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ラブコメをもう一度  作者: タカヤマ・ユーミン
4/4

ガミ

教室から見える景色は、蒸気が見えるほどの暑い校庭と、校舎に繋がる石の長細い道に雑談を交えながら歩く生徒達が見える。


私は、それを眺めながら2時限目までの時間とある言葉が頭の中に形成された。


『青春的には合格だ』


彼らが話している話題がもし陰口だったとしても僕には関係ない、関係ないと信じたい。


他人の考えていることなんてわからない。


無差別な妄想も必要だ。どんなに残酷な妄想でも私を優しく包み込んでくれる。



【ここで5時間ほど時間がたつ】


生徒達がそれぞれの部活動を行う時間となり、窓からグラウンドに陸上部員が集まるのが見える。


リンもブルーの線が入った体操着に着替えグラウンドへ集まった。


陸上部で顧問の丸川先生は知的で好奇心旺盛でとても熱心に指導をする先生である。


だがそんな先生でも欠点があった。


それは、生徒人気が悪いことである。


なぜ不人気なのか、例えば陸上部員の女子生徒がトイレに行きたいと丸川先生に言ってトイレに向かった数分後、丸川先生が心配になったのか女子生徒が入っている女子トイレの外から大声で語り掛ける。


『大丈夫かい!!』


声がでかい。


女子生徒からしたら迷惑である。周りにいる生徒からの視線、一人の一般男性が女子トイレの前に立って声を掛けるなんて普通だったらあり得ない。


でもまぁ、女子トイレ標識の前で声を掛けているから犯罪ではない。


声を掛けるなら女子生徒の友達とかに頼めばいいのに彼はそうしない、というか頭が回らない。


とても、変わっている先生である。


だが私にとっては恩師である。


走り方や呼吸の仕方などいろいろと学んだことが沢山ある。丸川先生には感謝していた。


グラウンドに集まっている陸上部には今朝100メートル走で競いあったポニーテールのサクラもいた。


今とても熱いライバル視をして彼女と並走しながらグラウンドを走っている。


「あれは油断したんだ!」


『え?』


「もっと早いし」


『はははっ……』


負け惜しみではない、あれは油断していただけで最初から本気で走ってれば勝てていた。


そう思いたい。


『ちゃんと水分取れよー』


丸川先生が暑い日差しのなか生徒達の健康管理と走りを指導していた。


「この暑さ……異常だろ…… 」


『丸川先生って…生徒思いだよねぇ……嫌いじゃない』


「珍しいな」


『え?』


「女子生徒には不人気なのに」


『ははっ……そうかもね』


物語は真っ赤な夕方に差し掛かる。


生徒達が下校を初めている風景になった。


リンも同じように制服に着替えて過去の記憶を頼りに自分の家に向かう。


河川敷の近くを歩いていると、風の音と共に2人の男女の会話が僕の耳に入ってきた。


二人は普通の雑談とは違い殺伐としていてたまに大きな怒鳴り声がが聞こえてくる。


僕は関わりたくないと思い目立たないよう早足でその場を立ち去ろうとしたが、1人の生徒の声に聞き覚えがありゆっくりと時間が止まったかのように勝手に足の速度が遅くなっていた。


私の脳の引き出しからとある記憶の音源が飛び出てきたのだ。


『ガミか?ガミなのか?』


僕は橋の影からこっそり近づき二人の生徒の会話に耳を傾けた。


『君はいつもそう…』


「……」


『もういい、もう終わったの…』


そう言うと黒いロングヘアーの女子生徒は黒いカバンを持ち男子生徒から離れていった。


ガミはカバンからグレーのハンカチを取り出し自分の涙を拭いた。


夕日に照らされて彼の頬は真っ赤に染まっていた。


感情が乱れ橋の下でうずくまってしまった。


こっそり覗いていた私だが、徐々に体が前屈みになり体の半分が丸見えとなっていた。


『だれ?』


やばい、気づかれた。


「いやーちょっと気になっちゃって…」


『え?』


「あっ、風景!!夕焼けを見てて……」


苦し紛れの言い訳だ。


『たしかに……綺麗だね』


「…………あのさ、何で喧嘩してたの?」


『え?』


いきなりデリケートな質問をしてしまった。


これは失敗である。


『失恋しちゃったんだ…』


「え?」


この瞬間、頭の中が真っ白になり僕はうつ向きながらゆっくり今の言葉を理解しようとしていた。


「彼女?」


『そう、人生はむなしい…すぐに終わりを迎えてしまう』


その場の空気に僕は混乱してしまい目から暖かい涙がポロポロ出た。


我々の背景が静かなモノトーンとなっていた。


彼の過去をもっと知りたかった。


少しずつ冷たい記憶が僕の体を締め付けてくる。


『どうした?』


「……いや、なんかごめんね」


『……え?何故君が謝る?』


「帰るね……じゃあね」


それから僕はガミをあとにして、赤い夕焼けに焼かれながらだだっ広い田んぼ道を全力疾走で走り出した。


そして僕は叫んだ。


乾かない涙を流しながら。


心をさらけ出しながら。


『彼に彼女がいたなんて…』


涙も、心も、絶望も。


夕焼けの空も、今日は滲んで青く見える。


あの頃はそうでもなかったのに。


何故だか今、雨に濡れたくなる。


そんな気持ちだ。

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