23 等速直線運動(Uniform linear motion)
ある晴れた日の午後、俺たちはフューチャーテック・チャレンジコンテストの準備をしていた。俺たちはコンテストのために行動を共にすることが増えていた。講義が終わると、いつものように実験室に向かっていたが、今日はヒデが少し考え込んでいる様子だった。
「ヒカル、今日は家で作業しないか?」
ヒデが突然提案してきた。
「家で?なんで?」
俺は少し驚きつつ尋ねた。
「実は、俺たちがいつも使ってる実験室がメンテナンス中なんだ。それに、たまには家のほうが新鮮だし、集中できるんじゃないかと思ってさ。」
ヒデがそう言うと、須黒も口を開いた。
「私も行くわよ。」
須黒の言葉には揺るぎない決意が感じられた。
「いや、でも……」
俺は言い訳を探そうとしたが、ヒデが口を開いた。
「なんでダメなんだ?俺は前にお前の家に行ったことがあるけど、何も問題なかったじゃないか。」
ヒデの言葉に俺は黙り込んだ。確かに、ヒデは何度も俺の家に来ていたが、須黒が来ると困ることがあった……。
「ヒデと須黒じゃ違うんだよ。」
俺は小さな声で呟いたが、須黒はそれを聞き逃さなかった。
「何が違うの?私が行ってはいけない理由なんてあるの?」
須黒の瞳は氷のように冷ややかだった。彼女の存在感は常に圧倒的で、どんな言い訳も通じないことを感じた。
「いや、その……」
俺は何とか言い訳を考えようとしたが、何も思いつかなかった。
「結局、私の存在が邪魔だってこと?」
その言葉に俺は反論する余地もなく、ヒデが再び口を開いた。
「そうじゃないだろう、ヒカル。俺たちはチームなんだから、一緒にやるべきだ。真理も一緒に来てもらえばいいじゃないか。」
ヒデの言葉に俺は再び黙り込んだ。たしかに今回に関しては、こいつのロジックは否定できないほど完璧に正しいが……。
「わかったよ……。じゃあ、俺の家で作業しよう。」
俺は諦めたように言った。
「決まりだな!じゃあ、早速行こうか。」
俺たちはキャンパスを出て、俺の家に向かった。最初、須黒は黙々と歩き続け、ヒデは俺にいろいろと話しかけてきた。3人がエアカーに乗り込むと須黒が口を開いた。
「幕内くんの家って、どんな感じなの?」
「普通の家だよ。特に何もない。」
俺はあまり気乗りしない様子で答えた。
「つまらない答え……。」
「真理、お前は家ではどんな風に過ごしてるんだ?」
ヒデが須黒に話を振った。ナイスプレーだ。
「基本的には研究に没頭してるわ。でも、たまには息抜きに料理をすることもあるの。」
須黒の言葉には一抹の温もりが感じられた。その言葉にヒデは少し驚いた様子だった。
「料理するんだ?意外だな。どんな料理が得意なんだ?」
ヒデが興味津々に尋ねると、須黒は少し笑って答えた。
「得意ってほどじゃないけど、パスタとか簡単な料理が多いわね。でも、作るより食べるほうが好きかも。」
「須黒、お前が料理するのか?なんか信じられねえな。悪いがキッチンに立つお前の姿が全く想像できない。」
「へー、そんなこと言うんだ?じゃあ今度、私の手料理を試してみる?」
須黒の微笑みには冷ややかさが滲んでいた。
「いや、結構だ。俺の胃袋はそんな冒険を望んでないからな。」
俺は肩をすくめた。
「まあ、確かにお前が料理してる姿なんて想像できねえもんな。でも、ちょっと見てみたい気もする。」
ヒデが笑いながら言った。
「ヒカルはどうなんだ?料理とかするのか?」
ヒデが俺に尋ねた。
「たまにな。でも、基本的には外食が多いかな。自炊する時間がなかなか取れないし。」
俺は適当に当たり障りのない嘘をついた。
須黒とヒデとの会話は続き、俺も少しずつリラックスしてきた。




