ルーム
俺は白い円形ルームで目を覚ました。ゲーム機と思しき物が5つ。中心を囲むように置かれ、巨大なモニターが部屋の中央に設置されている。俺以外にも他にも何人かが居た。そいつら全員の視線が中央に映し出されている立体映像に釘付けだった。
それよりも先に俺は壁に書かれた文字を読む。また精神病院みたいな真っ白で不健康そうな壁には【ルールその1 重大なルール違反をしたプレイヤーは強制的にプレイヤーキャラからクリーチャーへ変更もしくは資格剥奪で死亡】【ルールその2 ルームに入って1日以上ゲームをしない者はリタイヤと見なし生き残る資格を剥奪する】【ルールその3 個性は一人一つまで】【ルールその4 順番を抜かしたらコンティニュー禁止のペナルティ】と書かれている。
「さすがアネモネさんだぜ。まずはカタストロフィ・メサイアクリア間違いなしだな」
その名称によく見てみると立体映像に映し出されてる20代男性は有名な実況者である姉萌音らしい。俺なんかが比べるまでもない再生回数だが攻略が得意だったようには思えない。どっちかと言うと絶叫するのが好評だったような──
耳を覆いたくなる絶叫と共に姉萌音が現れた人形を組み合わせたようないびつなモンスターたちに囲まれ昆虫のように手足を引きちぎられている。余りに現実感がなく映画やゲームのような作り物に思えた。
よく考えると武器や装備が使用不可になるエリアで難所だった。
その光景にその場の全員が黙り込む。
「だ、大丈夫だぜ。諦めなきゃコンティニュー出来る。コンティニューしなくてもこの部屋に戻ってこられるんだし」
「そうだ。そうだ。まだ一回死んだだけじゃないか」
大学生くらいのオタク風の2人が口々に言う。まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえる。
同時に立体映像にコンティニュー画面が映る。姉萌音が動かしているのかYESかNOの選択をNOで行い、立体映像が途切れると同時に奴がルームに姿を表し虚空に放り出された。
床に叩きつけられた勢いで立ち上がれないのか姉萌音は動かない。誰も話しかけないので俺は横から姉萌音の顔を覗き込む。目は焦点が合ってない。そして何かをブツブツとつぶやいている。精神をやられたか。
「ありえない。なんでカタストロフィ・メサイアなのにパターンが変わってるんだよ。おかしいだろうJK。それに痛すぎだろう。こんなのやりたくねぇ」
小声でこんな事を呟いていた。リアルでホラーゲームなんてやりたくはないだろう。だがやらなきゃここから出られない上にあいつに嘲笑されながら死んでいくのはゴメンだ。
攻略ガチ勢じゃなきゃこんなもんか。俺は中央にあるゲームを見る。一つは確かめる必要もない。ゲーム機のリセットボタンを押してディスクを出す。出てきたのはカタストロフィメサイアのディスクだ。3年前に発売された洋ゲー。
話は神に不信を抱いた者たちが怪異化した話で江戸時代の長崎の天草が舞台に組み込まれてる事で日本では話題になった。日本のホラーと洋物の難易度を組み合わせた話で日本版は難易度が落とされているので本家版はきついのかもしれない。
他のゲームを見ると誰もコントローラーを握っては居ないがゲーム機本体の電源が入っており誰もプレイできないし電源も落とす事が出来ないようだった。
俺はゲーム機のボタンを押してディスクを元に戻す。
この条件で場にいるのは15人以上。つまり早めにゲームに入ってクリアしなければ後になるほど時間がなくなっていく。普通に初見でゲームして10時間前後で他の人間が6つのゲームを12人で占領していたら1日の待機時間では生存資格を剥奪されてあの世送りだ。
マジモンのクソゲーだな。立体映像には別のゲームであるミトコンドリア・ブレインズが映し出されている。初代なので北海道を太古の意思を持つウィルスとミトコンドリアの混合体が人に成り代わり変異をして人間を生物界の頂点を奪おうとする日本のゲームだ。
これはリアルでクリアしようとしたら難易度が高くかなり辛いことになるだろう。
実況では見たこともないがOLっぽい20代の女性が死にながらも淡々とコンティニューしながら何度もリトライしている。多分、彼女は時間を10時間以上掛ければこのゲームをクリアできるだろう。
ミトコンドリア・ブレインズのゲームは既に3人がずっと順番待ちをしている。
だがこいつらが迅速にプレイしてクリアしても俺がゲームをする前に時間切れになってしまう可能性が高い。俺はこのゲームは得意だが元々ただでさえ時間を食うゲームなのに──どうやらGMの説明を遮った為に俺たちのグループは遅れを取ったようだ。
ルールその3とその4を見る限り、自称神様は俺たち人間にゲームをクリアさせたくないし全員生かしておく気もないようだ。どっかの賭博漫画の会長かよ。
多分、真っ先に気付いたからこそ今ミトコンドリア・ブレインズに挑戦してるOLは死に物狂いでリトライしているのだろう。全員が気付く前にゲームに参加しなければいけない。
だが今空いてるのは姉萌音が出てきたせいで順番待ちの連中がビビっているカタストロフィ・メサイアだけだ。洋ゲーで苦手だがやるしかない。
「なあ、お前たちはやらないのか?」
俺は順番を待っていた連中に話しかける。全員恐怖のせいなのかどもって言葉を返さない。無理やり行ってはコンティニューが出来ない。奴らにはっきり言わせなければ──
「お前たちがやらないのなら先に俺が行かせてもらうがはっきり言ってもらわないと困る」
「……あ、ああ。分かってる。先に行け。俺は後で構わない」
「お、俺もだ。俺も後でいい」
「……あたしも後でいいです。お先にどうぞ」
ヤンキー崩れとサラリーマンの2人は答えた。あとオタク風野郎と小学生男子と三つ編みの女子中学生の3人だ。逆に言えばこれにはっきり答えなければ有力者を葬る事もできるのかもしれない。他の人間が気付く前に自称神様のゲームをクリアしなければ──
俺はオタクと小学生男子に視線を移す。委員長みたいな眼鏡を掛けた女子高校生がこっちを睨みつけている。高校生がやる事ではないが命が掛かってるんだ。
「ぼ、僕は後でいい。お先にどうぞ」
「お兄ちゃんが先でいいよ」
俺の剣幕に押されたのか二人は同じ答えを返した。その答えを聞くと同時に俺はカタストロフィ・メサイアのゲーム機のコントローラーを手に取る。
勿論、スタートボタンと決定ボタンは連打している。難易度選択画面が隠されていた上に固定だったぞ。神のクソ野郎め。
「貴方は恥ずかしいと思わないの? 第一こんなの──」
眼鏡委員長が説教を始めるがそんな物を聞いてやる義理はない。他の奴らがこの事実に気がつけばこの白いルームは天井も壁も床も真紅の色に染まってもおかしくないのだ。
俺の行動を見て何人かがその事実に気がついたのか慌てて走り寄る。馬鹿委員長女は止めてくれるのかと期待しているようだが奴らの目は血に飢えた野犬のようでこのデスゲームの隠された事実に気がついた眼だ。
既にゲーム機は起動している。そしてカタストロフィ・メサイアのOP画面が出た。俺はボタンを連打していたのでそのままゲームの世界へとダイブする。
このルールで最後にみたのは血なまぐさい争いの予兆だった。コンティニューしないのは愚策だな。俺はマークされただろう。クリアして別のルームに移動する事を願う。
ちなみにミトコンドリア・ブレインズは私の別の作品を元にしております
興味があったら作品一覧を探してみて下さい
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