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Sevenkeys

 目を覚ました私の視界に写るのは、さっきと同じ天井。


「……よかった」


 夢じゃなくて。どのくらい時間が経ったかわからないけど、体の感じからそんなに経っていないと思う。長く寝てたらもう少しスッキリしてるはず。


 でもリフレッシュにはなった。部屋に誰もいないし、今のうちにセブキーについて整理しておきたい。今がどの地点なのか……私が生きてるってことは原作が始まる前かな。


 セブキーは主人公――黄地洋太が不思議な鍵を拾う所から物語が始まる。その鍵を仲のいいクラスメイト――山田颯介に見せたら、どこで見つけたのかと詰め寄られる。いつもとは違う颯介に困惑する洋太。それもそのはず、その黄色の鍵はとても特別なものだったのだ。


 実は颯介は鍵と錠を守る家系に仕える一族だった。そして守るべき家系は数日前に何者かによって、滅んでしまった。


 鍵は七色、つまり七つありその鍵に宿る色をひとつの鍵に集め、錠に差し込めば大いなる何かが目覚める。その多いなる何かを手中に収めようとする者、解き放ち世界を破壊しようとする者、単純に戦いを楽しみたい者。


 いろんな思惑を持つ者達の、鍵を巡る戦いに洋太と颯介は巻き込まれていくという、バトル漫画だ。


 そして私――錠乃優愛は颯介の一族が仕えていた家系。錠乃家の人間であり、物語の開始前に死んでいて、この物語における重要人物。姿が明らかになったのは最近だけど、名前とか存在は連載の最初から存在した。


 私が死んだことで、大いなる何かを封じる錠は行方知れずとなったんだ。


 自分の胸元を見ればキラリと光を反射する錠がある。物語の重要アイテムである錠が確かな重さと共に存在している。所有者は私だと錠自身が語るかのようだ。


 大いなる何か。残念なことにもう少しでそれがわかる所だった。私が死ぬ前に読んだ本誌は錠をついに見つけた洋太達が、錠乃家を襲った黒幕を見て驚く所で終わっていたんだ。


 つまり、あと一週間。生きていればセブキーの謎解きがされていたのだろう。読みたかった。ずっと楽しみにしてたのに、死んで読み逃すなんて。本当に悔しい。考察とかも読み込んでたのに。私も色々考えてたのに。


「うぅ、最後まで追えなかったの本当に悔しいなぁ」


 悔しいけど今はそれどころじゃない。まずはどうにかして、今が物語開始前なのか調べなきゃ。


 ボロボロで行き倒れていた私。そんな私を助けてくれた桜也。


 でも確か二人が知り合いだったとか、桜也が助けたことがあるとか、そういったことはなかったはず。語られてない可能性もあるけど、錠乃優愛の写真を見た雨宮桜也は、特になんの反応も示してなかった。もしそんな設定があるならあそこで何かしらの描写があったはず。


 考えられる可能性はいくつかあるけど、有力なのは多分、あそこで死ぬはずだった錠乃優愛は生き延びてしまった、という可能性だ。


 自分の体を見れば傷が多いし、深い傷もある。もしそのまま誰にも見つけられずにいれば、死んでいたかもしれない。そしてそれこそが正史だとも考えられる。


 錠乃優愛の死体の発見場所とか、死因とかは作中で描写されてない以上ハッキリとはわからないけど。でもさっき見た自分の姿。記憶が無いから断言は出来ないけど小学校に入学しているか、それより少し前かぐらいだ。錠乃優愛が死んだのも颯介の発言からその辺りの年齢だと思う。


 錠乃家を狙う人は、この現代ではほとんどいなかったらしいと作中で語られている。つまりこの年齢くらいで死にかけることは、二回もないと思う。作中の話と矛盾してしまう。


 いや、既に雨宮桜也と錠乃優愛が出会うという、存在しない可能性の高い出来事が起きてるんだけど。それに関しては私のせいだろう。おそらく記憶をなくす前の私も前世の記憶を持っていたか、それか何となく覚えていたか。つまり物語開始前の優愛の行動が何かしら変わっていた可能性が高い。


 そのせいで本来ならありえない展開になっている、というのが今できる推測だ。


 ……これからどうすればいいんだろう。死ぬはずの私が生きていれば、本来のお話通りにはならない。でも私は死にたくない。たとえ大好きな作品をねじ曲げてしまうのだとしても、私は生きたい。前世も早く死んでしまったのに、それよりも早死なんて嫌に決まってる。


 でも原作がごちゃごちゃになったら、世界が大変なことになる。錠に何が封印されているのかは明らかにはなってないけど、もし封印が解けたら世紀末のヒャッハーになると示唆されてた。


 これから本当にセブキーのストーリーが始まるなら、鍵を巡る戦いが起きるなら、いずれ錠を狙う者もでてくる。何の力もない私に出来ることはあるのかな。


 考えてみるけど、何も思いつかなくてため息をつくのだった。

 

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