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あの頃の私へ_指南書

読書感想文

作者: 池咲ゆき

 小中学生の頃、夏休みの宿題はいつも時間がかかるタイプだった。

 何を隠そう、自由研究の「テーマを決める事」と読書感想文の「それなりな書き方」に時間を持っていかれる。最終日に泣きを見る事はどうしても嫌なので、他の宿題それなりのペースで片付けていたが、「この2点」は毎年苦戦した。

 自由研究は、テーマさえ決まってしまえば「順を追って片付けるだけ」だが、特に研究対象としたいものがない為に「テーマを決める事」自体が難しかった。小学校の低学年は工作をしていたが、それ以降の学年では、何を提出したか思い出せない程度のものが多い。それでも、「なんとか」対応して提出できただけでも良しとしたい。

 読書感想文は、そもそも何から書けば良いのかわからなかった。「あらすじ」を書いて終わるパターンを何度か経験し、改善せねばと努めてはみたものの上手くいかず、結局よく分からないものが完成してしまう。そして、そのまま提出してお終いになるを繰り返した。


 本を読むのは楽しめるから苦痛でないが、感想を書けと言われても、何を書くのが正解か。コンクールに入賞するレベルのものは望まないが、感想文と呼べるくらいのものは書けたらなと思う。

 しかし、書き方を聞くとどうしようにも立派なものを書く前提での「書き方」、もしくは「思ったことを書けば良い」というザックリとした回答を得るばかりで、丁度良い方法は分からず、そのまま読書感想文が宿題にならない歳まで到達した。


 さて、正しく「読書感想文」ではなくとも、それなりのものをサクッと書いて苦戦しない夏休みにしたかった当時の私へ、今の私から案を出したい。


―――

1.本はゆとりを持っても5日で読める量のものを選べ


 何を書こうにも、まずは読み終えねば何もならないので、本選びはそれなりにしておくべきである。

 全く興味のない本は、読み進めるのが苦痛になりがちなので、ある程度興味のある範囲で選ぶのが一番確実である。また、普段から本を読む人と滅多に読まない人ではスピードも異なるので、人の勧めではなく、自分にとってちょうど良い量を選ぶと気負わず読みやすい。目安としては小まめに休憩を入れながら読んで5日以内に読めると想定できる量までが安全な範囲と考える。

 ページ数が少ないからと絵本を選ぼうとする人もいるが、文字でない分、絵から読み取る(感じ取る)必要がある為、感受性に余程自信がない限り、感想を書くのはとても難しいので覚悟すべきである。


 ちょうどいい本を見つけたら、全力を出して2〜3日で読み終えてしまうことを推奨する。日数が経つと途中経過への感想が薄れていくので、熱量が下がらないうちに最後まで読んでしまった方が無難である。

 感想をメモに取りながら読む方法を推奨されることもあるが、部分だけで感想を成す訳では無いので、出来れば読むことだけに集中してほしい。書くべきポイントだと思った表現等があれば、付箋を貼っておくくらいは良いかもしれない。


 とにかく、本の内容に没頭して「読み終える」必要がある。


2.率直な感想だけは明確にせよ


 本の感想は「読み終わった瞬間の感想」が全てである。面白かった、胸が痛んだ、モヤモヤした、怖かった、腑に落ちなかった、続きが気になる、思ったより好きじゃなかった等、最初に思ったことこそが読み終えた「自身の感想」である。細かいことは抜きに、読み終えた自分が何を思ったかを大事にしてほしい。これが感想文の核になる。

 ここがブレてしまうと、感想文を書くのに必要な情報を集めることが出来なくなる。


 読書感想文はあくまでも「自分の感想」を書くものであって、「素晴らしいと思われる感想」を作り出すものではないのだ。端的に自分が思ったことを中心に書く必要がある。内容の詳しいことは忘れていたとしても、全て読んだ後に出てくる最初の感想だけは明確にしておくべきである。


 そこが明確に出来たら、その感想に「説得力」を持たせる準備をする。

 ここからは、本を読み返しながらメモを作っていく事を推奨する。

 読み終えた感想から、何が自分に「そう感じさせたのか」を探っていく。何でそう思ったのか、どの時点からミスリードがあったのか、どこの伏線がその展開を引き出したのか等、改めて流れを追いながらピックアップしていく。

 本は読んでるうちに記憶に残る部分と忘れかけている部分が出てくるので、まずは記憶を頼りに引き出し、次に抜けている部分を読み返して埋めると比較的早くできる。文中に好きな言葉がある場合はそれも漏らさずメモに書いておく。


3.相手が本の内容を知らずとも気にせず思ったことを書け


 誰が主人公で、登場人物は何人いて、どんな内容なのかといった説明は一切必要ないのである。何と言っても「感想」を書く文章なのだ。あらすじや構成、メンバー等はわざわざ説明しなくても良いのである。言うなれば、もうすでに相手もそれを読んでいる前提でも構わないと思って書いてしまえば良いのである。

 感想文を書いていく中で、「主人公である〇〇」とか「主人公の親友の〇〇」という様に立場を少し書き加えれば、十分に関係性は伝わるはずだ。


 感想文を書く流れとしては、「本を読み終えた感想→何故そう思ったのかを場面や細かな部分の感想を具体的に複数書く→結論として全体的な感想(最初に書いたものと重複)」という形で大まかに作っていき、文字数と相談する。どうしても足りない様なら、何故その本を選んだのかを書き足しても良いと思われる。


―――


 どうあっても、「読書感想文」の目的は読書嫌いにさせることではない。

 本を普段から読む読まないに関係なく、読書をする機会を得たからには、何より「読書を楽しむ」ことが一番大事である。どんなジャンルであっても自分の中になかった何かを知る事ができるチャンスなのだ。

 楽しく読んだその感想を聞きたいと言うのだから、思ったことを用紙に書いて示してあげる…くらいの感覚でいいはずだ。


 これで読書嫌いになってしまっては元も子もない。


 とにかく楽しく読んで、「嬉々として」か「渋々」かは人によるが感想文をサクッと書いて、宿題を1つ片付けてしまおう。

暑さが続きますので、熱中症にご注意を!

読書中であっても、細かに水分補給をお忘れなく!

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