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空からの脅威

「報告します!我が国の先発部隊、ほぼ壊滅状態です!」


「なんだと!?寝言を言うな!二国で10万もの兵がいるのだ、なのに何故壊滅されるんだ!」


伝令から予期していない言葉を受けたザリウス帝国皇帝のダスカスは戯言と信じようとしなかった。


「報告によりますとセレオンから大量の濁流が流れ出し、我が軍、聖国軍ともに押し流されたようです」


「なに!?たかが水ごときにだと?」


水に流された。それだけを聞くと大した脅威には感じられないが実際に鉄砲水から土石流に変わり猛威を振るったあの光景を見たものは決してそう侮ることはない。

ダスカスはいまだに信じられなかったが伝令に怒っても仕方がない。次の手を考える必要があった。


「陸で攻めれぬなら空から攻めよ。用意は出来てるか?」


「はっ、後方にて待機をさせております」


「よし、全部隊出撃させろ!」


ザリウス帝国には今回の侵攻での隠し玉があった。大軍での侵攻ではあるが保険として空からの攻撃部隊も用意していた。

その部隊の名は飛竜部隊。飼い慣らした竜に騎乗し空から攻撃を行う部隊だ。騎乗する竜はワイバーン。ブレスでの遠距離攻撃を得意とする。攻城戦では篭城した相手に陸から攻撃と空からの奇襲の同時攻撃で短期決着を目論んでいたのだ。

後方の平地に待機していた騎士が騎乗した数は500。帝国の竜騎士部隊全てを動員しての数だった。

号令の掛かった竜騎士部隊は次々と上空に舞い上がった。

先ほどまでは陸地が敵兵で黒く染まっていたが、今度は上空が黒く染まることとなった。

竜騎士の攻撃に対して通常取れる攻撃方法は弓矢か投石だ。魔法は詠唱までに時間がかり焦点を定めにくいため有効手段とは言い難い。

弓矢や投石にしても上空に対する攻撃なので威力が落ちるのと、上空高く上がられると届かなくなる。ワイバーンのブレスは上空から放つと200mの射程距離となるが、対する弓矢は100mなので防戦するのは難しい。但し、ワイバーンもブレスは連続で放つ事が出来ず、チャージするのに時間が掛かるのでブレスを放つと安全圏まで上がって待機を繰り返すのが攻撃パターンとなっている。

セレオンにいる者達も上空を覆う黒い影が近付くにつれその正体を理解すことが出来た。


「あれは何だ?でかい鳥か?」


「いや、あれは・・・ワイバーンだ!!」


「マズイ!あいつはブレスを放つぞ!攻撃を受けたら消し炭にされてしまうぞ!」


ワイバーンを認識した人々が騒ぎ出し辺りが混乱に陥った。

さすがにエディもこのまま見ている訳にはいかなかった。500体ものワイバーンに一斉にブレス攻撃をされればセレオンにも甚大な被害が出ることは確実だ。


「みんなここで待っててくれるかな?ちょっといってくるよ」


「ちょっと行くってエディどこにいくのです?」


「このままじゃワイバーンのブレス攻撃でセレオンがやられてしまうから止めてくるよ」


「そんな、無茶よ!いくらエディでも出来ることと出来ない事があります。相手は空を飛ぶ竜種のワイバーンです。エディが殺されてしまうわ」


キャセリーヌは必死にエディが行くのを引きとめようとした。


「でもよお、エディが行くって言うのならきっと何か勝算があるんじゃないか?」


「そうね、エディ君が玉砕だなんて似合わないわね。またビックリする様な事してくれるんじゃない?」


レオンとキリカが期待を込めてキャセリーヌを宥める。


「そうなの?セレオン卿、あのワイバーンの群れを止める算段はあるのですか?」


「はい、王女様。大丈夫です。ワイバーンの攻撃を止めるだけでなく、二度と人間に攻撃しない様にしてみせます」


エディの言葉を聞いた王女だけでなく周りの皆が驚いた。そんなことが出来るはずがないと常識的な考えでは答えが出てしまいそうなのだが、エディの今までの有言実行を考えると今回もと期待をしてしまう。


「それじゃ、行ってくるよ」


エディはそう告げるとフワリと浮いてワイバーンの群れの方へと飛んで行った。


「「え?」」


突然エディが飛んだことにそこに居る全員が固まり我が目を疑った。


「なに?あれ?飛んでるように見えるんだけど?」


「嘘でしょ?」


「エディ、遂に人間辞めたか・・・」


「トリックだ」


そこに居た皆がそれぞれの思った事が口から出ていた。一部サタン的な発言もあったが。

エディはワイバーンの群れの前に出た。

ワイバーンはエディの存在に気付きその場でホバリングを行い停止した。

竜騎士はブレスで焼き払えと命令をしているのだがワイバーンは言う事を聞かなかった。


『人の姿をしている貴方は古竜様の加護を持つもので間違いないようだが』


ワイバーンの一体がエディに念話で話しかけてきた。


『はい、古竜クレセアより極みの加護をいただいています』


『やはりそうであったか。貴方からはかなり強い古竜様の力を感じる』


『それで、お願いなのですが、私の街を攻撃するのは止めてもらえないでしょうか』


『うむ・・・我らも無益な殺生を好むものではない。だが、我らの意思ではどうに出来ぬのだ・・・』


『やりたくないのにやらされているというのはどういう事でしょうか?』


『我らは皆、人間に眷属の首輪を着けられておりこれにより人間の命令に従わなくてはならぬのだ。無理に外せば死に至る呪いも掛けられている』


エディはワイバーンの首を見ると確かに首輪と言うには大きい枷が嵌められていた。更に分析をすると眷属の首輪は首輪に刻印された魔法術式により脳神経に命令を割り込ませる仕組みになっていた。

無理矢理壊すと脳との接続も切断されてしまうため脳死状態になるものだった。ちなみに呪いの類のものは掛けられていない。恐らく脅しのために呪いということにしたのだろう。


『もし、その首輪を外して自由にしてあげれるとしたら街への攻撃を止めてもらえますか?』


『その様な事が出来るものなのか?否、古竜様の強き加護を持つ貴方なら出来るやも知れん。我からも是非ともお願いしたい。もし叶うなら我ら一族人知れぬ地へと赴き以後人に害することはせぬと誓おう』


『判りました。ではあなたから試させてもらいますね』


エディがそう告げると話をしているワイバーンは一瞬躊躇した様に見えたが覚悟を決めた様だ。しっかりと首を縦に振り頷いた。

エディは首輪を分解し、脳への接続ラインを正常に繋ぎ直した。

自分に嵌められていた首輪が突然消え、何ら以上の無い事をワイバーンは確認した。


『おお!なんともないぞ!流石、古竜様の強き加護を持つ方だ。感謝致す。一族の他の者たちにも施してはいただけぬか』


『わかりました。それでは首輪を全て外しますね』


エディは先ほどの首輪を外したデータを並列処理し、全てのワイバーンに対して解除を行った。約500体への同時処理は5号のナノマシーンがまたしても活躍する場となった。


ワイバーン達は首輪がなくなった事を喜び自由に空を舞った。

騎乗している竜騎士達は必死に言う事を聞く様に命令するが首輪が無くなった今となっては命令を聞く理由などない。

そのまま地上へ落としても良いのだが、軍事目的とはいえ、今まで長年育ててくれた恩は少なからず感じているらしく、それほどの怪我にはならないであろう高度まで降りて背中の竜騎士達を振り落とした。

突然言う事を聞かなくなり暴走したワイバーンに竜騎士達はパニックになりそのまま地上へ振り落とされる形となった。


『古竜の強き加護を持つ者よ。名を聞いても良いか?』


『もちろん。僕の名前はエディです』


『エディ殿。この度の事、我ら一族を代表して感謝の礼を言わせていただく。受けた恩を我らは一生忘れまい。何かあれば我らは貴方のために馳せ参じよう』


『ありがとうございます。せっかくですが、今のところ困っていませんのでその時はお願い致します』


『うむ、では必要となれば古竜様を通じて願うと良い。我らは古竜様と繋がっておる故、いつでも通じることができる』


『わかりました。でも、今はせっかく自由になった身ですので平和に暮らせる地でのんびりして下さい』


ワイバーン達はエディを中心として旋回をして感謝を言った後、遠く彼方へと飛び去った。


「ワイバーン・・・あれ程いたのに・・・」


「な?エディならやってくれるって言っただろ?」


「もう何でもアリね」


「トリックだ」


セレオンで状況を見守っていた者達もまさかワイバーンにまでエディの力が及ぶとは思ってもいなかった。

一体何をやったらワイバーンを退ける事ができるのか?会話を聞いていない者たちには後世に残る不思議な話として語り継がれた。


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