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待ち合わせは都内のカフェだった。
わざわざ都内に来る必要がないくらいのカフェではあったが、ひとまずは良いか。
先に着いたので、彼女に先に着いた旨を伝え待っていると、10分後くらいに彼女は到着した。
しかし驚いた。彼女前回にあったときとは様子が違っていて、だいぶサブカルな印象に変化していたのだった。
「八さん…?ですか?」
「そうです。八です。長田さん、お久しぶりです。」
「なんと言いますか、前回お会いしたときとは印象がまるで違いますが。」
「あー、そういう気分だったんですよね。」
「いや、まぁいいんだけどね。」
「…」
「…」
「まだ居ますね、幽霊。」
「そうなんですか。どうすればいいですか。」
「とりあえず私と仲良くなってください。あなたが私にちゃんと心を開くまでは、しっかりとした除霊ができないんですよ。」
「仲良くならないと除霊ができないってこと?」
「今そのように言いました。」
「たしかに。」
仲良くなると言っても少々難易度が高いのではないかと思った。
しかし八は、あの見た目のわりに、人とコミュニケーションをとることが得意なのだと思う。
こちらにどんどん話題を振ってくる。
「お仕事は何してるの?」
「サラリーマン。」
「だから、どんなお仕事してるのって。」
「スポーツ用品を売ってるよ。」
「へー、じゃあ趣味は?休日はなにしてるの?」
「ギター弾いてるよ。」
「おー、すごい。じゃあさ、好きな料理は?」
「んー、ハンバーグかな。妻が料理上手でさ。」
「奥さん、美人だもんね。奥さんとは結婚してどのくらいなの?」
「6年かな。」
「娘さんはいくつ?」
「5歳。」
「かわいい子だったよねー、端っこから見てたよ。」
「結構見てたんだなおい。」
カフェだけでは退屈だったので、2人で買い物に出かけた。夕方には彼女と少々仲良くなった気がした。
「今日は、楽しかったよ。ありがとう。」
「私も、でもまだ除霊をできるほどの親しさではないです。また来週。」
「来週も?んー、いいのかなぁ。奥さんが心配しちゃうよ。」
「あー、幽霊がそろそろ足食べちゃいそうな顔してるけどなー。」
「…」
「どうするの?」
「わかったよ。行こうか。」
本来ならばこの誘いを断るべきだった。
除霊をする為だとはいえ、妻子を持ちながら他の女性とサシで遊びに行くことはあまり良くないことなのはわかっていた。しかし、単純に今日の遊びが楽しかったのだ。そして八は優しくていい子だった。
次週の土曜日は、八と浅草へ行った。
東京で食べ歩きをするのだそうだ。
その次週は映画館へ
その次週はミュージカルへ行った。
毎週のように除霊のための遊びに八と出かけたのだ。