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女の争い

突然の王女の転入でクラスは騒然となったのだが、授業中に騒ぐわけにはいかず、許される時間である授業の間の小休憩や昼休みには王女の周りにはクラスの生徒達が取り囲んでいろいろと話をしていた。最初は王族に対して話し掛けるなんて不敬にあたると皆遠慮をしていたのだが、王女が同じ学生なので対等に接して欲しいと懇願したので気を良くした生徒達は雪崩の様に王女のもとに集まったのだ。

この世界でも有名人に会ったとか話をしたというのは自慢になる。むしろ話題の少ないこの世界だからこそ普通なら有り得ないシュチュエーションを逃す手はなかった。


エディにとってはこっちに来ないのであれば問題ないのでそれで良かったのだが、放課後になるとそういう訳にはいかなかった。


「セレオン卿、私のこと避けていませんか?」


「いえいえ、そんなことは決してありませんよ。王女様は人気があるので僕なんかが話しかけるなんてとてもとても」


「エトワールよ」


「え?」


「王女様なんて他人行儀に言われるの嫌です。エトワールと呼んで下さい」


「えっと、じゃあ、エトワール様」

「様もいりません」


「・・・エトワール」


「よろしい。で、学院長には貴方がこの学院でいろいろと支援してくださると聞いておりますが?」


「うん、昨日聞かされました。でも、何を支援して良いのやら・・・」


「まずはこの学院の事をいろいろと教えて欲しいですね。さあ、早速行きましょうか」


王女はエディの腕を組んで進みだす。


「ちょっと待って下さい。エトワール。ここは王宮じゃないんですから、そういうのは止めましょう」


エディは学院ではそういうのは好ましくないと言いたかったのだが、王宮ならば更に良くないに決まっている。

そしてエディの後ろから先ほどから冷たい視線を感じている。


「あ、キャシー、紹介するよ。エトワール王女。先日王宮でお世話になったのは話したよね」


「はじめまして、王女殿下。エドモン子爵の娘、キャセリーヌです。エディの婚約者でもあります」


キャセリーヌは笑顔で挨拶をしているが目が笑っていなかった。


「そう、あなたが・・・私はセレオン卿に結婚を申し込んでおります。この意味がわかりますよね?」


「はい。でも彼は私の夫です」


「聞くところによるとまだ婚約の儀も済ましていないとか?何の拘束力もありませんよね?」


「形式上の事です。幼い頃から一緒に結ばれると誓った間柄です。今は学生の身なので遠慮をしておりますが、卒業をしたら結婚をする予定です」


王女とキャセリーヌは相対して目から火花が出ているかの様な睨み合いでの応酬に傍で見ているエディはタジタジだった。


「まあ、よろしいです。私はこちらに学びに来ましたので結婚の話はひとまず置いておきます」


王女もこのまま平行線では終わらないと思ったのか話を収束することにした様だ。

エディは驚いていた。相手が王女殿下なのに一歩も引くことなく主張をするキャセリーヌの姿に。だが、幼少の頃からキャセリーヌはエディの事になると無双になることを思い出して納得した。


初対面では最悪の状況となった王女とキャセリーヌだったが、それ以降王女とエディが二人きりになる事はなく、王女と一緒にいるときは必ずキャセリーヌも同席いう名の監視に付くことになった。


最初こそひと悶着あったのだが、エディも一緒で三人でいる時はとくに言い争いは起こらなかった。


放課後は王女の適正を調べたりしている。学院長に頼まれた課題だ。


「エトワールの才は何ですか?」


「私の才は少し変わってますよ。”幻”というものです」


「まぼろしですか?幻覚を見せたりするんでしょうか?」


「レベルが上がるとそういうのも出来るみたいですね。今はそこまではいってなくて一瞬だけ目を眩ませたり幻聴を聞かせたりというものしか出来てません」


「なるほど。これからの頑張り次第ですね」


「セレオン卿の才は?」


「僕のは理というもので世間では殆ど知られていないものです。これが原因で小さい頃親に捨てられてしまいましたが」


想像もしていなかったエディの言葉に王女は申し訳なさそうな顔をして謝った。


「ごめんなさい。嫌な思い出を思い出させてしまいましたね」


「いや、今は全然気にしていませんよ。それにその才のお陰で今の自分があるのですから」


「そういえば工業都市セレオンが一夜で出来たと噂のあるのもその才のお陰かしら?」


「まあそうですね」


エディは才の能力についてはあまり詳しく説明はしたくなかった。あまりに便利すぎる力を権力のある人達に知られて利用されたくなかったからだ。

今の王女には権力などはあろうはずはないのだが、将来はそうとは言い切れない。なので余計な情報は入れないに越した事はない。

意外な程に王女は真剣に学院で学んでいた。最初はエディ目的でこの学院に来たのだが、授業を受け、才や魔法の訓練をすればするほど上達するのが目に見えてわかることが王女にはうれしくて仕方がなかった。

今までは王宮の家庭教師に教育を受けていたのだが、ここまでの上達はみられず、時間を掛けても変化が現れないことから半ば諦め掛けていたのだ。

何がきっかけで王女の技量が上がったのかは判らないが恐らくエディの適切な指導と一緒に取り組むキャセリーヌの存在だったのだろう。最初は喧嘩をしていた王女とキャセリーヌだが、トレーニングを重ねていくうちにお互いを認め合う様になった。二週間も経った頃には二人の間にはわだかまりなど存在しなくなっていた。


結果として仲良くなったので良かったが、巷で良く聞く女同士の争い、それを当事者としてこの歳で目の当たりにするとは思っていなかったエディは女性関係だけはきっちりしておこうと心に固く誓ったのは誰も知らない。


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