第二話 証の切符②
証の切符②
六つの大きな月が僕を照らす。
静かな夜空に広がる月は空を二つに分けるように一直線に並んでいた。
左から、『褐色にぼんやり光る赤の月』、『ギラギラと眩しく光る黄色の月』、『野原のように穏やかに光る緑の月』、『明るく一際輝いている光の月』、『凛と鋭い氷の月』、『風を纏っている風の月』
息を呑むほどの神秘的な景色、僕はこんな状況にも関わらず、この景色を前に落ち着いていた。
とりあえずここが地球ではないこと、ただそれだけがわかった。
やはり、地球じゃないのなら別の惑星ということだろうなんだろうか?
地球
その言葉を前に考え込む。
地球、皆はこの言葉から何を考えるのだろう。
澄んだ青空の広がる世界?青々とした丸い地球?
一昔前の人ならこんなことを想像したかもしれない。僕もかつては、その1人だった。
ただ
それは一昔前までの話、
こんなこと今更掘り返したところで何も生まれやしない。そんなことは僕が一番わかっていた。
ただもう戻れないであろう過去の話。
それは、一つの飛行機の自爆テロから始まった。
僕は普段どうりの何気ない中学生の日常を謳歌していた。何か刺激の足りない日々だと嘆いたものだが、今思い返せばその日々こそが幸せだったのかもしれない。
そんな中学二年生の十一月それは急に起こった。
アメリカのニューヨークにハイジャックされ、核爆弾を乗せた飛行機が突っ込んだ。
二十一世紀の同時多発テロ以降、警戒がより強められてはいたものの避けることは出来なかった。
もちろんニューヨークは一瞬にして火の海とかし、アメリカだけでなく世界各国の経済に大打撃を与えた。
さらにそんなもので終わるはずなく、すぐにアメリカが報復を開始、それが火蓋となり第四時世界大戦が勃発、今までにない核戦争となった。
それは日本も例外ではなく、日米安保条約なんてものは役にも立たず、世界の核戦争に巻き込まれ、ついに日本も参戦を強行。
僕自身も徴兵され自衛隊と共に戦場に駆り出された。しかし日本は核などを保有していないため戦場では圧倒的不利。僕も何度、死線を潜ってきたかわからない。
そんな戦争がニ年も続き、世界の人口は、十分の一まで減少、どの国も戦争を続けることができなくなり、停戦。しかし地球はもう人間が住める状態ではなくなってしまっていた。そこで各国は協力し、[ 方舟計画 ]を実行、世界の技術を集結させ、人間をのせて運ぶ巨大宇宙船の建造を計画した。
宇宙船ができるのにそこまで時間はかからなかった。できた宇宙船は Noah's ark、通称[ ノアの箱舟 ]と名付けられ、地球に生き残っている動物や植物、すべての生き物が運び込まれた。
しかし、時間との戦いの中作られた宇宙船は当然、今地球に生き残っている人間全員を乗せることなどできるはずもなかった。乗るのは各国のお偉いさんや上級貴族、僕みたいな日本という滅びかけの国の民間人が乗れるはずもなかった。
残された僕らは、大地は放射線に汚染され、空に浮かぶはずの太陽は黒く厚い雲に隠され、安全なところなど、どこにもない地球でただただ死を待つだけ
そんな世界で僕は死んだ。
僕は今生きているのだろうか。
「夢なら覚めないでほしい、あの現実へと戻りたくない。」
そう願う中、
[僕はこんなところで何をしているのだろう。生きてていい人間なんだろうか?]
そう思った自分がいなかったと言ったら嘘になる。




