12 重力(Gravity)
1週間後、俺たちはドローンの実験を行うために、郊外にある広大なテストフィールドへ向かった。この場所は、研究機関が管理する広大な敷地で、最新の技術を試すための環境が整っている。安全な実験のため、周囲には障害物が少なく、広々とした空間が広がっている。須黒も見学に来ることになり、俺たちのプロジェクトに興味を示していた。
テストフィールドに到着すると、俺たちはドローンの準備を始めた。最新のセンサーと高精度のアクチュエータが組み込まれたドローンは、まるで生き物のように滑らかな動きを見せる。須黒は少し離れたところで腕を組み、俺たちの作業を見守っていた。
「ヒカル、このセンサー、本当に国の探知システムを回避できるのか?」
ヒデが確認するように言った。
「もちろんだ。これまでのテストでも、ほぼ完全に探知を掻い潜れてる。データの処理速度も格段に上がってるからな」
「そうか。それなら今回のテストはドローンの動きにフォーカスして行おう」
俺たちはドローンの最終チェックを行いながら、細かな調整を続けた。そんな俺たちの会話に、須黒が口を挟んできた。
「ふーん、本当にそんなに自信があるの?でも、センサーの配置が少し甘いんじゃない?特に前方のLIDARの角度、これじゃ高速飛行時にデッドスポットができるわ」
「前方のLIDARの角度は計算して最適化してるんだ。デッドスポットなんて出ないように調整してある」
「まあ、実験で結果が出るかどうか見ものね」
須黒は冷ややかに言い放った。
俺たちはそれぞれの役割を果たしながら、ドローンの最終チェックを行った。全てが整うと、俺はホログラムインターフェースを操作し、ドローンをテストモードに切り替えた。
「では、テストを開始する」
俺が指示を出すと、ドローンは静かに浮上し、空中でバランスを保った。センサーが周囲の環境をスキャンし、リアルタイムでデータを収集しているのが見て取れる。俺たちはそのデータを分析しながら、ドローンの動作をモニタリングした。
「まずは障害物回避のテストから始めよう。ヒデ、プログラムを起動してくれ」
「了解!」
ヒデがプログラムを起動すると、ドローンは自動的に設定されたコースを飛行し始めた。コース上には様々な障害物が設置されており、ドローンはそれらを巧みに避けながら進んでいく。
「動きは悪くないけど、まだ改善の余地があるわね。特に、左側の超音波センサーが少し過敏すぎる。近くに物体がないのに反応してる」
「そりゃあ、初回テストだからな。まだ最適化の余地があるのは当然だろ」
俺はムッとしながらも応じる。
自己学習機能のテストを開始すると、ドローンは初期設定のルートを飛びながら、リアルタイムで最適な飛行ルートを見つけ出し始めた。センサーからのデータを元に、ドローンは障害物を避けながら最短ルートを学習し、その結果をフィードバックループに組み込んでいく。
「この自己学習機能、理論的には素晴らしいけど、実際にはどうかしらね。例えば、急な環境変化に対してはどれだけ対応できるのかしら?特に風速が変わった時の反応が気になるわ」
「テストなんていくらでもやるさ。実際に動かして改善点を見つけるのが一番だ」
俺たちはテストフィールドの設定を変更し、より複雑な障害物コースを作成した。木々や岩、人工的な障害物が混在する中で、ドローンがどれだけ適応できるかを試すことにした。
「ヒカル、ドローンのデータをリアルタイムで解析して、何か異常があればすぐに知らせてくれ!」
「了解だ。データは全てモニタリングしている」
テストが始まると、ドローンは再び浮上し、複雑なコースを飛行し始めた。最初は戸惑いながらも、次第に障害物を巧みに避けながら最適なルートを見つけ出していく。その動きを見て、俺は確信した。このドローンは確実に進化している。
「これなら実戦でも使える。最後に、センサーの限界を試すために、もっと高速で飛行させてみよう」
俺が指示を出すと、ドローンは急速にスピードを上げ、高速で障害物コースを駆け抜け始めた。センサーとアルゴリズムがリアルタイムでデータを処理し、ドローンはスムーズに障害物を避け続ける。しかし、その時、突然ドローンが一瞬の遅れを見せた。
「センサーのデータ処理が一時的に遅延したみたいね」
須黒は嘲笑うかのような口調でそう言った。
俺たちはドローンを着陸させ、実験結果をまとめるためにテストフィールドのラボへ戻った。データ解析をしながら、俺たちは次のステップについて話し合った。
「今回のテストで得られたデータを元に、センサーの処理能力をさらに向上させる必要がある。特に高速飛行時の遅延を最小限にするために、新しいアルゴリズムを開発しよう」
「それに加えて、自己学習機能もさらに進化させるべきだわ。特に、風速の変化に対する適応力を強化する必要があるかしら」
「うるせえんだよ、この野次馬!」
「あら、ごめんなさい。幕内くんのプログラムがあまりにも貧相だったからつい」
「テメェ……」
「ヒカルにここまで喧嘩売れるのはお前くらいだぜ、真理……」
ヒデは呆れながらも、どこか楽しそうに俺たちの言い合いを見ていた。
「次はもう少しまともなドローンを拝見したいものね」
「くそー、今回で完成させるはずだったのに、まだやることが残ってるとはな……」
「まあ、あなたたちにしてはよくやった方じゃないかしら」
こうして俺たちは、さらなる進化を目指して研究と開発を続けることになった。ドローンが国家レベルの探知システムを完全に回避するためには、まだ改良の余地がある。あと、この女はやはり気に食わない……。




