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本能  作者: 葉っぱ
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4

八と会うようになってから5週間後の金曜日の夜に、粋花からふとこんなことを言われた。


「ねぇ。明日もどこかへいっちゃうの?」

「…うん。」

「どこへ行くの?」

「カフェだよ。」

「カフェね。」

「…」

「誰と行くの?」

「会社の人と。」

「名前は?」

「名前は、高木さん。って人。」

「高木さんね。」

「もしかして疑ってる?」

「いいえ、そんなことはないわ。でも、ちょっと心配なの。最近毎週のように遊びに行っちゃうし、なんだかよそよそしいじゃない。」

「そんなことないと思うけどな。」

「私がなにかしちゃったなら謝りたいの。それに、私がなにか至らない点があるなら言って欲しいの。私、直すから。」

「いや、粋花は悪くないよ。もうすぐ終わるから安心して。でも今は言えないんだ。でも事が終わったらちゃんと言うから。今はごめんね。」

「…うん。」


たしかに粋花には悪いことをしていると思っている。

しかし、ここまで来てしまった以上、引くに引けなくなってしまっているのだ。

このことを粋花や笑花に話せば、呪いがそちらに移るのだと八が言っていた。

それこそ良くないじゃないか。

除霊をすることこそが最前に取り組むことだと思い、自分に言い聞かせる。

しかし、心の奥底では、本当は八と会う時間が楽しいという気持ちがあるのかもしれない。


いや、それは嘘だ。

と思う。


翌日も東京で八と会った。

しかし、今日は様子が違うのだ。

いつものサブカルな印象とは異なり、初めて彼女にあった人のような、威圧感のある女性になって集合場所に登場した。


「八さん。めずらしいね。」

「そろそろ除霊をしてもいい頃合いなの。だから真面目な格好をしてきちゃった。」

「ほんと?やっぱりまだ僕には幽霊が着いているのですか?」

「ついていますよ。3体ね。みんな元気そう。」

「おばけに元気とかあるんですね。」

「今日は、私の家に来てもらいます。除霊の準備もできているから。」

「え、家ですか。」


さすがにまずいか。そう思いはしたが、今日で最後だ。そして念願の除霊をしてもらえるのだと思うと、別に悪いことではないような気もしてきた。

最悪、粋花にバレなければいいのだ。

家からここまでは遠いし、バレようがない。そしてこの除霊を機会に八との距離を取れば良い。そう思った。そう、これはあくまでも除霊のためなのだ。

やましい気持ちなど1ミリたりともないのだから。


八の家は、そこから10分程度歩いた所にあった。

かなり古くからありそうな平屋で、立派な作りだったが、中に入ってみると、薄暗く嫌な気持ちになった。


「…おじゃまします。」

「この家、私以外居ないから大丈夫ですよ。」

「そうなの?」

「うん。」

「着いてきて。」


案内された部屋に入ると、その部屋はまさに異様そのものだった。

明かりは全くなく、黒のカーテンで四方八方が塞がれており、真ん中にはロウソクが炊かれている。よくよく周りを見渡すと、周囲には御札が貼られていた。

こんなに大掛かりな除霊が始まるとは思わなかった。


八は部屋には入ってこなかった。

「長田さん、聞こえる?」

「はい。」

「ロウソクの周辺に、赤い座布団が置いてあるでしょう?底に正座して。」

「…はい。」

「そしたら、服を脱いでください。」

「…はい?」

「脱いだら近くにカゴがあると思うからその辺に置いておいて。」

「いや、服を脱ぐんですか?」

「私語厳禁、黙って私の指示に従って。あなた、死ぬわよ。」

「…はい。」

「ロウソクの前に目隠しがあるからして。」

「……はい。」


目隠しをした所で部屋のドアが開いた。

八が入ってきたのだ。


「八さん。」

「黙って。喋っちゃダメ。ただ、言うことを聞いて。返事は「はい」だけ。」

「…はい。」


八は扉を閉め、ゆっくりと動き出した。

彼女の気配から、自分の後方にいることを感じ取った。


何が始まるのかと思い緊張していると、背中につめたくてヌメヌメした感触がした。

おそらくそれはローションだった。

「ひぇ。」

驚いて声を出すと、八に背中を叩かれた。

どうやら、八が背中を触っているようだった。

八は身体全体をゆっくりと触り、ローションを身体全体に塗っている。恥ずかしさとくすぐったさから声を出してしまうこともあったが、その度に背中を叩かれた。


全身がローションだらけになった。

俺はすっかり興奮していた。


一段落付いたのか、八が背中から手を離した。

目隠し越しからでも少量の光が入ってきたことから、八が部屋の明かりを付けたことがわかった。


「長田さん。目隠し取っていいですよ。」


目隠しを取って驚愕した。


八が服を着ていなかったのだ。

とても動揺してしまった。

部屋に裸の男女2人、しかも身体中がローションまみれになっている。


「え、ええと。八さん。」


あたふたしていると、八が自分の前に座った。


「いれて。」

……

………

「…え?」

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