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アウトサイド   作者: あいよ
序章
6/16

6:遭遇

ぎぇえええと声を上げた “小さな人” がメイスもどきを振り上げ襲い掛かってきた。

それは想像以上に早く、あっけにとられた私は、避けるとか、払うとか、そういうのではなく、ビビッてあとずさりをしたのだが、これが功を奏した。

メイスは私の前髪をかすめ、先程まで私がいた地面に激突した。


思った以上の鈍音が鳴り、クレーターというわけではないが、メイスが当たった地面は軽く陥没していた。

これを食らっていたら即死していただろうな・・・と感じたのも束の間、こぉん という非常に大きな硬質音とともに、これまで感じたことがないほどの衝撃を腹に受けた。


おそらく私が吹っ飛んだのは3m程度だと思う。

65kgある私が3m吹っ飛ぶほどの衝撃を腹に受けたのだ。

地面に背中から激突し、まるで内臓を締め付けられるような苦しさを感じた。

これもおそらくだが、返す刀がごとく、地面にめり込んだメイスを、そのまま横凪に振り回したのだと思う。


そして吹っ飛んだ私を見て、“小さな人” は追撃といわんばかりに、メイスを振り上げ飛び上がり振り下ろさんとしてきた。

姿勢を立て直すことすらままならない私は、咄嗟に握りしめていた鎌を “小さな人” がとびかかってくる方向目掛けて勢いよく振り回した。


うわぁ!とか、あああああ!とか、言葉にならない叫びをあげていたと思う。

目をつぶり、そしてぶんぶんと鎌を振り回し、何度も鎌は空を切った。

くるな!と念じながら必死に振り回したせいか “小さな人” は念じた通り来なかった。


来るはずだったメイスの衝撃が来ず、恐る恐る目をあけると、目の前には石ごとバラバラになったメイスと、同じようにバラバラになった “小さな人” だったような何かがいた。


何が起こったのか理解できなかった。

最後に見た風景は “小さな人” がメイスを振りかぶって、とびかかってくる光景だ。

1秒もかからずに撲殺されていておかしくない状況だったはずだ。

それなのに、私は生きていて、”小さな人”は肉塊へと変化していた。


状況を確認するためにも立ち上がろうとしたのだが、身体に一切の力が入らなかった。

この倦怠感は "鎌で何かを切ったときに感じた疲れ” と同じ感覚であった。

つまり、振り回した鎌が、メイスもゴブリンも問答無用で切り刻んだのだ。

当たった感覚すらないほどに鋭く、そして抵抗もなく切り捨てたのだ。


そして、その結果、これまで以上の倦怠感になって襲ってきたのだ。

もはや鎌を使った反動であることを疑う余地はなく、ただの “生物の破片” ではない事に加え、その切れ味を見る限り非常に危ないシロモノでもあると、認識せざるを得なくなった。


ともあれ、この鎌のおかげで命を救われたのだ。

絶望を与えた「かまきり」は、希望をも与えてくれたということだ。




また、生き残れたと。

どうにか、生き残れたと。

もう2度と原生生物とは戦わない。

そう誓い、再度あおむけに倒れ込んだ瞬間だった。


先程 ”小さい人” が現れた方向から、また ぐえっ という声がした。




ぐえっ だけじゃない、ぎぃとも、ぐぅとも、さまざまな声が聞こえた。

火が照らす範囲からは見えないものの、それなりの数がいるようだった。


“小さい人” は、知性はなくとも “人” に近いのだ。

チンパンジーやサルなど、人型に近く賢い動物は群れる傾向があるが “小さい人” も例外ではなく、群れで行動するのだ。


せっかく生き残ったのに、あまりに理不尽じゃないかと、思いながら私は焦った。

逃げようとしても、ありえないほど倦怠感が身体を包んでおり、身動きが取れない。

火を消して身を潜めなければと思うが、もちろんそれもできなかった。

鎌を握る力も入らず、ここまでか、と思った矢先であった。


ダァンという爆発音がした。1回だけじゃなく、2回、3回、4回と。

そして5回目が聞こえた後 ”小さい人” らしい声は聞こえなくなった。


その代わりに足音が近づいてくるようだった。


「~~~~~~~~~~~」


まだ少し遠いようで、理解はできなかったが、それは “言語” であった。

近づいてくる足音の主は、間違いなく “言語” を話していた。


人か、もしくは異世界らしく言語を操る別の生物か。

どちらにしても身動きの取れない私は、心臓をばくばくと鳴らすだけで。

身体中に変な汗をかきながら、足音が大きくなってくる方向を見つめていた。


「~~~~~~~~~~~・・・」


声が大きく聞こえる位置まできた足音の主は、まぎれもない “人間” のように見えた。

火に照らし出された恰好はなんというか、レザージャケットとレザーパンツ、靴もおそらくはレザー製で、ジャケットの中には黒光りするプレートが鈍色に光っていた。


「~~~~~~~~~~~・・・!!!」


何事かをしゃべりながらあたりを見まわしていたそいつは、ようやく倒れている私を見つけたようで、こちらに駆け寄ってきた。

心配しているのか、怒っているのかはわからないが、問答無用で襲ってきた他の生き物よりは敵意を感じさせないというか、友好的のように感じた。

人間らしいというだけで、そう感じただけかもしれないが。


「~~~~~~~~~~~」


理解できない言葉に私が反応できなかったせいか、そいつはさらに心配をしたようだった。

しゃがみ込み、私の様子を観察するように覗き込んできた。


「~~~~~~~~~~~」


その顔をよく見ると、どことなくだが、違和感をあまり感じさせない顔付きをしている。

そう日本人のような———


「~~~~~~~ん?お前、日本人か?」

「え?」



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