冒険者登録
俺とイーリィは、ティト先輩をまじえて話し合っていた。
「ティト先輩。
いまのままで俺たちは、都市代表トーナメントを勝ち抜くことが出来るだろうか?」
「…………正直、難しいだろうな」
先輩いわく、やはり都市トーナメントの出場チームは、学園トーナメントとは比べものにならない強豪ぞろいとのことだ。
現在の俺たちのステータスを確認する。
"名前:ユウ
レベル:38
スキル:雷撃剣、投擲、殴打、逃走、威圧L
ユニークスキル:女神の恩寵"
"名前:ティト・キュイナ
レベル:34
スキル:剣術、火炎、馬術、体術、回避
ユニークスキル:騎士の誇り"
"名前:イーリアス・エーイティ
レベル:13
スキル:召喚術"
"ファングウルフ(個体名:ラグ)
レベル:12
噛み付き、咆哮、爪撃"
「単純な実力不足だ。
都市代表トーナメントは厳しい戦いになる。
カノ・クーガー以外の相手も、全員強敵だと思ったほうがいい」
「そんな……。
じゃあどうすれば……」
イーリィは不安げに先輩を眺める。
「特訓するしか、ないだろう」
「でも、郊外の森にでるモンスター相手じゃ、もう俺はレベルが上がらない」
あの森の敵は弱い。
ゴブリンにホーンラビット。
あとたまにファングウルフが出るくらいだ。
「それなら心当たりがあるぞ。
ダンジョンだ。
そこで特訓をしよう!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
学園都市の近郊にはふたつのダンジョンがある。
それは北の中級ダンジョンと、南の初級ダンジョンで、どちらも冒険者ギルドが管理している。
「ここに来るのも、久しぶりだなぁ」
ライトニングウルフの素材を売りに来て以来か。
いま俺たちは冒険者登録を行うべく、ギルドに来ていた。
冒険者カードがあれば、ダンジョンに入ることが許されるためだ。
「すみません。
冒険者登録したいのですが」
ギルド嬢に声に掛けた。
見覚えのあるお姉さん。
たしか前に、素材買取でお世話になったお姉さんだと思う。
「まあ、あのときの少年⁉︎」
「え?
俺のことを覚えているんですか?」
「もちろんですよー!
あなたのような将来有望な方を、忘れるわけがございません。
なんと言っても、冒険者ギルドはいつも優秀な人材を求めていますので」
なんだかこうストレートに褒められると、さすがに照れてしまう。
このひとも一度買取をお願いしただけの俺を覚えているなんて、きっと優秀なギルド嬢なんだろう。
「魔法学園の生徒さんだったのですね。
ではすぐに試験を受けますか?」
「試験?
そんなものがあるんですか?」
「ええ。
この登録試験で、どの等級から冒険者としてスタートするかの選別が行われるのです」
なるほど。
なんでも試験は、いまいるこのギルドの試験会場で受けられるらしい。
俺たちは早速試験を受けることにした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「きゃぁあああ!」
「キュィィーン!」
イーリィとラグが試験官の男性にやられた。
厳しい面構えの、筋肉ムキムキのおっさんだ。
「受験番号13、イーリアス・エーイティ!
お前はE級からスタートだ。
筋は良いから頑張れよ!」
「……ええ。
でも悔しいわ」
「では次は、私の番だな」
ティト先輩が大剣を構える。
対して試験官さんは、大きな斧を構えた。
「ほう。
ティト・キュイナか……」
「……私のことを知っているのか?」
「もちろんだ。
魔法学園きっての天才魔法騎士。
くく……。
これは有望株がやってきたな。
さぁ、かかってこい!」
ティト先輩が飛び出した。
先輩は大剣と炎魔法を巧みに操って、試験官と激しい攻防を繰り広げる。
「流石だな、ティト・キュイナ!
こんなに強い新人は初めてだぞ!」
「それは光栄だ。
だが余裕ぶったその態度が気にくわないな。
……そら!」
先輩の大剣が、大上段から叩きつけるように振り下ろされる。
しかし試験官もさしものもで、斧を振り上げ、大剣の刃と打ち合わせた。
ギィンと金属質な音が響く。
威力はほぼ互角だ。
「っぅッ⁉︎
つよい!
さすがはティト・キュイナ!
新人相手に本気を出すのは癪だが……」
試験官の攻撃が激しくなった。
見るからに破壊力のありそうな大斧が、唸りを上げて先輩に襲い掛かる。
さしもの彼女も防戦一方だ。
「ぐわぁッ!!」
先輩が吹き飛ばされた。
しかし試験官のほうも、肩を揺らして荒々しく息をしている。
「な、なんてヤツだ。
これでも俺は現役のB級冒険者なんだぞ!」
「……くッ。
だが負けは負けだ……」
先輩が悔しげに拳を握った。
「ティト・キュイナ!
お前はC級からスタートしろ!
ったく、こんな新人みたことねえぜ!!」
すごい!
さすがはティト先輩だ!
◇
俺の番がきた。
剣を握って前に出る。
「最後はお前か、坊主」
「ああ。
よろしく」
「……そんなに強そうには見えねえなぁ」
試験官はあんまりやる気がなさそうだ。
斧もだらんとぶら下げたままである。
「ふ……。
それはどうかな?」
ティト先輩がどこか楽しげに呟いた。
俺の勝利を疑っていないらしい。
「そこの彼は、この私より強いぞ?」
「ははっ。
こ、こんな坊主がぁ?
おいおい、冗談はよせよ」
彼はまだ俺を侮っているようだ。
でも俺は気にしない。
剣をあわせてみれば、直ぐにわかることだ。
「御託はいい。
……さあ、いくぞ!」
試験が開始された。
鋭い連続攻撃で試験官を攻め立てる。
袈裟斬り、逆袈裟、平突きからの薙ぎ払い。
そのどれもが学園生のレベルをはるかに超えている。
「な、なんだと⁉︎
こんな坊主が……⁉︎」
彼試験官は目を見開いて驚きながらも、俺の激しい攻撃を斧を盾にして何とか防ぐ。
「ちッ……。
本気でいくぜ!」
彼はすぐ俺の実力に気付いて本気を出してきた。
切り替えがはやい。
さすがはB級の冒険者だ。
でも!
「うぉおお!
雷撃剣ッ!」
「なぁッ⁉︎
そ、それは!
うあああッ⁉︎」
ティト先輩ですら防げなかった雷撃剣だ。
初見では対応できまい。
試験官が吹き飛び、感電して気絶した。
「はぁ、はぁ……。
どうだ!」
遠巻きに試験を眺めていたギャラリーがざわめく。
「お、おい、あいつ!
試験官を倒しちまったぞ!」
「ぜ、前代未聞だ!」
「それよりさっきの技……。
まさか、魔法剣じゃないのか⁉︎」
どよめきが収まらない。
こうして俺は『B級』冒険者になった。




