発掘されたゴーレムの記憶
古代の崩壊した商店街を見つけてから、一週間ほど経っていた。
瓦礫の中から、古代の声がする遺物を採掘しながら、死霊術師のナギによって記憶を読む作業を続けていた。
「魔力を使う道具の技術者と魔法使いたちの戦いなわけね」
スープに口を付けながら、ナギが説明を始めた。
「俺からすると全員魔法使いだけどな」
「似た者同士ほど差異が気になるものなのよ。だいたい、隣国と仲のいい国なんてないでしょ」
「そういうものか」
塔の下で焚火をしながら、鍋を煮て脇で魚を焼いている。島の魚は大ぶりで美味い。
「で、なんで死体も残ってないんだ?」
「ここは密貿易の場所だったんだよ。誰かの故郷でもないし、死んだ人間は全員故郷に帰ったんじゃないかな」
「でも宿屋まであったんだぞ」
「そうなんだけどね……。死体がないから狙って声が聞こえないんだ」
ナギも断片的にしか古代の記憶を辿れないらしい。
「あ、でも、ゴーレムが見ていたみたいだ」
ナギはゴーレムの欠片を袋から出して、焚火の前に置いた。
いろんな部品が千切れ飛んでいるが、ゴーレムの頭だった物らしく、ナギが会話をしていた。
「ああ、そうか。そりゃそうだわ」
「なんて?」
「古代の商店街には、転移してくるためのポータルがいくつもあるから、古代から続く魔法使いの家系の子孫が、価値のある物も遺品も全部持って行ったらしい。しかもそういう家系は世界中にいくつもあるから、何世代にも分けていろんな人たちが運び出したんだって。あるのは壊れたゴーレムとか修復できないような鎧なんかだけだってさ」
「そんなに古代の魔法の技術って高かったんだな。今は衰退している時期なのか?」
「あ、魔法に関しては失われている技術は多いと思う。こんなゴーレム見たことないもんね」
「でも、なんであんな街をダンジョン内に作ったんだ?」
「聞いてみる?」
「うん」
ナギは魚の脂をローブで拭きながら、羊皮紙にメモ書きをしていた。羊皮紙に書くなんて贅沢だが、塔には羊皮紙のスクロールもインクもバカみたいに余っているらしい。
「ああ! そうなの!?」
「なんて言ってるんだ?」
「そもそも古代のダンジョンって、今のダンジョンみたいにその場所に迷路があるわけじゃなくて、別の場所に飛ばされていたみたい。だから普通の一般人が入ろうとしてもただ壁があるだけで、魔法使いがダンジョンキーを持って入らないと、辿り着けない場所だったみたいね」
「え? じゃあ、別の場所に作ってから、入口をどこかに設置するってこと?」
「そういうこと」
古代の魔法使いたちは複雑なことをしている。
「魔法自体が隠された秘技だった時代は、そうやって守っていたみたいね」
「なるほど……。じゃあ、東島のダンジョンなんて、ものすごい広いから、古代から何度も魔法使いたちに使われていたのかもね」
「それはありえるね。隠された場所の方が、何かと利用価値はあるからね。ただ制度とかルールを守る意識が薄いから、一度喧嘩をすると止められなくなるみたい。あの商店街も何度も作り替えられて、ドーナツ型になったらしいわ」
「へぇ、そうだったんだ……」
夕方、カタログの魔女ことロギーが塔までやってきた。
「東島のダンジョンにポータルを仕掛け終わったよ。バカみたいに広いね。あのダンジョン」
「地図は役に立った?」
「あれがなかったらもっと時間がかかっていたわ」
「これで俺もポータルを使って50階層まで一瞬で行けるのか。一応言っておくけど、俺は全然魔力がないんだけど、使い方は違う?」
「そんな人が本当にいるとは思ってもみなかったんだけど、一応裏技としてこれね」
ロギーは青白い炎を灯すランプを渡してきた。
「魔力で燃える芯を使っているからちゃんとポータルが起動するわ。帰りのために、別のランプを用意した方がいいかもしれないけどね」
「わかった。探索には今までのランプを使うよ。ありがとう。そう言えば、ロギーはダンジョンが実は無数に存在していて、魔法使いたちがダンジョンキーを使わないと入れないような場所だったって知ってた?」
「ああ、昔は亜空間に存在していたって話を聞いたことがあるわ。なんか見つけたの?」
「実はね。このダンジョンの地下に……」
ナギが説明すると驚いていた。
「へぇ! 古代の商店街!? そんなものが見つかることがあるのね。まぁ、地表に現れているようなダンジョンはごく一部ってことね」
「そうなのかぁ……」
俺としては地下にあるまだ発見されていない廃ダンジョンの遺跡もトレッキングしてみたい。
「なに? 山屋はまだ見つかってないダンジョンも入るの?」
「廃ダンジョンの遺跡なら入ってみたいよ。でも、地表に入口がないんじゃ探しようがないじゃないか」
「そんなことないよ。ポータルキーさえあればいいわけだし、なくても座標さえわかれば飛ばせるわ」
「当てずっぽうに探しても見つからないだろ」
「いや、地下の商店街にはポータルがいくつもあるわけだから、それを読み解けばいいんじゃないの?」
ナギがロギーに聞いていた。
「ああ、ポータルがあるならキーも作れるわよ。対になっているはずだから、向こうにも行けると思う。古代の魔法使いが住んでいた場所なら、何かが残っているかもしれないよ」
「え!? じゃあ、古代魔法使いの痕跡を辿っていけば廃ダンジョンまで辿り着ける?」
「可能性は高いわ」
「それやりたいんだけど、とりあえず金貨10枚くらいでどう?」
「やるわ!」
「山屋は廃ダンジョンに無駄金を使い過ぎる。ロギーも本当にあるかどうか何かわからないんだからあんまり期待しないようにね」
そう言いながら、ナギは旅の準備を始めていた。




