お姉ちゃんになるの
今回の話は、妊娠に対する表現(流産)があります。結果的にはちゃんと生まれますが、苦手な方はご注意下さい。
父に大学に連れて行って貰ってから何カ月か経ち、十月。少し肌寒くなってきた。あれから、もう何回も大学に行った。
そんなとき、母が入院したことを父から告げられた。
「えっ!?なんで!?」
「このままでは流産の危険性があるからだ。」
「そもそも赤ちゃんがいること自体初めて知ったんだけど!?」
もしかして、母がプッツンしたのは妊娠初期だからってのもあったってこと!?うわぁ、やっちゃった。妊婦さんに対してさぁ。
「……栞はさ。」
兄がこちらを見ている。全くの無表情だった。
不意に思った。兄と最後にまともな会話をしたのって、いつ?私が辞書貰ってから二年ほど、話らしい話をしてなくない?
「父さんに似てるよ、本当に。」
そう言って兄は食卓を立った。
──え?どういうこと?
「まぁ確かに栞は私に似ているな。」
父、そこじゃ無くない!?
……父は私以上に人の心を推し量れない。兄が怒ってる(多分)理由を父に聞いても分かんないだろう。多分父は、兄が不機嫌な事すら分かってない。言葉通りに受け取ったから、「確かに似ているな」なんて言うのだ。
いやでも、なんでだ……?
多分兄は、父の何かが気に入らない。そして、そこを受け継いでいる私の何かが、気に入らない。
例えそうだったとして、……何か兄の気に障る事を言っただろうか。母の妊娠に気付かなかった事?いやでも、幼稚園児に求める事じゃ無くない?そんなお腹は膨らんで無かったと思うし、多分。
わかんない。どうしろと?
後に後に伸ばすのが、私の悪い癖だってわかってたのにまた、私は伸ばした。
何か決定的に間違えたんだろう、きっと。