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時の塔

「むにゃ……むにゅ……」

日射しの掛け布団包まれながら微睡みに浸る朝。

眠るのは嫌いじゃない。全てを忘れてフワフワと浮かぶような心地よさは唯一無二だし、夢は非日常の世界へと俺を誘ってくれる。

今日は大きな雲に乗って大空の旅をする。

自転車に乗った駆流や宙を走る相馬を追い越し、ギャリドューやハルシャークをぶっ殺した。

ちなみにこの雲はわたあめであり、食べることができる。

口に含むと甘さが舌をとろけさせる。

「何を~~――――!」

ドカっ。

胸に強烈な痛みが走る。

困惑に世界が反転するが、すぐに現実で何かあったことが察せられた。

おそらく里美が起こしに来たのだろう。休日くらいゆっくりさせて欲しいものだ。

しかし今日はやけに乱暴だな。

生理でも近いのか。なら早めに起きなければ。

頭半分で思考しながら目をこすって夢心地から脱出を測る。

「ん……」

なんだかいい香りがする。

けど里美のちょっとかび臭い臭いではなくミルクのように甘い、赤ちゃんのような…。

「誰が赤子じゃ、ばかもんっ!」

「ぐへっ」

さっきとは比べ物にならない衝撃が鼻先を捉え思わず体を起こした。

そしてベッドの上にいる人物に仰天する。

「あんた……生徒会長…!?」

「まったく…わしが自ら起こしに来てやったというのにこの寝坊助が」

はだけた服を整える会長、ピンクの可愛らしい下着がかいまみえた。

「全然エロクナイ!」

「しばくぞ貴様!」

だって俺ロリコンじゃないし。

「何であんたがここにいるんだよ…」

「決まっておろう、わしがここの住人だからじゃ」

「はあ!?」

「織田 希子じゃ、よろしく頼む」

生徒会長がにこやかに挨拶する。

「いやなんでやねん!」

「なんでとはぶしつけな奴じゃのう、ちゃんと契約は済ませてあるではないか」

ぴらぴらとサインされた契約書を見せびらかす織田会長。

「いや、聞いてねぇぞ、偽造だろそれ!」

「ふ、真実などしょせん人を操る道具でしかないわっ!はっはっは」

やべーやつだこいつ。

絶対に魔法とか覚えさせちゃいけねぇ、異世界の存在は隠さねばならない。

しかし音楽室に現れた例の影については報告を受けているだろうし、このアパートに間借りしに来たということはおそらく俺を何かしら疑っているのだろう。

「俺は何も知らないぞ」

「ふっそれならそれがわかったことが前進じゃ、あと敬語を使え、わしは年長じゃぞ」

「お前そんなにポジティブなやつだったのか」

「死ねば皆同じむくろよ、好きに生きるわ、それと敬語っ!」

やっぱりこいつは危険だ。

とりあえず二人並んで一階に下りていく。

「なんじゃ新しい子はロリータか、ボンキュッボンッのお姉さんが良かったのぉ」

もう一人の住人であるじいさんがくってかかる。

「あ?貴様の部屋にあるフィギュア全部燃やすぞ」

「すんませんしたっ!」

一瞬で我が家のヒエラルキーが決まってしまった。

「織田さん、朝ごはんができましたよー」

「うむ、くるしゅうないぞ!」

満面の笑みで食卓につく会長。

「なんか里美の時だけ態度ちがくありません…?」

思えば最初に生徒会室であった時もそうだった気がする。

ひとまず俺も椅子に座って舌鼓をうつ。

「わしゅれては、おらにゅだろうな。期限まで、残り3日じゃぞ」

「飲み込んでから話せ」

俺は学校で起きている問題のどれかを解決しなければ生徒会の犬にされてしまうのだ。

「先輩、旅行の件は何もやましいことは無いんです」

「いくら里美嬢の頼みでもこれは聞けん」

「あんた里美となんかあるのか?」

「お主には関係ないわ、あと敬語」

「先輩、お口についてますよ」

里美が汚れを拭き取る。

「どっちが先輩かわからないな…」

「なんじゃと!」

そんな話をしつつ朝食を食べ終えそれぞれの時間へと戻る。

今日は休日、ヘカテリーヌに会いに行く日だ。

王子の一人、バーンズリーに頼んだ時魔法の調査の進展も知りたい。

しかし俺の前には一つの艱難が待ち構えていた。

異世界への扉がある里美の部屋の前にたつと、その様子を物陰から監視する影。

その名は帝陣学園生徒会長 織田 希子である。

あれで隠れているつもりなんだろうか。

「…何か?」

「なんじゃ?わしは通りかかっただけじゃぞ?」

「いやおもいっきり覗いてただろ」

「失敬な、貴様がおなごの私室に侵入するところを防いだまでじゃ」

ぐぬぬ。

いったん退散して様子を見よう。

「何か用事が有ったのではないのか?」

「大したことじゃねぇよ」

もしこいつに異世界のことがばれたらどうなるかわかったもんじゃない。

わからないことが怖かった。

君子危うきに近寄らず。危ないことは避けた方がいい。

「…用事がないならわしの部屋にこんか?」

「あ?」

突然のおよばれに唖然としてしまった。

「何か仕組んでんじゃないだろうな、毒薬とか」

「さすがのわしもそこまでせんわっ!」

………………。

とりあえずついていってみた。

部屋の扉を開けると以外と普通の空間だった。

どこにでもあるようなベッドにタンス、俺の部屋によくにている。

「たまには下々の生活に合わせてみようと思っての」

得意気に笑う会長、普段はどんだけ豪勢な場所に住んでんだよ。

「それで、俺に何のようだよ」

「これじゃ」

指差したのは新作のゲームの本体。

「やり方がわからん」

「は?」

「やり方がわからん」

「は?」

何を言ってるんだこいつは?

「だーかーらー、やり方がわからんといっとるんじゃ!」

ドスンドスンと憤りを撒き散らす会長。

「やめろ、床が抜ける」

これ以上わめかれても迷惑なので俺は本体とテレビを繋いでやることにした。

大した労力でもなくほんの数分で電源がつく。

「何でこんなこともできないんだ……」

「むう…かたじけない」

素直に感謝されてしまった。

「…じゃあ、俺はもう行くわ」

「まて、わしに一人でやれと申すのか!?寂しすぎるじゃろう」

「…………」

数時間後。

「ざっけんなジジイ!それは俺のアイテムだろ!!」

「ほっほほーい、早いもん勝ちじゃ」

「甘いのじゃ!」

「なぁーにぃー!?」

「負けるかぁ!そこどけぇ!」

「どくかばかめ!」

「わしのテクでしびれさせちゃうよ~」

「あー!」

「ああーー!!」

「あああああああああーーーー!!?」

「三人ともうるさーーい!!」

めちゃくちゃ怒られた。

「お前が俺の前を塞ぐから…」

「戦略もわからんのか、愚か者め」

「ふぃー、久々にいい汗かいたわい」

「仲良くできないならゲームは没収だからね!」

「「「はーい」」」

とりあえず電脳遊戯に浸るのはこれでお開きとなった。

ふと時計を見るともうすぐ11時。

まずい、異世界に行くのを完全に忘れていた。

横目で会長の様子を探る。

遊び疲れたのか満足そうにベッドで横になっている。

「なんじゃ」

見ているのがばれたのか問いかけてくる。

「なんでそんな古くさい話し方してんの」

適当な話でごまかした。

「父と母は時代劇が好きでの…、気を引くために使ってたら癖になった」

以外に重い話だった。

「なんつーか…ゲームくらいなら付き合うぜ、俺でよければ」

「はっ貴様はわしの犬になるんじゃから当然じゃ」

そう言いながら寝返りをうって反対側を向いてしまう。

俺は彼女が動かないのを確認してから部屋を出て、そのまま里美の部屋に移動した。

そしてワームホールをくぐり異世界旅行へと出発した。

いつものごとく弾け飛ぶ服。

馴れた手つきでそれを広い集めてタンスからいつもの装備を引き出しきがえる。

その時だった。

ワームホールから人影が飛び出してきた。

「!?」

突然のことで受け身をとることもできず俺はもみくちゃになりながら人影と交錯する。

「イタタ……」

壁にぶつかって静止したところで改めて状況を確認する。

俺は抱き抱えるように生徒会長と重なっていた。

「きっ貴様、どこを触っておるっ!!」

柔らかい素肌に食い込む十本の指。

ツルペタかと思いきや以外に胸がある。とはいえ里美の足元にも及ばないが。

「いつまでそうしとるんじゃっ!」

「あいたっ」

顔面を頭突かれて思わず手を離す、その隙に会長は俺の腕から脱出し手早く服を羽織った。

「ふふふ……ふふ…ふっふっふ…」

そしてこらえきれんとばかりに笑みを漏らし震え出す。

「ははは、まさか……こんなことが現実にあるとはのう」

俺は会長を摘まむとワームホールに投げ入れた。

そのあと再び出てきたところを網で捕まえた。

「何するんじゃー!?」

「知られたからにはただで返す訳にはいかないなぁ」

ぶっちゃけマジでどうしようか悩んでいた。

とりあえず捕まえてみたものの、この先はノープランだ。

口封じとかはしたくないがこいつがおとなしくしている保証は皆無だ。

それにしても後をつけられるとは完全に油断していた。

いや、ゲームの対戦自体、俺を油断させるための罠だったのかもしれない。

「早く出してほしいんじゃが~」

緩慢な態度の裏に鋭利な思想が見え隠れする。

拘束されて身動きのとれない状況でこの余裕。

いつでも脱出できる、そう思えてならない。

その時点で俺はこいつの術中にはまっているのかもしれない。

おそらく権力も能力も何一つ敵わないのではないか。

勝てるのは体格くらいだろうか、それもどれだけ意味があるのかわからないが……。

「お前、そこから出たら何する気だ?」

「んー、まずは情報収集かの~、手下を呼んで適当に歩かせるか」

その瞳は未来を見据えて爛々と輝いている。

それは夢見る少女のような清らかさとは無縁の野望に満ちたドギツイ煌めきだ。

きっとこの世界にそれを実現する何かがあると確信しているのだろう。

「…止めとけ、ここには人を襲う魔物がいるんだ」

「魔物……」

そうだ、俺がこいつに勝てるものがもう一つあった。

この世界の事情だ。

とはいえ俺もそれほど詳しい訳ではないが。

「……ということは、その魔物どもを退治する術もあるんじゃろう?」

「そうだ、お前を殺すことだって簡単にできる」

丸く大きな瞳がぎゅっと細くなる。

その刃物じみた視線としばしみつめあう。

ハッタリが通じるだろうか。

たぶん通じる。

こいつは人を信じない。信じないということは悪意を恐れているということだ。

だから嘘だとほぼ確信していても、片倉 曜という人間が自分を害する可能性を捨てきれない。

たぶん手下をつれてくるというのも嘘だろう。

異世界という美味しいネタは独り占めにしたいと思うはずだ。

「……ふっ立場逆転というわけか、して、ならばなぜすぐに殺さない?わしに何を望んでおる?」

………………。

「俺の仲間になってくれ」

簡潔に告げた。

とうの織田会長はポカーンと口をおっぴろげていた。

やがて思考が戻ったのか瞳の焦点があう。

「仲間……じゃと…?」

「ああ」

見えないところでなんかしら企まれるよりは近くに居てくれた方がましだ。胃が痛いことに変わりはないが。

「……本気か?」

「本気だ」

「…………」

「…………」

「…して、貴様はここで何をしているのだ」

「魔王を倒す旅をしている」

多少の語弊はあるがおおむねそんな感じだ。

会長はさっき以上に驚きみじろいでいた。

そして。

「ふふふ…はっはっはっはー!この織田 希子に魔王退治を手伝えと申すか、はっはっは!」

ひとしきり笑ったあと会長はどこかスッキリとした笑みを浮かべて告げる。

「よかろう、その誘いにのってやる」

「交渉成立だな」

俺は網を開けて会長を解放する。

「して、まずどこへいく?」

「ついてこい」

部屋を出て宿屋を出て街道を歩く。

ふと後ろを振り返ると会長が興味深そうに辺りを眺め回していた。

俺はもう慣れてしまったがこうしてみるとただの子供のようだ。

「なんじゃい、じろじろ見て」

「別に」

連れだって噴水広場までやって来た。

「遅い!」

そこではヘカテリーヌが仁王立ちして俺達を待っていた。

「ちょっと立て込んでてな」

「なにこの子可愛い~、お名前は?」

会長に視線を合わせてしゃがみこむヘカテリーヌ。

「馬鹿にするでない!わしは今年で18じゃぞ!上級生じゃぞ!」

「そっかー、偉いねー」

「むきー!なんなんじゃこいつは!」

「ヘカテリーヌ、俺の仲間だよ。んでこっちは織田 希子先輩、えーと…、偉い人だ」

「そっちでは子供が偉いの?」

「誰が子供か!」

「まぁまぁ、広い器を見せてくださいよ先輩」

「まったく、仕方ないの~」

適当に場を収めて話を進める。

「それでこの子なんなの?」

「なんかついてきちゃったんだ」

「もー、子守りくらいちゃんとしなさいよ」

「んー怒らないぞー、わしは謙虚じゃからな」

「新しい仲間にしようと思うんだ」

「本気!?冒険は遊びじゃないのよ、こんな子供に…」

「怒らない、怒らない…」

「子供だけどわりと役にたつぞ」

「おい!貴様はわざとじゃろ!」

腕をかまれた、痛い。

とりあえず織田会長のジョブ適性を見るために役所に向かう。

「これに手をかざせばいいのか?」

水晶に触れると不思議な模様が浮き出てくる。

「えーと、会長の適性は――――――――――料理人だな!」

「なんでじゃ!?」

「オースゴイウラヤマシイー」

パチパチ。

「嫌じゃー、嫌じゃー」

ぐずる会長を引きずって噴水広場まで戻ってくる。

「どうして嘘つくの?」

その途中ヘカテリーヌが耳打ちしてくる。息がかかってこそばゆい。あと良い香り。

「本当はお」

「面倒なことになるだろ」

「…かわいそう」

そう言って会長を抱き締める。それでおとなしくなった。

「それで時魔法の件は?」

「あんたが来ないから先にお城にいって聞いてきたわよ」

どうやら近くに遺跡らしきものがあるらしい。

「時魔法とはなんじゃ?」

「時を操る魔法だよ、料理人の会長には使えないけどな」

「む~…」

とりあえずそこに向かうことにする。

「おい待て、料理人のわしはどうすれば良いんじゃ」

「俺が守るよ」

「私も守るよ!」

「……ふん…」

というわけで早速門を出て遺跡とやらに向かう。

『天鳴斬』

プニプニスライムを切り殺しながら平原を越え森を抜けて、やがて古びた建造物に辿り着いた。

遺跡といっても石畳に半壊した塔といくつかの飾りが散在するだけの辺鄙な空間だった。

「ここがそうなの?」

「とりあえず探してみよう」

「ちょっと……休憩……せぬか…?」

隣で虫の息になっている会長が懇願する。

「だらしないぞ生徒会長」

「うるさい、わしと貴様らとでは歩幅が違うんじゃ!」

俺達は手分けして調査を始めるが大した労力でもなく特に収穫もないまま見終わってしまった。

「ふー」

ひたいにたまった汗を拭いながら腰をおろして空を見上げる。

果てしない青は吸い込まれるようで、このまま溶けて消えていくような錯覚を覚えた。

なんだかこの状況に既視感がある。

前にも同じことがあったような…?そんな筈ないんだが…。

「何をサボっておる」

「ちょっと休憩してただけだよ」

まあ大した成果もなくなげやりになっていた部分はあるが。

「どっこいしょ」

すると会長も隣に腰をついた。

「お主がこんな冒険をしているのを里美嬢は知っているのか?」

「……言ってないからな」

「隠すのは後ろめたい事があるからじゃろう」

図星だ。返す言葉もない。

「彼女を泣かせたらただじゃおかんぞ」

「お前里美には甘いよな、何で?」

「お主には関係ない」

後ろめたいことでもあるんだろうか?

「ちょっとー何サボってんのよ!」

「あー今いくよ」

俺達が時間をもて余している間にもヘカテリーヌは懸命に遺跡をほじくりかえしれいる。

同じ場所を何度も、繰り返し、丁寧に。

「無いものは無い」

「それがあいつの良いところだよ」

「理解できんな」

しかしその後も見つかるのは変な虫とかでめぼしい物は何もなかった。

俺達は徒労感に押し潰されるように大地にへたりこんだ。

「もうだめじゃ、一歩も動けん…」

「よく頑張ったねー」

ヘカテリーヌにだっこされながら愚痴を溢す会長。

「他にあてはないのか?」

「……ここだけみたい」

項垂れるヘカテリーヌ。こうなったら何度でも探し続けるしかないか。

「なんかヒントとかないんかなー」

「そういえば……」

「?」

膝枕に寝転がる会長が何かを呟く。

「どうした?」

「…いや、ただのうわごとじゃ、忘れてくれ」

「別に間違ってても良いって、教えてくれ」

「……昔、紫摺とそんな話をしたなと思っただけじゃ」

紫摺?誰だろう。

「そんな話とは?」

「占いまじないの類いが好きみたいでの、その中に時を戻す物があった気がする、という話じゃ」

時を戻す……まじない……?

「つぅっ……!」

「どうしたの!?」

急に頭痛が襲ってくる。

何かが頭蓋骨を割って這い出してくるような強烈な痛み。

前にも同じことがあったような…。

そうだ、夜の学校で白い影に襲われた時と同じ。

あの時は見たこともないイメージが頭の中に流れ込んできて……。

確かその中に……変なまじないが………。

「……それって、火の回りを回ったりするやつですか?」

「そんなんじゃったかな」

「大丈夫なの?」

「なんか書くもんくれ」

俺は紙とペンを受けとると誰のものとも知らない記憶を便りにそれをはしらせる。

そしてそれぞれの髪を一本切って挟む。

さらに炎のような飾りに乗せた。

「何してるの?」

「これを三周してから俺に続いて唱えてくれ」

「??」

ヘカテリーヌはよくわかっていないようだったが、おれ自身もよくわからないし、まあ試す思いでやってみるしかない。

飾りの回りを回った後、呪文を唱えた。

「モドレドレドレモドレドレ」

「「モドレドレドレモドレドレ!」」

………。

…………………。

…………………………………。

「…………駄目か」

特に何も起こらないようだ。

なんだろう、めちゃめちゃ恥ずかしい…。

「見てっ!」

「!」

沸き立つような声にため息をつく頭を持ち上げる。

そして見えた。

「……塔が」

復活している。

崩れて冠のようになっていた塔が何倍もの高さで屹立していた。

その偉容はさっきまでの煤け具合とは程遠い威圧感だった。




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