?」


……。


「好きな事に邁進して、自分の意見をはっきり述べる知的な人は男女問わず好ましいと思うな。」


へー、お母さんとは真逆のタイプじゃん。……うん?男女問わず?


「お父さん、男の人もいけるんだ……」

「えっ?」

「えっ?」

「……人として好ましいという意味だ。」

「いや別にいいと思うよ?恋愛対象は人それぞれだし。」


へぇぇえ、そう。知的で好きな事に一直線……父の同僚(男)に何人かいるな。どうしよう。今度大学に行ったとき、腐った目で見る自信しかない。腐女子魂は死んでも変わんない。


「いや本当に……まぁその話は別にいい。ええと、何だったかな。」


腐腐腐腐腐腐(ふふふふふふ)……。そんなに恥ずかしがらなくても……じゅるり。


「お父さんとお母さんのお家が旧華族で、お母さんをお金で買って、それで?」

「とにかくそういう、面倒で強引な相手なんだ、君の祖父母は。」

「でも今まで興味無かったんでしょ?」

「あぁ。翼は長男で後継と目されていたから、あちらも幾度か会っているが。一応、君が生まれたときに一度会ってはいるぞ。」


覚えてねぇわ。生まれたときから意識自体ははっきりしてたけど、耳とか目とかはぼやーっとしてたし。


「今になって会いたいと言ってきたのは、君が公立小学校に通うからだ。」

「?」


そういや小学校受験してないな。パソコンの本読むのが楽しすぎて忘れてた。でも、公立小学校に通ったとして、だからなに?


「翼は学習院初等科に通っている。」

「そうなの!?知らなかった……!」


お坊ちゃまじゃん……!お坊ちゃまだった……!でもそうか、旧華族とか皇族とか通ってるらしいもんね。


「あれは私の両親の意向だ。三滝家の跡取りたるもの名門出身で無ければ、というな。」

「ふぅん。え、じゃあ私も学習院に通った方がよかった?」

「いや、君は向いていない。」


父は言い切った。今日初めて目が会う。そんなに庶民オーラ丸出しかな?


「君は、考え方が私に似ている。」


そう言って父は、目を伏せた。んー、まぁ母よりは父の方が話はあうけど。


「学習院は伝統と格式を重んじる。君は、革新と合理性を重視しているだろう?良家の娘としてどこかに嫁ぐ人生を送りたい訳ではなく、社会人として自立したいなら、公立小学校に行くべきだ。」

「……筑波大付属とかは考えなかったの?」

「学校は勉強のみをするところでは無い。」


父がそれを言うのは意外だった。父はそもそも学問の探究以外に価値を見いだしていないように思ってたから。


「いいか、栞。学習院に限らず、私立の小学校や国立小学校に入れる子供は限られている。……そして、世の中には、小学校にすら行けない子供もいる。

君を公立小学校に入れることにしたのは、出来るだけ多様な人間と関わって広い視野を持って欲しかったからだ。

君はおそらく、勉強の進度が皆と同じだと簡単すぎて詰まらないと感じるだろう。けれど、詰まらないと自分で思う事もまた、大切な事だ。」


ごめん、前世では公立だった。

うん、でも、そうか。小学校受験の話が出なかった理由が分かってちょっとほっとした。ぴょん、と父に飛びつき抱きしめる。思えばこの人生が始まって以来、自分から人と触れ合おうとするのはこれが初めてだ。


「いろいろ考えてくれてありがとう。……大好き。」

「……あぁ」


そっと抱きしめ返された。

両親は最終的に心を通じ合わせないタイプの政略結婚です。

父……急に、びーえる設定生えてきた。どうしよう。※ホモォなことにはならないです。

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