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廃ダンジョン・トレッキング連載版  作者: 花黒子
飛竜の谷編

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23/115

女忍者と戯れを


 廃ダンジョン・トレッキングは基本的に一人でできる趣味だ。誰もいないダンジョンを探索するだけなので、依頼者がいなくても一人でも楽しめる。

 ただ、それでも、少なからず何人かは関わることがある。


 忍者の彼女もその一人だ。

 以前、西の都市にある廃ダンジョンで出会った初心者冒険者パーティーの盗賊シーフとして働いていたが、俺と探索しているうちにパーティーを抜けてしまった。

 そもそも彼女は器用だったし、罠の解除や設置は一人でもできるから、教えたらすぐに伸びるだろうと思ったら、仕事を終える頃には、すっかり一人前になっていた。それに、あまりパーティーメンバーと上手くいっていない感じだったので、本人もよかったと思う。


 そんな女忍者がわざわざ辺境の三軒宿屋に俺を訪ねてきた。


「やあ、久しぶり」

「お久しぶりです。山屋さん、今って依頼は請けてますか?」

「いや、休暇を楽しんでるところだよ」

「あ、そうですか……。じゃあ、やめておきます」

「わざわざ来たんだから、言うだけ言ってみた方がいいぞ。山屋は普通のダンジョンはどうでもいいけど、廃ダンジョンに関しては目の色が変わるからな」

 宿屋の主人がそう言いながら、女忍者にお茶を出していた。


「廃ダンジョンではあるんですけど……」

「ちょっと話してみてくれ」

「南西の森に古王国の遺跡があるんですけど、そこに廃ダンジョンが見つかって」

「なるほど、行こう」

「え? もう? 一応、最後まで聞いてください」

「わかった。とりあえず準備しながら聞くよ」

 俺は部屋からランプや着替えなどを持ってきて、女忍者の話に耳を傾けた。


「有名なダンジョンだったので、廃ダンジョンになってからも召喚術師や死霊術師の実験場になることが多かったみたいなんですよ。それで、ある死霊術師が実験途中に行方不明になったらしく、中にあったボスの遺体が復活してしまったみたいで……」

「ああ、なるほど、やめておくか」

「やめるんですか?」

「だって、ボスが復活してるんだろ?」

「復活していると言っても死霊ですから……、山屋さんなら倒せるのでは?」

「危険だろ? 面倒だし……」

「でも、廃ダンジョンですよ。それに以前やったようにボスを通路まで釣れたら罠で倒せるじゃないですか?」

「まぁな。でも、面倒くささの方が勝つなぁ」

「じゃあ、私がボスを連れてくるのでどうですか? 山屋さんは罠の設置をしてもらえればいいです」

「ああ、それならやるか」

「おい! 若い娘を困らせるんじゃない! ずっと宿にいたってやることは大してないんだから、とっとと廃ダンジョンに行っちまえ!」

 宿屋の主人が怒るので、俺は渋々外に出た。


「遠いから飛行船で行こう」

「お金大丈夫なんですか? 報酬はそれほど出ないかもしれませんよ」

「ん~、そういうのは冒険者ギルドと、上手く交渉しようじゃないか」


 俺たちは近くの町から飛行船に乗り、南西の森へと向かった。


 森の近くにある町で、冒険者ギルドから廃ダンジョンについての情報を聞いた。


「掲示板の依頼書に書いてある通りです。復活したダンジョンのボスを倒していただけたら報酬は出します。それから死霊術師、もしくはその死体を見つけた場合も謝礼は出ることになりました。一級犯罪者ですからね」

 女忍者は依頼書の写しを受け取っていた。


「面白くなってきた?」

「はい!」


 教会に行き聖水を買い、雑貨屋でネジやロープを買い足しておく。ついでにチョークも買った。


「この前、氷魔法の魔法陣を覚えたんだ。足止めにはぴったりだろ?」

「山屋さんって実は戦闘以外の面で、かなり優秀な冒険者ですよね?」

「そうかな? できるだけ冒険みたいなリスクは回避しているつもりなんだけど」


 俺たちはひとまず屋台で、肉野菜サンドと弁当を買い込み、遺跡の廃ダンジョンへと向かった。森の中にも魔物がいるらしいが、基本的に俺は戦わず、トウガラシ袋を投げつけて対処。女忍者は驚いていた。


「なんですか? その袋は?」

「トウガラシだよ。たいていの魔物はああやって逃げていく。しばらく食事が辛くなるだろうね」

「戦わずに撃退している……」

「廃ダンジョンの探索に必要ないものを排除しているだけだ。とっとと廃ダンジョンに行こう」


 適当に魔物に対処しながら、森の中にある遺跡へ到着。石造りの遺跡は、古王国らしいデザインが施されて、幾何学模様が描かれた神殿などがあった。その神殿の奥に件の廃ダンジョンがある。


「よーし! 行ってみようか!」


 俺はランプに火を点け、ピッケルを持ち廃ダンジョンに入っていく。女忍者は後ろから付いてきて、部屋に行きついたら、左右に分かれて探索する。一人多いだけで作業は一気に捗る。


「落とし穴に死体発見!」

「死霊術師かな?」

「いえ、たぶん古い冒険者の遺体です」


 遺体から装備をはぎ取り、袋に詰めてダンジョンの入り口に放置。探索を続ける。

 明かりを手に進み続けていると、壁に無数の矢で射られた死体が磔にされていた。ローブ姿で干からびているところを見ると、死霊術師のようだ。


「罠をしっかり踏んでるよ」

 足元のスイッチを照らした。

「下ろしますか? 強力な弓矢ですね」

「ああ、しかも連射だ。古王国の罠師は意外と技術力が高いな」

「落とし穴の杭も劣化してませんでしたよね?」

「防腐剤を塗ってあったな。しっかり作りこんでるよ」


 死体を下ろしてドッグタグを確認。やはり行方不明になった一級犯罪者の死霊術師だった。縁起が悪いので、こういう死体からは何も取らず、すべて袋に詰めて後で持ち帰る。


「呪われても面倒だしな」

「そうですね。聖水もかけておきます」

「うん、頼む」


 その後、ドラウグルなどにも聖水をかけつつ、ボス部屋の手前まで来た。


「ちゃんと扉は閉まっているなら、罠を仕掛けやすい」

 俺たちは入念にボス部屋へと続く通路に罠を大量に仕掛けていく。


「逃げるルートだけは確保しておけよ」

「了解です」


 氷魔法の罠に丸太罠、落とし穴、油壺が降ってくる罠、回転ノコギリ、トリモチなど各種揃えた。すでにボスは死んでいるので、いかに動けなくするかという点に重きを置いた。


「じゃあ、釣ってきます!」

「よろしくー!」


 女忍者は罠を仕掛けていない壁伝いにボス部屋まで行き、扉を開いた。ボスが動いているらしく、クナイを投げて誘い出し、通路までおびき寄せていた。



 ズゴンッ! ヒュー! ガシャン! シャーン! ズボッ!


 ボスは面白いようにすべての罠にかかってくれて、身体はバラバラになり、凍ったまま焼かれ、しっかり灰になった。


「壮絶だな」

「山屋さんの罠の威力ですよ」

「そうかなぁ……」


 燃えカスから、指輪と両手剣を回収。ボス部屋の隠し部屋からも宝石類を回収した。


 冒険者ギルドにてダンジョンのボス討伐と死霊術師の遺体発見を報告。遺体を引き取ってもらって依頼を達成した。

 報酬は女忍者と山分けだ。


「正直、宝石類に比べると報酬なんて微々たるものですね」

「そうだよ。面倒くさかったね」

「そうですか? たぶんレベルは上がってると思いますよ」

「強くなったところでね……」

「そういうもんですか。価値観が合わないと仲間って難しいんですかね?」

「だろうな。何を求めるか、だよ。レベルを上げたいなら、大陸一の召喚術師を紹介しようか? 魔法を覚えたいなら、魔族の里に連れていくけど……」

「山屋さんは、難しいこと言いますね。もう少し、この辺でだらだら冒険者を続けてみます」

「わかった。達者でな!」

「また、暇なときに遊んでください!」

「ああ。辺境に来てくれ」


 俺と女忍者は、町で分かれた。若いうちはいろいろと見て回るのも経験だ。


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「ああ、それならやるか」おい!w
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