表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/114

崩壊

帝国皇帝ダスカスの陣は安全を確保するため前線からはかなり離れた後位置にあった。

従ってワイバーンと竜騎士達がどうなったのかは遠目ではよく判らなかったのだが、作戦通りにワイバーンの攻撃が実行させている様には見えない。


「おい!一体どうなっているんだ!ワイバーンの攻撃がないではないか!竜騎士達は何をやっておる」


「はっ、只今状況を確認しております」


その確認は行う必要がなかった。ワイバーン達が皆明後日の方向に飛び散開してしまったからだ。その光景は離れたここからでも判った。


やがて伝令が皇帝のもとへと報告に来たのだが、伝令としても言い難い内容なため足が重い。


「皇帝陛下、報告です!竜騎士部隊ですが・・・」


「どうした?早く先を言え!あれは一体どういう事だ」


「ワイバーンが全て逃走し乗っていた竜騎士は皆地上へと落とされました」


「馬鹿を言え!ワイバーンには眷属の首輪が着けられていただろう?外したというのか!?あれを外して生きている訳がないだろう!」


「ワイバーンの首輪は消滅を確認しています。ですが全てのワイバーンには何ら影響が出ておりません」


「なんということだ・・・」


皇帝ダスカスは目の前が真っ暗になった。ワイバーン部隊はこれからの軍略の切り札だった。500頭ものワイバーンを確保し、眷属の首輪や飼育施設、竜騎士の育成、一体どれ程の費用を投資したのか計り知れない。肉食のワイバーンは一度の食事に牛1頭は食べる。

一日朝晩の食事だけで1000頭もの牛が食事として消え去る事となる。

それらの維持費だけで国家予算の何割かに相当していた。

それだけの多額の費用を投資するのも回収する算段があってこそだ。過剰な戦力を有する事により侵攻する相手国に対して労せず降伏させる事が出来る。今回はその為のワイバーンの脅威を世界に知らしめる場になるはずだったのだ。

先のテーマーと呪術師の部隊の壊滅と兵5万以上の壊滅、そしてワイバーン部隊の消失と失態続きで皇帝として追う責は免れる事は出来ないだろう。何より国内での反対勢力からの弾圧も危惧される。

今までは常勝の勢いで政策や軍事などを強引に動かしていたのだが、今回の失態で権力の座に留まるどころか国自体が存続できるのか危うくなっている。

同盟諸国の中には侵略の末、無理矢理従属させられており反感を持つ国も少なくない。

圧倒的な戦力で捩じ伏せられていた状況から開放されれば反旗を翻すのは時間の問題だった。



帝国皇帝ダスカスが絶望を感じている中で侵攻二国のもう一方であるウルセア聖国軍にも動きがあった。


ウルセア聖国教皇ダレスは帝国軍と共に撃退された後、帝国軍の動向を見守っていた。ウルセア聖国の今回の派兵目的はザリウス帝国の様に侵略での領土拡大とは異なる。

戦勝国として国内に入り込み、ウルセア教の信徒を増やすことにある。

一見すると見返りが少ないかの様に思えるが実際は異なる。宗教はお金を生むのだ。

新たに信者や教会が出来るということは上納金が確保出来るということになる。教会支部からは上納金、信者からはお布施として本部には多額の資金が集まる仕組みになっているのだ。ウルセア聖国の国内では信者数も飽和状態にあるため新興地を拡大することが発展につながるのだ。

そういった背景があるためウルセア聖国としてはこの戦いに勝利してウルセア教を広めなくてはならない。5万という数の派兵には多額の資金が必要で、全ての兵士に武器や装備、食事を与えなければならない。それだけでなく給金も発生する。今回の侵略は聖戦ではない為いかに宗教国とは言えど兵士を奉仕活動として動かすわけにはいかなかった。


そして自国の兵士に多くの死傷者が出てしまうことで多額の治療費や遺族への補償も考えなくてはならず、ザリウス帝国だけでなくウルセア聖国も深刻な状況下にあることには変わりなかった。


「困った事態になりましたね」


「はい、まさか帝国の隠し玉であるワイバーン部隊が消滅するとは信じられません。それこそ神の仕業としか思えません」

教皇の問いに答えたのは大司教だった。ザリウス帝国との共闘を持ちかけたのもこの大司教だ。


「そうですね。帝国のあの戦力には期待していただけに失望も大きいでしょう。ですが、それだけが問題ではありません」


「他になにか?」


「既に報告が上がってきているではありませんか。重傷者や死者が治ったり蘇ったりしているという報告のことです」


「あれこそ信じ難いものです。我々以外に死者を蘇らせる者がいるとは思えません」


「我々のそれとは少し違いますね。我々は死霊術として死者を操るだけで決して蘇るわけではありませんから」


「では一体誰がどうやって?」


「それは私にも判りません。これ以上死兵が減ってしまうと我々の目論見が成り立たなくなります」


「死体を死霊術で操るゾンビ兵ですね。あれは恐れることもなく物理的に動かなくなるまで戦い続けるので強力な戦力と言えますな」


「はい、だからこそ今の状況がマズイと言っているのです。蘇生が増える前に死霊術でゾンビ兵として動かしなさい」


「わかりました。ネクロマンサーの部隊に至急指令を出します」


ウルセア聖国の切り札は死霊術を使った死者の兵士だった。死者の尊厳などを無視したこの行為を行うことからウルセア教は邪教といえる。

通常の兵力としては他国に劣る聖国なのだが、この邪道とも言える手段については躊躇なくむしろ積極的に開発を行っている。死霊術だけでなく、毒に関する研究も行っており、細菌兵器やバイオテロなども手段として用いることもあった。但し、細菌兵器やバイオテロを行使すると自分達にも被害を及ぼす可能性もあるため局地的な限られた戦闘でのみ使用されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ