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ゲームオーバー

 俺は暗闇の中でカウントダウンされる数字を見ながら原因を探る。マニュアルがあったので開いてみる。最初に書かれていたのはマニュアルを読んでいる最中はカウントダウンが停止されます。ただし5分間だけですと書かれていた。


 ようはチャプターによってコンティニュー回数が決まっていて最後の方ほど増えていきますが最初の方だと数回しかコンティニューできないと書かれている。あとリスタートに回数はないと書かれていた。そしてコンティニュー出来ない状態ではリスタートもできない。

 だから姉萌音は速攻でゲームオーバーになった原因は分かった。


 あとはイベントどおり撃ったのだがどうしてゲームオーバーになったのやら神の野郎が弄ったのか──


(天幻さまぁ。これで詰みよ。これは北米版だから一発目は少女に当たる。だからライフルの弾を塩の弾丸に入れ替えないと駄目なのに)


(なんか変だと思ったら北米版かよ。6ヶ月経って修正されたんだったか)


 外のアホギャラリーが騒いでいる。いい情報を聞いた。これで次は問題ない筈だが──


(お前らうるさいよ。多分、この会話は向こうに聞こえている。だから失敗して欲しいのなら一々余計な事は口に出すな。お前たちが失言する度に奴が先に進む。それとも早くクリアしてもらいたいのならまともな助言でもしたらどうだ?)


 この落ち着きっぷりから成人で相当ゲームに慣れている奴だろう。実況で聞いた事が声だったのでただのゲーマーかもしれない。


(お前の推測だろう。勝手な事を言ってるんじゃねぇ)


 若い中学生くらいの馬鹿が過剰に騒ぎ立てる。男の方は何も答えない。


 俺は取り敢えずマニュアルをパラ見しながら見逃しがないかを確認する。ムービーでヒントが出るはずだがそれを確認してから動くか。ルームの連中は聞こえてないと思わせておく。そしてルームの仲違いさせておくに越したことない。

 俺はコンティニューじゃなくてリスタートを選ぶ。暗闇が消えて広場の手前に戻る。幸いな事にオートセーブポイントは変わらないか。


『クロユリだ。いきなり画面が真っ暗になってビックリしたぞ。大丈夫か?』


 クロユリが話しかけてきた。彼女は小屋の屋根に立っている。広場の方はゲームオーバーになる前と変わらない。イベントを起こさない限り状況は進まないのを目視で確認する。


『あ、ちょっとした手違いだ。取り敢えず先に小屋から調べる。広場の方を見ててくれ』


 【使徒】に見つからないように小屋を探すが何も見つからない。ライフルの弾はない。塩の弾丸などない。目くらましに使える発煙筒があっただけだ。嘘か。アホギャラリーは先程のゲーマーの一言で要らない煽りを言うのを止めたのか──もう少し愚かであって欲しかったがそう上手くはいかないか。


『先程、なんか変わった事はあったか?』


 俺は覚悟を決めてイベントの起きる広場へと向かう。こんな所で詰んだらシャレにならんが賽を投げなきゃ始まらない。


『むぅ、変わった事か。スティーブ、そなたの左で何かが光った気がするぞ。それが攻略の糸口か?』

『あんた、やっぱり使えるな』

『当然だ。わっちにはやらねばならぬ事があるからな』


 胸を張るようなと言うよりは悲壮な決意のような言葉に聞こえた。左側か。俺が広場へと足を踏み入れるとムービーが開始される。金髪の少女が暴れて助けを求める。

 広場に転がっている猟銃とその隣に何かが光っている。ライフルの弾だ。間に合うか。俺はライフルと銃弾2つを拾い上げて中折式のライフルから弾を入れ替えて【パペット】の頭部を狙い引き金を引く。


 一発目は逸れたのか少女を掴んでいた腕に当たる。続いて二発目は【パペット】の頭部にヒットした。金髪でウェーブの掛かった少女は全力で奴と宣教師から離れる。

 賢い判断だ。なぜならこいつは


「もうよい。御方から祝福を受けたにも関わらず使えぬ獣め。こやつらを殺せ」


 だがパペットは言う事を聞かずに宣教師を見つめている。俺はそのやり取りの間に弾を取り替えてライフルを構えてパペットの胸部に狙いをつけた。


「何をしている! 奴らを殺せ!」


 だがパペットは手を伸ばしその両手に宣教師を掴む。


「わ、私ではない。向こうだ! 向こうをコロ」


 言い終わる前に宣教師は握り潰された。


「Shoot!」


 少女の声が響いた。俺は迷わず引き金を引く。宣教師が持っていた爆弾に誘爆し、パペットが怯む。その隙にライフルの弾を撃ち込む。あまり銃は使いたくないがここでダメージを受けるのは得策じゃない。そしてピースキーパーに持ち替え乱射する。弱点である複数の頭を撃ってるのにまだ死なない。

 怯んでいたパペットが動き出す。大抵こっちを狙ってくるので恐らく俺を狙ってくる。


「おい。こっちだ! 俺はこっちに居るぞ」


 パペットがこっちを向いた瞬間、発煙筒が投げ込まれた。


「It's now or never! Kill! Kill!」


 今だ! 殺せと言ってるようだ。パペットはこっちを見失ってあらぬ方向を探している。ピースキーパーに弾を入れ替え敵の顔を狙い撃つ。2つ目の頭が砕けた。3つ目の頭を狙い撃つ。


 弾がなくなる寸前でパペットが悲鳴を上げて怯む。金髪碧眼の少女が斧を拾って奴に向かって走る。俺もナイフを取り出し、背を向けた瞬間にパペットの頸部にナイフを突き刺す。酷い悪臭が鼻の奥に焼き付くように臭う。


 俺は振りほどかれて地面に落ちる。奴がこちらに向き直ろうとした瞬間に後ろから奴の頭に斧が突き刺さった。それが止めとなってパペットは崩れ落ちて液状化して地面の染みとなった。

 そこら辺はゲーム基準なのか臭いがつかないのが救いと言えるのか。


「くたばれこの化物め」


 俺は息も絶え絶えに吐き捨てるように言った。


「Are you all right?」


 金髪碧眼の少女は「大丈夫?」と聞いているようだ。聞き取りやすいようにゆっくり喋ってるんだろうがネイティブっぽい。つーか本当に外国人かよ。原作は日本人の少女だから殆ど言葉が通じないのは原作通りなのか。

 世界中の人々が巻き込まれたのだから当然といえば当然か。

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