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娘が5歳になった誕生日の日の朝、娘が1月生まれだということもあり、家族で初詣に行くことになった。近所という訳ではなく、軽めの日帰り旅行程度のもので、県では有名な神社へ参拝に行くことにした。
「笑花、粋花、そろそろ出発しようか。」
「笑ちゃん、ちゃんと五円玉もった?」
「あ、忘れてた。」
「うふふ、ママに似ておっちょこちょいね。」
「パパ、ママ、五円玉持ったよ。」
「じゃあ行こうか。」
「今日行くところ、お化けがでるんだってよ。笑ちゃん。」
「えー、おばけー?お友達になれるかな?」
「笑ちゃんならなれるかもね。」
「イケメンなおばけだといいなー。」
「パパはイケメンなおばけのお友達なんて許しません。」
神社につき、参拝をする。
笑花がおばけを警戒する様子がやけにかわいい。また、それをバレないように眺めている粋花がまたかわいい。
あぁ、幸せだ。
笑花と粋花がトイレに行ったため、2人の帰りをベンチに座って待っていた。
良い景色だと思いつつ周囲を見渡していると、1人の女性が自分の前を通り過ぎて行った。
彼女はなんというか、少々異彩を放っていた。
別に容姿が良いとか悪いとかではないのだが、姿勢がよく、目がキリッとしていた。まるで何かと戦っているかのような表情で、とても神社に参拝に来ている人物だとは思えなかった。
とにかく、彼女には怖くて近寄り難いオーラがあったのだ。
そのオーラに惹き付けられ彼女のことを見ていると、彼女がポケットからお守りを落とした。
自分は彼女が落としたお守りを広い、彼女に渡そうとしたが、彼女の姿は確認できなかった。
どうしようか考えているうちに2人が帰ってきた。
「パパ、どうしたの?お家に帰ろ?」
「あ、うん、帰ろうか。」
「みて、ママにジュース買ってもらったの。」
「…よかったじゃん。」
「…どうしたの?」
「粋花、実は今さ、お守りの落し物を拾っちゃってさ、ちょっと届けてくるよ。先に車に戻ってて。」
粋花に車の鍵を渡し、神社の中へ向かおうとすると、例の彼女が後ろに立っていた。
「あの、それ、私のですよね?」
「あ、はい。そうです。すみません、さっき拾ったので届けようかと。」
「ありがとうございます。でも本当は、あなたとお話したいなって思って、あなたにとってもらえるように落としておいたんです。」
「ええと、新手のナンパですか?」
「ナンパじゃないですよ。」
「では、なに?」
「あなた、おばけが背中についてますよ。」
「え?」
「呪われてます。」
「呪われてる?」
「はい。男の人と女の人と男の子。なにか人から恨まれるようなことでもしました?」
「したかも、それない。」
「あまりにもかわいそうだと思ったから声をかけてあげました。それをナンパだなんて。」
「すみません、失礼しました。」
「私は霊媒師です。除霊してあげましょうか。」
「はい、是非お願いします。」
「でも今日はむりー。」
「へ?」
「今日はもう集中力がないからダメです。帰ったらこの番号に電話してください。」
「あ、はい。わかりました。」
彼女の電話番号を受け取った。
「それじゃ、また。」
「あ、奥さんとか娘さんには言わない方がいいですよ。たぶんその霊たち、言うと乗り移ります。」
「はい、わかりました。」
なんだか怪しい霊媒師の女性の電話番号を手に入れてしまった。