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ラプラスの堕天使  作者: momimaru
古典力学編
14/29

13 万有引力の法則(Law of universal gravitation)

 ある雨の日、俺とヒデは研究室でドローンのデータ解析を続けていた。窓の外では細かな雨が絶え間なく降り続け、遠くに見えるビル群がぼんやりと霞んでいた。部屋の中には、ホログラムディスプレイが浮かび上がり、空中にデータが次々と映し出されている。


「ヒカル、このアクチュエータの精度、本当にこれで十分か?高速飛行時に誤差が出ないか心配だ」

「もちろんだ。これまでのテストでも安定していたし、最新のデータでも問題ない。だけど、さらに精度を上げるためには調整が必要かもしれないな」


 そのとき、研究室の壁面が一斉に変化し、新たなホログラムメッセージが表示された。空中に浮かぶ文字は「第1回フューチャーテック・チャレンジコンテスト」の告知だった。詳細を見ると、エントリーの締め切りは来週末であり、優勝者には多額の賞金が出ると書かれている。


「ヒデ、俺は今作業してるから、このコンテストのテーマやルールを読み上げてくれないか?」


 俺は手を動かしながらヒデに頼んだ。


「ええと、ちょっと待ってな」


 ヒデはホログラムメッセージをじっくりと読み始めた。


「テーマは『未来の都市生活を支える革新的なソリューション』……。各チームは独自のプロジェクトを発表し、その実用性と創造性を評価されるらしい」


「なるほど。都市の未来をどう変えるかっていうことか……」


 そのとき、部屋のドアが開き、肩を揉みながらため息をついた須黒が入ってきた。


「須黒、どうしたんだ?疲れてるみたいだな」

「いや、ちょっとね。さっきまで量子トンネル効果のシミュレーションをやってたの。データが思うようにまとまらなくて、イライラしてたところ」


 ヒデが話を引き継いだ。


「ちょうどいいところに来たな。フューチャーテック・チャレンジコンテストの話をしていたところなんだ」

「なに、それ?」

「これは未来の都市生活を支える革新的なソリューションをテーマにしていて、各チームが独自のプロジェクトを発表するんだ」

「面白そうね。でも、それって具体的に何をするのかしら?」

「結局、実用的で革新的なアイデアを出せってことだ。どうせ大学をアピールするためのくだらない宣伝目的だろ」

「あら、でも賞金も出るらしいじゃない。気前がいいのね」

「興味ないな」

「うぉぉぉ、俺は欲しいぞ !賞金!!!」


 ヒデは興奮した声をあげ、両手を拳にして力強く掲げた。目を輝かせ、まるで今にも駆け出しそうな勢いだった。


「そんなに賞金が欲しいってことは、もしかして金欠か?」

「いや、ちょっとばかりな……。と、とにかく、お金があれば新しいパーツも買えるし、もっとすごいことができるんだ!」


 ヒデの返答は、どこか歯切れが悪く、裏に隠された何かがあるのではないかと感じた。とはいえ、他人の金銭事情を模索するのは野暮ってもんだ。


「わかったわかった。お前の情熱は認めるけど、そんなに金が欲しいなら、バイトでもしたらどうだ?ほら、キャンパスのカフェとかで」

「バイトなんかしたら、ものづくりにかける時間が減るじゃないか!それに、カフェの店員なんて俺の性に合わないし……」

「まあ確かにな。お前がカフェのエプロンつけてる姿なんて想像もできない」

「そうだろ?やっぱりここはコンテストで一発逆転を狙うしかないんだよ!」


 ヒデの瞳はまるで灼熱の太陽の如く燃え盛り、決意に満ちたその表情は、一切の妥協を許さぬ鋼の意志を物語っていた。


「もちろん手伝ってくれるよな、ヒカル」

「ドローンの製作を手伝ってもらってる手前、断れないだろ……」

「よっしゃぁぁぁ!ぜってえ賞金ゲットしてやる」

「ったく、面倒ごとが増えたな。で、須黒はこのコンテストどう思う?」

「まぁ、面白ければそれでいいんじゃない?コンテスト自体がどれだけ盛り上がるかが全てよ」

「じゃあ、お前は参加するのか?」

「残念ながら今回はパスね。ものづくりは私の専門外だし、私は私でやるべき課題があるもの」


 雨音が静かに響く研究室で、俺たちはドローンの調整を行なっていた。

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