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ゲームスタート

 俺は本来ならプレイヤーキャラクターであるスティーブンが目を覚ます座敷牢で目を覚ました。眼の前には回復アイテムであるハーブが落ちている。

 当然、これを使えという事なのだがこの後のイベントで全回復するので使わない。難易度によってはこのハーブで回復しても狂信徒の攻撃で一撃死なので無駄だ。


 勿論、ノーマルかイージーの場合もあるが──ここのハーブ数を見る限りノーマル以上のようだ。忌々しい。

 詰まないようにコンティニューとオートセーブポイントを駆使するしかない。自動的に開かれるMAPを見ながら位置を確認する。


「頭が割れそうだ。つーか本当に割れてそうだ」


 起き上がるのが何度目か。当然ながら懐中電灯すらも落としている。これと武器を回収してこのイカれた廃村からジャックを連れて逃げなければならない。

 ジャックはこの時点ではまだ生きている──まだ。なので座敷牢からの脱出とジャックとの合流が表示される。俺はイベントが起こす為に牢屋のチェックポイントを調べる。


 木の格子に隣の座敷牢に続く穴、そして外に続く窓。窓から見えるのは月明かりと既に夜になっている事。そして本来なら遠くに見える筈の電気の光も飛行機の光も見えない。


「本当に江戸時代の長崎にタイムスリップかよ」


 忌々しげに俺は壁を蹴る。風化していたせいで土壁は脆くも崩れ去った。そして俺が通れるくらいの穴が出来た。


 勿論、本来の主人公であるスティーブンは閉じ込められた事に対して壁を蹴るのだが細かい所はいいだろう。裏マニュアルには本来の台詞で本音を隠す術が書かれていたのでそれを実行する。

 無言で隣の座敷牢へと移動して鍵のかかってない座敷牢から出てすぐに廊下の奥においてある荷物の後ろに隠れた。説明するまでもないがプレイヤーキャラクターを捕まえた狂信徒の見張りがやってくるからだ。


 現時点では武器も懐中電灯もないので見つかれば即ゲームオーバーとなる。当然、ゲームオーバーになれば精神的&肉体的に酷い目に遭うのは避けられないし幾らゲームのようにコンティニューが出来ても姉萌音の様子から考えるにできるだけ無傷で行った方がいいだろう。

 ノーダメージクリアとか得意ではないんだが──やるしかない。


 眼の前を見張りが通っていき、座敷牢を確認に行く。顔には得体の知れない花が咲いている。奴ら曰く祝福らしいが花が咲いている人間は皮膚が崩れ、骨が見えていたりする。

 今、目の前を通った個体は脛骨が見えていた。確実に死んでるな。これもムービーが入って分かる事なのだが無駄なので俺の意思でカットする。


 奴は牢の中を訝しげに覗いているその隙に俺は出入り口へと向かう。だが足元にはトラバサミが置かれているのでそれを避けて進む。

 解除していく時間はない。解除すれば見つかってしまうので仕掛けを作動させてもいけない。勿論、無手で戦いを挑むなど論外だ。一目散に外を目指して逃げたい所だが台所にある包丁を取っておいた方が楽になる。座敷牢エリアから出て左の台所へと入って包丁を取った。


 当然だが床は汚れ、台所の釜も粥らしき物の原型が残っているだけだ。そこにはウジとも違う得体の知れない虫が集っている。最初から鼻が詰まってる事が最良だと思わせてくれる。

 マジで最悪だ。だがチートのおかげで声を上げそうな状況でも堪える事が出来るのはありがたい。


 だがこのまま居たら当然見張りや巡回してる農民たちに捕まるだけなので台所の勝手口から外へと出ていく。チェックポイントが更新されてジャックの居所を探るに変わる。この時点でジャックは人間的に死んでるのだがプレイヤーキャラクターは知らないので外へ出て村の中を探し回る事になる。


 でもそのまま正面の門から出ようとすると見つかって農民2人に襲われる。勿論、イージーでもなければ素手だろうが包丁1本だろうが殺されるのは間違いないだろう。

 俺は耳を澄まし音を立てないように中腰で歩いて裏口へと向かう。途中でムービーが入り、壁に何故かサバイバルナイフが突き刺さっている。そして棚で何か光る物が見える。リボルバーの拳銃であるピースメーカーだ。立ち上がって棚から回収しておく。


 この時代にある訳ないのだがゲームの世界を現実に反映している状況でツッコミを入れても仕方ない。サバイバルナイフは壊れないのが利点で攻撃力は低い。

 ちなみに弾は1発しか入ってない。拳銃自殺用かやつら(・・・)にならない為の措置としては妥当かもしれない。


 ゲーム内ではあるがゲームじゃないんだから横着をして音を出して見つかるのは避けたい。そしてその足で裏口へ向かう。だが足が勝手に動き止せばいいのに障子の隙間から音をする部屋を覗く。内容は分かってる。ここで包丁を研ぐ老婆のムービーが入るのだ。


(よし。これで終わったな。最初にここで止めた奴も居たしな)


 ギャラリーのクソどもが喚く。な訳ないだろう。ポーカーフェイスのスキルのお蔭で俺は声を上げずに裏口へと向かい、そのまま民家らしき建物を出る。

 ギャラリーのクソどもが喚いているがほざかせて置こう。そんな事よりもさっさとクリアしないとタイムアップする可能性が高い事に気が付かないお前らの頭を心配すべきだろう。


 このゲームの主人公であるスティーブンはいちいち迂闊な行動で声を上げたりしてピンチになるのだ。だから出来るだけ武器は多い方がいい。


 白い塀に囲まれた武家屋敷のような場所なのだがホラーゲームのお約束のように白い壁は赤黒く染まっている。ここから表に出てもいいのだがそれだとやはり見つかってしまう。

 裏のルートはナタを中庭で取って裏門のかんぬきを外して裏から出るルートが一番だ。俺は巡回している農民たちに見つからないようにナタを回収して裏門から村へと出た。


 遠くに田畑が見えるが江戸時代の地方にしていくつか変な建造物と暗闇の中にそびえる城が見える。ま、海外のゲーム会社が作った事も含めていい加減なのだがそれも含めての伏線だ。

 街の中にしてはやたら雑草が多く塀の中には得体の知れない生物が泳いでいる。

 ちなみに資料と言うか日記というかファイルは全て拾ってゲームとの違いかないかを確かめてからすぐに閉じる。メニューを開いてる間にポーズがかかっているとは限らないのだから。

 俺はジャックの居場所が変わってない事を確認し、村の中心部にある奉行所へと向かう。ここでチュートリアルを兼ねたチャプター1の終了だ。

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