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生徒会

『二年F組片倉 曜さん、至急生徒会室まで来てください』

「なんかやらかしたのか?」

「曜ちゃん…」

「いや、そんな筈は…」

体育祭の振り替え休日があけて火曜日。

いつものように学校へ通いいつものように授業を受けていた俺は、突如呼び出しをうけた。

「けど職員室じゃなくて生徒会室ってのは妙だな」

確かに問題をおこしたとかなら前者が適当だろう。

生徒会が俺に何のようだ?

「うちの生徒会っていやぁ教師もビビるっていう強権を持ったやべぇ連中らしいからな、気を付けろよ曜」

なんでただの生徒会がそんな権限もってんだよ。

とりあえず俺はすっぽかすこともできず呼び出しに応じる。

汗ばむ手のひらを握り扉を叩いた。

「入りたまえ」

やたら偉そうな応答を聞いて扉を開けた。

これは――――――――!?

やたら重そうな扉の裏に人の気配。

俺を狙っている?なぜ?

腕に力を入れいっきに扉を開け放つ。緩急差で敵は反応が遅れる筈だ。

そこを取り押さえる。

全身で飛びかかり拘束した。

モニュ。

右手が柔らかい物を掴む。

「このっ…」

力を緩めた瞬間蹴り飛ばされた。

「ぐはっ」

四つん這いのまま滑りなんとか体勢を整える。

そして正面を睨み付けると敵の姿を確認する。

守るように胸を抱えながらこっちを見下ろす眼はつり上がっていて浅黒い肌に茶色い髪は後ろで無造作に纏められている。

スカート丈は短くYシャツは大胆にはだけられていて豊満な胸部を覆う紫の見せブラが覗いていた。

こんな奴が生徒会にいて良いのか?

そいつは上級生の上履きを履いていた。

「う…うっうあわーん」

すると女は大袈裟に鳴き始めた。

「彼ピにも触らせたことないのに~、会長、これって浮気に入る~?」

「あー会長権限でもみ消しておいたから安心しろい」

喜び跳ねる女を尻目に俺は部屋の奥を睨む。

そして見上げた。

中央の椅子に座るのは身の丈5メートルはある大人物。

後光に照らされて顔は見えない。

あれが生徒会長なのか?

「大きくてすまんね、首が痛む前に話をつけようじゃないか」

「いや、それただのダンボールだろ」

鍛冶師になった俺は物の構造が何となくわかるようになった。

「てかそれだと立ったら天井にぶつかるし、扉もくぐれないだろ」

室内に微妙な沈黙が降りてくる。

しばらくそうしていると会長が慌てたように弁明してくる。

「なっ何を言っておるのじゃ!これが正真正銘わしの身体じゃ、適当な事を言うな!」

なぜか口調が変わっているが俺はぽっけから愛用のとんかちを取り出すと会長の顔面に向かってぶん投げた。

「あーー!?」

まっすぐに飛んでいったとんかちはクリーンヒット、見事標的を叩き落とした。

「なにするんじゃ!せっかく作ったのに…」

「やっぱり作ったんじゃないか」

「ち、ちがわい!わしの顔は付け替え可能なんじゃ!アンパンマンを知らんのか?!」

「会長、いい加減お見苦しいですよ」

「…!?…、…、……うぅ」

隣の女性にさとされて会長は渋々黙る。顔を失った偽会長もなんだか寂しそうだ。

「貴様、わしの変装を見抜くとはまあまあやるではないか、流石はわしが見込んだ男なだけあるな」

相変わらず態度はでかいまま話し続ける会長。

そして偽物の張りぼての後ろから姿を現した。

「ちっさ……」

「今ちっさ…と呟いたな?!聴こえておるからなっ!」

出てきたのは逆に小学生くらいの女の子だった。

「生徒会はいつから託児所になったんですか?」

「会長はれっきとしたわが校の生徒です…フフ…」

「あっはっはっはいーひっひ」

「お前ら笑うなーーーー!!」

案外和やかな空間なのかもしれない。

「ふん、余裕ぶっこいていられるのも今のうちじゃぞ、貴様の命運は我が手の内にあるんじゃからな」

「どういうことだ?」

「ふっ、知っておるぞ?伊達里美が記憶を失っている事は」

「!?」

………なぜ。

「その反応、どうやら事実のようじゃな」

ブラフ?だとしてもなぜそこに辿り着けたんだ。

不敵に笑うちっちゃい生徒会長。思っていたよりもここはまずい組織なのかもしれない。

そして会長は含み笑いで一枚の写真を投げてくる。

これは……!?

「貴様、伊達里美と温泉旅行に行ったらしいな、しかも外泊で」

写真には俺と里美が旅館に入っていく所が写っていた。

「不純な交遊は当然罰則の対象になるが……?」

「違う!俺達はただ遊びに行っただけで」

「混浴に入っていたという目撃証言もありますよ」

「それは……」

「これはいかんのー、未成年が裸体を見せあっていったい何をしておったのか」

「あほか、公共の場で大したことできるわけ…」

「事実は関係無い、それは体育祭で身に染みている筈じゃが?」

「!?」

俺はあのとき犯人に写真を撮られて実効犯にしたてあげられた。

「こんな事が知れればただでさえスタイルのいい里美嬢は全校男子からどんな目で見られるかの~?」

こいつ、里美を使って俺を脅す気か。

けどそれならどうして本人をつれてこない?なぜ俺なんだ?

「いったい何が目的だ?」

「簡単じゃよ、御主には生徒会の犬になってもらいたい」

「一緒に働いてほしいのです」

「おい!そこはわしがかっこつける所じゃろがい!」

一緒に働くだと?俺が生徒会に入るってことか?

「貴方は体育祭で起きた問題を解決しました。私達はその事を評価しているのです」

「はっ、その結果が脅し紛いの勧誘か、素直に頼めない辺りひんまがってんな。友達いないだろ」

俺はいるぞ、一人だけだけど。

「ガっ」

突然正面のテーブルに押さえつけられた。さっきのギャル女だ。

「あんまりなめた口きいてると金玉踏み潰すぞ」

「そうじゃそうじゃ、その気になれば全校生徒の弱味をばらまくことだってできるんじゃからな」

「へぇ、生徒会メンバーのもか?」

「!」

力が緩んだところで脱出する。

「酷い話だな、会長は誰のことも信用してないみたいだぜ?」

「だ、だからどうした?!私らは会長を信頼してる」

それにしては動揺が隠せてないが。

「もうよい笑美、強がったところでこやつには何もできん」

確かに里美を盾にされたら俺はどうしようもない。

バァン。

ここで大きな音をたてて生徒会室の扉が開かれた。

「曜ちゃん」

「曜」

「さっ里美嬢!?」

そして里美と駆流の二人が飛び込んできた。

「その…心配になって…」

「なんだこのロリッ子!?」

「誰が合法ロリじゃ!わしはまだ十八じゃ!」

誰も合法とは言っていない。

「十八でその口調は恥ずかしくないんですか?」

「むきーー!貴様、言ってはならぬ事をー!」

「会長、話の続きを」

隣の女性になだめられなんとか落ち着くのじゃロリ生徒会長。

「貴様らは呼んでおらぬぞ、とっとと出ていけ」

「まあ駆流は関係無いな」

「酷い!?」

メソメソと泣きながら退出した。

「これ…盗撮」

机に置かれた例の写真を見て呟く里美。

「盗撮ではない、これは生徒の素行調査の一環じゃ」

「それで曜ちゃんに何をさせる気ですか?」

「生徒会の犬にしたいんだと」

「ち、ちがわい!」

異様に焦る会長、なぜか里美が来た辺りから様子がおかしい。

「これを見よ」

渡されたのは一枚の紙。明朝体で何やら綴られている。

「それは現在学校で起きている問題事のリストです」

「一週間以内にその中の一つでも解決できたら貴様の悪行は揉み消してやろう」

揉み消すも何も悪いことなんかしてないが、これ以上付きまとわれるのも厄介だ。

俺はリストを持って生徒会室を出た。

俺は活字を読み下しながらさっきの事を思い返す。

確か生徒会に勧誘されていた筈だがこれがそうなのだろうか?なんか物足りない気がするが。

明らかに里美が来た辺りから会長の様子がおかしかった。

俺の事は見下そうとしていた癖に、身長のせいでできていなかったが、里美の事は直接みようとせずチラチラ覗くだけ。

「里美、会長と何かあったのか?」

「無いと思う、でも忘れてるだけかも…」

なるほど確かにその可能性もある。

里美と生徒会長に面識があったなら記憶喪失に気づいても不思議じゃない。

ひとまず俺は教室に戻った。

そして放課後、貰ってきたリストを見直す。

現在学校で起きている問題のリスト、どれか一つでも解決できたら俺は晴れてお役御免というわけだ。

『笑う人骨標本』

『真夜中に鳴り響くピアノ』

『黒板に文字が浮かび上がる』

七不思議かよ。

つらつらと読み進めていくがどれも子供だましに見える。

もしかして解決させない事で俺をこきつかおうって算段なんじゃないだろうな…。

ふと、連なる文字列の一番下。

妙に気になる項目があった。

『佐竹紫摺の豹変』

佐竹……誰だったか。

前にどこかで聞いたような……?

「おーすっ!」

「うをぉ!?」

突然の声に後ずさるとそこには生徒会室にいた女が立っていた。扉の後ろに潜んで俺ともみ合いになったやつだ。

完全にはだけられた胸に周囲の男子生徒がざわめきだす。

「そのかっこ恥ずかしくないんすか?」

「えー皆喜んでんだからいいじゃん、君も好きだろ?こういうの」

襟を広げながら胸を見せつけてくる女。

「いったい何の用ですか?」

すると里美が話に割り込んできた。

「こいつを手伝えってかいちょのめーれー」

やたら派手な指先を俺に向けてくる。

こういう輩は苦手だ。

「別にいりませんよ」

「そーつれないこと言うなよー」

いきなり腕を肩に回してくる女。

そして耳に吐息を吹き掛ける。

「どのみちお前に選択肢はないぜ❤」

俺は生徒会に弱味を握られている。

彼女を振り払う権利が俺にはない。

グイィ。

しかし反対側から引っ張られてあっさりと俺は解放された。

「曜ちゃん、早く行こう」

そして女を睨み付ける里美。横から見てもその眼光には悪寒がはしる。

「伊達里美だっけ?けっこうパワーあんじゃん」

指をならしながら舌なめずりする女。

「まあいいや、私は柴田 笑美よろしく」

こうして俺達は三人で教室を出た。

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