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ライジングゴースト ~君が夢見たトコロへ~  作者: 蛍石光
1.幼馴染と高校入学
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1-3 もう一人のライバル?

短く数話ずつ投稿させていただきます。

 入学式も無事に終わり、入学初日のイベントは終了。教室の中は一気に騒がしくなる。中学時代の友達が他のクラスからやってきたり、LINE IDの交換やらおきまりの光景が繰り広げられていた。そんな中、健斗は教室で一人落ち込んでいた。その理由は入学式後に行われた部活紹介が原因だった。


「健斗。帰ろっ?」


 まるで中学の時と同じように晶が声を掛けてきた。


「あ、あぁ・・・そうだな。帰るか。」

「あれ?元気ないね。どしたの?」


 晶はいつもの笑顔で健斗の顔を覗き込んでくる。そう言えば晶は高校でも同じクラスになってしまったんだったな。


「ちょっとな。」

「あぁ。野球部の入部試験のこと?あれ誰も落ちたことないって言ってたじゃない。形式的なものだって。ね?」


 晶は健斗の思いを汲み取ったのか、明るい声で話しかけてくる。


「ん?あぁ、そう言ってたな。」

「そうそう、だから大丈夫だって。」


 晶が健斗にそこまで話した時、誰かが話しかけてきた。


「えっと、紫水さん?」


 そこには髪を短く切りそろえた少し背の高い少年が立っていた。

 健斗は『誰だこいつ』とは思ったが、あえて口には出さなかった。新しいクラスメートのほとんどが知らない奴だったからその一人なのだろうと思ったのだ。


「え?なに?」


 晶は突然掛けられたにも関わらず驚くことなく振り返って返事をする。

 それは人見知りをしない晶だからこその反応だったのだろう。健斗もそう人見知りをする方ではないが、晶は別格だ。誰とでも仲良くなれるし、誰にもでも好かれる。そんな娘なのだ。


「あの・・・ちょっといいかな?話したいことがあるんだけど。」


 声を掛けてきたのは晶が知らない男子生徒だった。

 ただのイケメンとは少し違うと言うか、運動をやっている感じのイケメン。少なくとも、他人に警戒心を抱かせるような感じの男子ではなかった。さらに、しっかりと日焼けをしているとこから外での運動をやっていると言うことまで見ただけでわかる。


「えっと、あは、ごめん。誰だっけ?」


 晶はペロッと舌を出してはにかみながら声を掛けてきた男子生徒の顔を見た。


「同じクラスになった川島啓介かわしまけいすけって言うんだ。」

「へぇ、川島君。うん、私、紫水晶っていうの。よろしくね。」


 晶は握手をしようと右手を川島に差し出そうとしてから、すぐに引っ込める。そして、スカートでの脇に手のひらを軽く擦り付けてから再び右手を差し出した。


「あ、う、うん。よろしく。」


 女子から差し出された右手に若干驚きながらも川島はおずおずと手を出してきた。


「ん?なんで?」


 なかなか手を出そうとしない川島の様子に晶が不思議なものを見ているかのように首をかしげた。


「バーカ。男がいきなり女から手を出されたらびっくりするだろうが。」


 健斗は片肘をつきながら様子を伺っていたが、ついに耐えきれなくなって口を挟んでしまった。


「あれ?そういうもの?」


 晶は驚いたような表情を浮かべて川島と健斗を見ている。


「そういうもんだって。お前はもうちょっと男心を学べって。」


 そう言って健斗はカバンを持って席から立ち上がった。


「あれ?どこ行くの?」


 晶が健斗に尋ねるが、健斗の様子を見れば何をするつもりなのかは一目瞭然だろう。


「帰るんだよ。じゃ、川島とやら。よくはわからないが晶をよろしく。」


 そう言って川島の顔を一瞥してさっさと教室を出て行った。


「うーん。男心ねぇ。」


 晶は腕を組みながら一人ウンウンと唸っていた。


「えっと、紫水さん。今の男って彼氏?」


 川島が晶に対して抱いている思いはこの発言だけで十分に理解できるのではないかと思うが、晶はどうなのだろうか。


「彼氏?いや、違うかな?健斗は幼馴染だよ。幼稚園の頃からずっと一緒なの。家も近くてね。それでずっとこうやっているって感じかな。」


 晶の話し方にはいつも以上に身振り手振りが加えられていて、とてもコミカルな感じだった。


「へぇ・・・そうなんだ、健斗って言うんだ?彼の苗字は?」

「山本健斗だよ。」

「そう。覚えておく。彼の名前は。」


 そう言って川島は一人、右手の拳に力を入れた。


「あ、そうそう。川島君はどうして私のことを知ってるの?」


 晶は川島のことを知らなかった。でも、川島は晶のことを知っているようだ。ただ、その理由が知りたかっただけなのだ。


「紫水さん、中学の時にソフトボールやってたでしょう?それで君は有名なんだよ。」

「私が有名?」


 晶は何を言われているのかチンプンカンプンな表情を浮かべていたが、晶は全道で指折りのソフトボール選手なのだった。中学校時代のソフトボール部は弱小だったせいもあって、全国区に名前を売り込むことはできなかったが、打ってよし、投げてよし、走ってよしと三拍子揃った名プレイヤーだった。


「そう。僕もソフトボールをやってるから。」

「へぇ〜、そうなんだねぇ。」


 川島の熱い目線にまったく気が付いていない晶は『ホウホウ』と頷いている。


「高校でもソフトボール、やるんでしょ?」


 川島はなおも熱い目線を晶に送っているが、やはり晶は気がついていない。


「えっとね、高校ではやらないつもりだよ。」


 晶は素直にそう答えたが、川島の心中は穏やかではなかったようだ。


「え?どうして?ソフト、辞めちゃうの?」


 川島は驚きのあまり、晶の両肩をガシッと掴んで問いただしてきた。


「あ、うん。ソフトはやめる。でね、野球やるんだ。」

「や、野球?」


 川島は愕然とした表情で晶を見つめたまま立ち尽くす。


「そ、野球部に入るつもりだよ。」

「だって、野球は女子ってあんまり・・・」


 川島がそう言うのももっともだ。女子野球の人口はそう多くはない。男子野球の人口と比べると十分の一くらいかもしれない。いや、もしかするともっと少ないかもしれないのだ。


「そだね。でも、今年から野球部には女子選手も参加できるようになって、甲子園にも出られるようになったんだよ?女子プロ野球だってちゃんとあるしね。」

「そうなんだ・・・」


 晶の嬉々とした表情に対して、川島は悄然の表情を浮かべている。


「うん、でね・・・」


 晶の野球話はそれからしばらく続いたのだった。

主人公の山本健斗。

ヒロイン?の紫水晶。

野球の天才と思われる花形寿也。

それからソフトボーラーの川島啓介。

この四人がメインの人物になっていくはずです。

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