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奇襲

日は進み季節は秋真っ只中という感じで紅葉が見られはじめた頃に事件が起こった。


朝の授業が始まって間もなく構内放送で授業を中断し、全生徒、職員は講堂へ集まる様に指示された。事前に何かのイベントがあると聞かされていなかったのでそれぞれが何の集会なのか不思議に思いそれぞれと話し合っていた。構内放送の主は学院長代理。学院長の次に偉い人なのだが、放送での口調はすごく緊迫した様な感じが伝わってきた。


生徒や職員が講堂に集まり待機していると間もなくして学院長が現れた。だがその顔は険しく良い話でない事は誰の目にも判った。


「皆さん、落ち着いて聞いて下さい。現在この国は二つの国から攻撃を受けています。東に隣接するザリウス帝国、南に隣接するウルセア聖国からです。現在の状況は国境警備の兵が迎撃にあたっているという事ですが、敵軍の数が多く突破されるのは時間の問題となります。東のタレネイド子爵軍、南のエドモン子爵軍である程度の時間は稼いでくれるでしょうが時間がありません。皆で安全な場所まで避難します」


それは突然の知らせだった。今まで戦争などまるで面影もなかったのに二国からの襲撃されているという。もちろんこれは二国の間での共闘作戦に違いないのだがあまりにも周到過ぎる。ひょっとすると内部に手引き者がいるのかも知れない。

学院長の話を聞いたキャセリーヌは顔面が蒼白になった。

南のエドモン子爵領は間違いなく自分の住んでいるところだ。父が陣頭指揮をとって防衛に出ているに違いない。領地や領民、家族の事が心配でたまらなかった。


「キャシー、大丈夫。防衛は時間稼ぎだから。いざとなったら避難する様に事前に打ち合わせているから、エドモン子爵はしばらくしたらカーソンに退避してくるから」


「そうなの?でも・・・」


キャセリーヌは言葉にする事が出来なかった。

エディはキャセリーヌの肩を抱きしめて落ち着かせようとしていた。


「国王軍はどうしているのです」


その声は王女殿下のものだった。ここには王女殿下がいるので当然護衛も待機しているのだが、その数は僅か10名程度。数の足しにもならない。

知らせ聞いた国王はすぐにこちらに派兵させるはずだと王女は考えていた。


「すでに王都には連絡が届いているかと思われますが、国王軍の到着は早くて2日後になるかと思われます」


「その二日間をなんとか持たせないというわけですね」


王女はこの場に自分が居るのに何も出来ない事が歯がゆかった。


「それで、どこに僕たちは避難するのですか?」


今度はエディが質問をした。


「城内へと避難する予定をしています。今領主様に確認中です」


「これから城内は防衛戦のため追われるため僕たちが大勢で押しかけると邪魔になってしまいます。少し移動をすることになりますが、船を使ってセレオンに退避しましょう」


「この大勢の人数をですか?少なくとも1000名はいますよ」


学院長は突然のエディの提案に驚いた。


「生徒会としても賛同しかねます。我々は軍に保護してもらうべきです。それが一番安全なのは明白です」


生徒の中から異を唱えるものがいた。生徒会長のナリスだ。ナリスの印象は一言で言うと凄く地味。三つ編のおさげにメガネというガリ弁をキャラにするとこうなるという典型な女の子だ。生徒会という存在はあるが、普段あまり前面に出ることはない。自由市の際でも承認を得る程度にしか関わらなかったのだが、生徒会長であるナリスは責任感が強い。生徒を危険に晒すようなことを見過ごす訳にはいかなかった。


「問題ありません。全員安全に避難出来ます。城内に避難しない理由がいくつかあります。ひとつは国王軍が援軍に来た際に駐留する場所が必要なのと、十分な食料の確保が難しいこともあります。城内に千名の生徒を避難出来る場所が無いので演習場にテントを張って過ごすことになります。それならこのまま学園に留まるという方法もありますが、その場合護衛の兵士が必要となり、この状況で戦力を分散させることは避けるべきです」


「軍に頼らずとも我々で自己防衛をすれば良いではないか」


体格の良い男子生徒が意見の述べた。彼は生徒会副会長のグリムだ。


「では聞きます。この中で実戦を経験した人は手を挙げて下さい」


エディの問いに全校生徒や教師から手を挙げる者は誰一人いなかった。


「そういう事です。戦争では女子供でも容赦なく殺されます。カーソンや国軍の兵士でも実戦経験者はそれ程いないでしょう。私達は彼らの足手まといになってはいけません。セレオンであればその心配がありません」


エディの説明に反論できる者はおらず場内は沈黙で静まり返った。


「わかりました。迷っていても仕方がありません。何よりセレオン卿が言われるのですから確かでしょうし」


生徒の多くが学院長がエディの呼び名に違和感を覚えていた。セレオン卿と呼んでいるのだ。その呼び方は貴族に対してのものだと誰もが知っている。


「移動は船を使っていくので安全ですよ。船便は専用便を既に確保しています。全員が問題なく乗れるので慌てなくていいですよ」


いつの間にかエディは船便の手配をしていた。皆には知られていないが常にエディの周りには霞が付いている。この様なケースの段取りも訓練しているので目配りをするだけで行動出来る様になっている。

生徒だけでなく教師も多くはセレオンがどういう場所なのか聞いた事はあるのだが見たことはない。

運河に停泊していた三隻の船に分乗して生徒と教師はセレオンに向かった。


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