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ラプラスの堕天使  作者: momimaru
古典力学編
17/29

16 位置エネルギー(Potential energy)

「いったい何だったんだ?」


 ヒデが苛立ちを隠さずに言った。


「なにが?」

「いや、あの挑発的な態度だよ!」


 ヒデの声はますます大きくなる。


 エンゲルハートの挑発的な態度については、俺も少し気にかかっていた。俺を恨むようなきっかけが何かあったのだろうか……。考えても無駄だな。情報が足りなさすぎる。


「そうか?あながち間違っていない意見もあったがな」

「以前会ったときとは別人じゃねーか!」


 ヒデの怒りが再燃する。彼の記憶にあるエンゲルハートとは全く違う人物のようだ。俺は最初会ったときから嘘くさい男だというのは何となく感じていたのだが。


「っるせえな。善人のふりするなんてよくある話じゃねーか」

「あんなクソみたいな態度をとって何のメリットがあるんだよ」

「あいつにとっては全てが戯れなんだろう。常人が理解しようとするだけ無駄さ」

「あら、あなたが常人ですって。あなたも大概、偏屈者だと思うけれど」

「お前にだけは言われたくない」

「俺からしたら2人とももれなく変人だ……」


 ヒデは呆れたように言う。ヒデは比較的、一般的な感性をもった人間だ。それに比べると俺と須黒はかなり特殊な部類に入る。自分であまり言いたくはないが、世間からすると俺も変人の部類に入るのだろう。


「で……、どうやって勝つんだ、女王さん」

「その呼び方やめてくれる?あなたに言われるのなんかムカつく」


 須黒がギラリと鋭い目つきで睨んできた。ああ、怒らせちゃったか。正直、少し怖い。いや、かなり怖い。ここは適当に流しておいた方が良さそうだ……。


「あんな自信満々だったんだ。何か秘訣があるんだろ?」

「そんなものないわ」

「は……?」

「私、あなたと違ってこの国のこと結構好きなの」

「つまり?」

「日本をバカにされたのがシンプルにムカついただけよ。それに私、理論物理学専門よ?工学であいつに勝つなんて無理に決まってるじゃない」

「じゃあ、なんであんな余裕風なこと言ったんだ……」

「あら、私は負けるなんて思ってないわ。あなたたち二人となら勝てるわよ」


 意外な返答だった。普段から俺たちを見下したような態度をとっているのに、今はやけに素直だ。


「そりゃずいぶんなかいかぶりじゃないか。それにお前、自分がいるから勝てる的なこと言ってなかったか?」

「あぁでも言わなきゃ、手加減されそうだもの。私が参加するってなったら少しは向こうも本気を出してくる。それを叩きのめしてこそ楽しいってもんよ」


 須黒の言葉には、彼女の自信と競争心が溢れていた。彼女は単に勝利を目指すだけでなく、自分の実力を最大限に引き出し、対戦相手の本気を引き出すことに快感を見出していた。相手が全力で挑んでくる姿勢こそが、彼女にとっての真の挑戦であり、楽しさの源だった。須黒は常に最高のパフォーマンスを求め、自らを試すことで成長し続けることを信条としていたのだ。


「悪魔め……」


 俺は小声を漏らした。


「何か言った?」

「いやなにも……」


 俺は慌てて言い直す。須黒の視線に圧倒されるのは癪だが、今は避けたい。


「じゃあ早速作戦を考えましょう。コンテストについても詳しく見てなかったし」


 須黒は手元の端末を操作し始めた。その動作には無駄がない。


「クソー。あの野郎に一泡吹かしてやる」


 ヒデは拳を握りしめた。熱意が再び燃え上がる。


 柄にもなく、少しワクワクしている自分がいた。今回の挑戦には何か特別なものを感じているのかもしれない。


 須黒が「対戦相手の本気を引き出してこそ楽しい」と言った言葉が、俺の中の何かを揺さぶったのもあるかもしれない……。競争という未知の領域に足を踏み入れることへの期待感が、普段の俺からは想像もつかない高揚感を引き出していた。

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