表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/29

奉行所

今日は1話目がsideだったので2話更新してます

 俺は【使徒】の哨戒を掻い潜って奉行所の裏手に辿り着いた。勿論、見える範囲のバンシーたちはスニークキルで倒した。ブレッシングウォーターを集めておかないと難易度NIGHTMAREだと後半で詰まるからだ。

 逆に言うとこのキャプターは稼ぎどころと言える。序盤のうちに強化しておかないと。


『なかなかだな。見事なお手前だよ』

『腕なら先に入った姉萌音(あねもね)の方が上だよ』


 俺は念話しつつ、裏門から奉行所の内部へと入っていく。お白州に入るとイベントでボスが現れる。最低でも先に建物内に入ってクロスボウと油のついた矢とジッポライターを手に入れておきたい。お白州にある油に火をつけるにはライターか銃弾が必要になる。NIGHTMAREではこれらを駆使しないとノーダメージどころかボスを倒せない。


『だろうな。特殊能力【無限弾薬】とか言うのを持っておった。じゃがそれを過信して銃を撃ちまくって囲まれて死におった。げーむおーばーになる前に特殊能力の項目が消えたからゲームをやり直したら固有能力が失われるのかもしれぬ』


 これは貴重な情報だ。余計にコンティニューしない訳にはいかない。つーか、自称神様とやらは相当性格が悪いようだ。


『クリアしたら固有スキルは持ち越せるんだろうか』


 クロユリは奉行所の塀に降りてお白州を眺められる位置にいる。2体の【使徒】がジャックを抑え込んでる。そして座敷の座布団の上には本来は奉行が座っている筈なのだが教科書に乗っているような姿をした金髪で白人の天草四郎時貞が座っている。どうして履物を履いたままなんだとツッコミを入れたくなるが──見た目が白人なので野暮なツッコミを入れるのは止めよう。と言うか白人のコスプレにしか見えん。もっと言うとこいつは天草四郎時貞のカリスマに当てられて影武者になった宣教師なんだが──


『残念ながら分からぬ。それより最初の関門のような気がするが間違っておるか?』

『いや、最初のボス戦だ。あんまり見たくない光景が目の前に広がる』


 俺は屋敷内に入り、部屋でクロスボウと油のついた矢とライターを回収する。止めろよとかジャックを救えよとは実況でもツッコミが入っていたが強制イベントで動けないしジャックはほぼ最初から変異し掛かっているのでどうにもならない。


 これは公式の裏設定だがジャックは幽霊や神秘的な物に惹かれやすく憧れを抱いている為にこの世界への耐性が低いらしい。逆に言えばこの世に留まろうと考えるのなら耐性が高くなるそうな。


『なんとなく事の顛末は想像できそうじゃがな』

「これよりこの者を救う。愚かな幕府の戒めより開放するのだ」


 クロユリの声を聞きながら奥から台詞が日本語で聞こえてくる。これまで英語だったら堪らないな。


『バテレンの言葉ではないな。流暢な事じゃ』


 どこか皮肉にも聞こえる。現代人の物言いとしては変な気がするがボスを倒した後で聞いてみるか。俺は何故か部屋の壁に貼られている解剖図を調べる。ゲームと同じように強化項目が出て来る。

 勿論、スニークキルに関するしゃがみ移動やスタミナを1段階強化しておく。本当は足音も出来るだけ消しておきたいが肝心な時に走れないのでは話にならない。


 準備は出来た。気が進まないが行くしかない。まだキャプター2なのだから。俺は玄関から出て横手からお白州に回る。イベントが始まって3体目の【使徒】によって腐ったような異臭を放つ灰色の液体をジャックに無理やり飲ませていく。


「どうやら曲者のようだ。好機と思うべきか。ジャックよ、そなたの神への忠誠を示すのだ」


 天草四郎時貞の影武者が命令すると同時にジャックの身体が変異し顔には血管が浮き出て変な腫瘍ができ、目から赤い血のような液体を流す。隣りにいた【使徒】2体が取り込まれ、その身体が巨大化し、液体を飲ませていた【使徒】はその太い腕に叩きつけられて篝火の上に落ちる。断末魔を上げながら【使徒】の身体は火で焼かれ灰になる。これはヒントなんだが今の俺には人体が焦げた臭いと嫌悪感で吐きそうになるのを堪えるのがやっとだ。

 ジャックは二頭の頭をコボルトのような獣人に変異し叫び声を上げる。


「素晴らしい! クルセイダーと名付けよう。早速、御方に報告しなければ……ジャックよ、この場を任せたぞ」


 天草四郎時貞の影武者は捨て台詞を残して消える。ムービーでは座布団の上に光っているものがあるがボス戦なので倒さないと取れない。一応試してみてもいいが失敗した時のリスクを考えると普通に倒した方がいいだろう。

 元ジャックたるクルセイダーは左手で近くにあった篝火の足を掴みこちらに投げようとしてくる。勿論、食らえば大ダメージは間違いない。だが同時に──


 持っていたクロスボウで左腕を貫く。持っていた篝火を落としてその松の油を被り、クルセイダーは火で息ができずにもがき苦しむ。その間に別の篝火から矢に火を灯してクルセイダーの頭を狙う。


 クロスボウから放たれた矢は火が消えた瞬間にクルセイダーの口に突き刺さる。その間に俺は塀際にある篝火の前に立つ。2度焼かれたショックから立ち直ったクルセイダーが雄叫びを上げながら俺に襲いかかた。


 体当たりを軽々と左に回避し篝火に突っ込ませる。三度焼かれたクルセイダーのクロスボウの矢で目を貫き、トドメに油の入ったツボを投げた。それは犬頭の頭部に直撃する。


「ほらくたばれ!」


 そして油まみれのクルセイダーに向かって落ちていた松明を投げる。放物線を描いて松明は奴の胸部に当たり引火する。断末魔をあげて元ジャックは液状に返った。


『えらく軟弱な親玉じゃ。でないと困るが』


 クロユリは消えていったクルセイダーを横目で見つつ、外の様子を伺う。言われなくても【使徒】の警戒と監視をやってくれるので有能と言える。ありがたい話だ。


「最初のボスだからな。それに攻撃オブジェクトもあるし、ボーナスでダメージが入るし楽な方だ」


 リボルバーの弾とクルセイダーからブレッシングウォーターを回収して天草四郎時貞の影武者が居た場所を探る。書状で城を乗っ取って幕府と戦うと書かれている。同時に東側に海と南側に城がマップに記載された。ムービーが挿入されるが俺は解除する。これからの目的地である城を示すだけだ。この角度だと奉行所の影に隠れているが城は遠い。歩いていける距離ではない。


『そうか。一応急いだ方が良さそうじゃな』

「そう言えば、クロユリ。あんたはこの時代の人間なのか? 話し方が古風すぎるがキャラクターの影響か?」


 俺はわざと間違った問いを投げかける。クロユリが演じているブラックリリィは公式でも殆ど背景が語られていない謎の人物いや謎の鳥になっている。

 当然と言えば当然なのだがな。


『そなたの想像に任せる。それよりも愛しい【使徒】が来るぞ。とく離れるよかろう』


 その言葉に取り忘れた物がない事を確認して俺は奉行所を出て城の方へと向かう。チャプター2クリアのメッセージが出てリザルト画面が表示される。ノーセーブだった為にボーナスポイントと言うかブレッシングウォーターが入った。

 これがないとどうにもならないんだよな。NIGHTMAREと言えどもオートセーブはあるので死んだ場合はそこからだ。あとリスタートもあるが──とにかくこれで次のチャプターはなんとかなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ