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再開

豪華なパーティー会場を抜け出してこれまた豪華な城内をさまよう。胃もたれしそうだ。

どこか風に当たれる場所を探して迷路のような建物を歩く。

ちょうどよさげなバルコニーを見つけて。ガラス張りのドアを開けた。

「ふー」

自然の息吹を感じてようやく一心地着く。やっぱり俺にこんな煌めく世界は似合わない。

古ぼけたアパートを思いだし郷愁に浸る。

「貴方は…?」

どうやら先客がいたようだ。

声のした方を見て、思考が止まる。

そこにいたのは金色の髪に蒼い瞳、ヘカテリーヌその人だった。

「お前、…なんでここに」

「お前だなんて失礼な人、初対面ですわよね?」

口調の違和感に思考が再起動する。

よく見ると上品なドレスを身に纏っており、仕草も丁寧な気がする。

あいつとは別人のようだ。しかし見た目はよく似ている。

「すみません、知り合いに似ていたもので」

「ああ、城下にそのような方がいらっしゃるらしいですね。勇者を自称しているとか、いい迷惑ですわ」

こんなところにも噂は広がっているのか。

「あいつは、そんなに悪い奴じゃないですよ」

「でしょうね、少しでも問題があればすぐ追放しているでしょうから、ただお頭は働かないようですが」

「まあそうでなきゃいい年して勇者なんて目指さないでしょう」

「ふふ、そこはお認めになるのですね」

仕草や口調は全然違うが笑った顔はそっくりだ。少し見とれてしまった。

「ここにいたのかセイリス」

「あら、バウリーグ様」

やって来たのは王子様だ。

「どこにもいないから心配したぞ」

「私のような末の姫などいてもいなくても同じでしょう?」

「そのような事はない、そなたがいれば部屋はより華やぐ」

「あのような催しは好きではないのです、ここでお話ししている方がましですわ」

するとバウリーグがこちらをねめつける。

お前がたぶらかしたのか、とでも言いたげだ。

「その方は関係ありません、名前も存じませんもの、私、会場に戻りますわ」

そう言って澄まし顔のまま出ていってしまう。後には俺達二人だけが残された。

しかしバウリーグはこっちなど目もくれず彼女の方をずっと眺めていた。

「ヘカテリーヌに求婚したのって、まさかそうゆう……」

「ち、違う!適当な事を言うな!」

慌てるところが怪しい。

「それに彼女はホリット家の娘、御三家同士は婚姻できんのだ」

御三家とはこのアウステラを治めている三人の王様の家系のことだろう。

「だからヘカテリーヌに…」

「違うと言っているだろう!あれは気の迷いだ」

そんなんで結婚相手を決めるとか立場がわかってないと言われるのもわかってしまう気がする。

だが彼がセイリスと呼ばれた姫様を追う視線はどこか寂しげで、彼もまたしがらみを抱えていることがわかる。

「それでも、王様になるんだろ?」

「当然だ、いずれ何処かの国の大臣の娘とでも結ばれるだろうが、それが不幸だとは思わない、父も母も幸せそうだ。結局は己次第。だが…」

その先をバウリーグは口にしなかった。そのままバルコニーを出ていく。

一人残された俺は遠くに見える門を見据える。

「いい景色だな」

どこまでも続く空と大地。

だがモンスターを弾く大きな壁に周囲を閉じられたこの国はどこか窮屈そうに見えた。

パーティー会場に戻ると何やら賑々していた。舞台の上でパフォーマンスが行われているようだ。

「俺の歌を聞きやがれ!」

酔っ払ったギャリドゥーが乱入していた。

俺達はどうやって帰れば良いんだ。

「こちらへどうぞ」

するとメイドさんの一人に連れ出される。

やって来たのは馬車の前。どうやらこれで送ってくれるらしい。

荷席に乗り込むと軍事王様がいた。

「ここにいて良いのか?」

「今は祭りの最中だ、いつまでも現場を離れられん」

王様はお忙しいようだ。

「そうだ、例の事件、進展はあったか?」

「細々としたいさかいはあるが、大きいものはないな」

そうか、このまま何も無ければ良いんだが。

「そういえばこいつが殺人現場にいた女の子だよ」

一緒にいたキルシュアを紹介する。

「何!?」

王様は急に身を乗り出してくる。

「なぜそれを早く言わない!」

「タイミングが無くて……」

「お前が犯人か?!」

本人が白状するわけない。

キルシュアはうんともすんとも言わなかった。

「犯人は見たか?」

馬車の中で尋問が始まってしまった。

今度は首を横にふるキルシュア。

「そのフードはなんだ、顔を見せろ」

すると王様が伸ばした手を一瞬で掴む。振り払おうとするがまったく動かない。

諦めて手を引く。

「顔に傷があるんだ」

「傷がなんだ、戦士なら誇りだろう」

それが自分でつけたものらしい。何か事情があるんだろう。

「悪いが、君は我々が保護させて貰う」

保護という名の監禁だろう。

「そいつも出場者だぜ」

「ちぃ、どいつもこいつも、ただでさえリタイアの多い時に……」

そんな話をしているうちにいつのまにか城下へと戻ってきた。

全員一緒に馬車を降りる。

王様はまた監視するらしい。

スタジアムの控え室に戻るとだいぶ人も少なくなってがらんどうだ。

ちょっとさみしい気もする。

「もうすぐ試合が始まる。せいぜい励むのだな」

「ああ」

とはいえ俺にできることは限られている。

しかも相手は黒ローブ三人衆最後の一人。素性がわからなければ戦闘スタイルもさっぱり。さらに一回戦はシードで免除、対策のたてようがない。

まあ特に勝たなきゃいけない理由もない。

ただ俺の試合が終われば直ぐにヘカテリーヌの試合になってしまう。

できるだけ時間を稼いで体力を回復させたいところだ。

彼女の様子を見ようと医務室へと向かう。

扉を開けるとちょうど着替えの最中だった。

なんか最近こいつの裸をよく見ている気がする。

直ぐに拳が俺の頬を撃ち抜く、取り合えず元気そうでよかった。

「体調は良さそうだな」

「当たり前よ、ここまで来て眠ってられるもんですか」

俺はこっそりくすねてきた料理をヘカテリーヌに渡す。

「美味しい!どうしたの、これ」

「ちょっとな、ほっぺついてんぞ」

やはり城で会ったお姫様とは大違いだな。

「勇者になっても城で暮らすのはやめた方がいいぞ」

「?何の話?」

ちょうどペロリとたいらげたところでアナウンスがかかる。

『ただいまより聖剣武闘祭をー、再開い、た、し、ます!!』


ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!


『それではまいりましょう、最初ですが二回戦最終試合、場違い?いいや、筋違い!駆け出し鍛冶師カタクラVS、またまたまた!?正体不明、ウォルレン選手の登場だァァーー!!』

「行ってらっしゃい」

「おう」

前回を習って登場口を歩く。薄暗い道は異世界へと続くトンネルのようだ。

隣を黒いローブで姿を隠した人物が歩く。ここではより不気味にみえた。

「あの、よろしくお願いします」

おそるおそる声をかけた。

「よろしく」

すると返事が返ってくる。

案外まともな人なのかもしれない。

眩しい太陽が焦がれるフィールドに出ると観客の歓声はよりけたたましくなる。

どくん、どくん。どくん。

心臓が呼応するように跳ねる。

一度深呼吸。そして試合が始まった。


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