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大盛況

翌朝エディは執務室に書置きを残してユキノと共にカーソンへと向かった。流石にユキノが一緒だと空を飛んでいく訳にもいかないので自家用車(馬車)での移動だ。


「久しぶりね。こうしてエディと一緒に出かけるのも」


「そういえばこのところセレオンから出たことなかったね。姉さんは」


「忙しい日々が続いていたからね。トーマスさん程酷くはなかったけど」


「昨日様子を見てビックリしたよ。ゾンビかと思ったくらい」


「ひどいわね。でもその表現は当たってるかも。朝から晩まで書類を処理しても増える一方だったみたいだからね」


「今日からしばらくゆっくりしてもらえると思うよ。机の上に溜まっていた書類は全て片付けておいたから」


「嘘?あの量をどうやって?書類は片付いたのはいいけど、トーマスさんは逆に自分の能力がないって落ち込むんじゃないかしら?」


「それは充分に考えられる・・・あとでフォロー入れておこう」


実際に朝執務室に出向くと書類が全て処理されていたのを見たトーマスは驚きと共に緊張の糸が切れて卒倒してしまった事を二人は知らなかった。


「エディ、准子爵に昇爵したんでしょ?おめでとう。すごいわね」


「ありがとう。姉さんも知ってたんだね?」


「そりゃあ、諜報部をとりまとめてますからね。で、王女様からも求婚されたんだって?やるね、この色男!」


「もう、からかわないでよ!そんなんじゃないんだから」


「でも、相手が本気なら逃げるのは難しくない?」



「いろいろと言われてるけど、僕はキャシーとしか一緒にならないよ」


「私も一度そんな事言われてみたいものだわ。なんでエディばかりなの?私には言い寄る人もいやしないというのに・・・」


ユキノは自分で言いながら大きく落ち込んでしまった。


「姉さん、トーマスさんなんてどう?年もそれ程離れていないだろうし」


「そうね。将来の優良物件ではあるわね。今は領主代行やってるけど何れは領地を持って貴族としてやっていきたいって言ってたわね」


「トーマスさんは姉さんのことどう思ってるんだろうね?」


「そんなの聞けるわけないじゃない。仲は良くも悪くもないって感じだから判らないわ」


「姉さんの幸せのためなら僕も後押しするよ」


「ありがとう、うれしいわ。良い弟をもって幸せよ」


ユキノは喜びのあまりにエディをハグしようと思ったのだが、エディにあっさりと躱されてしまった。

エディとユキノはカーソンに到着し、早速露天の場所へと向かった。

既にレオンとキリカは準備を始めていた。


「おはよう!エディ君」


「おっす!エディ。セレオンからにしては早かったな?」


「エディ君、一緒にいる美人は誰?」


「二人ともおはよう。隣にいるのは姉さんだよ」


「エディの学友の人達ね。いつもエディがお世話になっています。姉のユキノです。今日は手伝いにきたので頼りにしてね」


「おいおい、エディ、聞いてないぞ!こんな美人の姉さんがいたなんて。どんだけ羨ましいんだお前!」


レオンはユキノの容姿とその豊満な胸に釘付けだった。


「あら、素直な子達ね。お姉さん今日は頑張っちゃうわ」


ユキノもノリノリだった。


「もうだいぶ準備は出来ているようだね。昨日打合せした通りなんだけど、味についてはちょっとアレンジしてみたよ。これ食べてみて」


エディはそう言ってサンプルのチップスを食べさせた。


「なにこれ!すごく濃厚じゃない?」


「こっちはいい匂いがするぞ。食べても美味しい」


「この赤いのは?辛っ!!口がヒリヒリする・・・ちょっと、辛いわよ。水!水!」


二人の食べたのはチーズ味、ガーリック味、ハバネロ風味だ。


こちらにはハバネロはない様なので唐辛子よりも辛い実を調達して振りかけている。


「この二つは確かに美味しいけどよ、この赤いの、売れるのか?」


「世の中には辛い物を是とする味覚の人もいるものよ。最初は辛さに驚くけど、食べているとまた食べたくなるという常習性が出てくるからしばらくすると人気になるわ」


どうやらユキノはこの激辛味がオススメらしい。


「まあ、一応このハバネロ風味は注意書きは貼っておこう。食べるのは自己責任でと」


「よっしゃ!昨日作ったのと合わせて4種類だな。バンバン売ろうぜ!」


「ひょっひょまっへ」


キリカはまだ口の中がヒリヒリしていてまともに喋れる様になるまで待ってくれと懇願した。

最初にストックとして普通のチップスを100、チーズを200、ガーリックを100、ハバネロ風を50用意して販売を開始した。


「さて、ここからは私の出番ね。任せておいて」


そう言ったユキノの服装はメイド姿だ。彼女はその姿で籠一杯に入ったチップスを抱えて人ごみの中に消えていった。


「は~い、そこのお兄さ?ん」


「な、なんか用か?」


「お口、あ~んして」


ユキノは惚けている男の口にポテトチップスを放り込む。


「んぐっ・・・・お?これはうめえなあ。こんなの初めて食べたぞ」


「奥の露天で販売中で~す♪よろしくね♪」


こんな感じであちらこちらに鼻の下伸ばした男たちが量産されることとなった。


「ここが言っていた店か?おお!これだ。あの味が忘れられねえ。1つ・・・いや、3つくれ!」


「ありがとうございます!試食もお試し下さいね。全部で4種類ありますからね」


「どれどれ・・・美味い!・・・こっちも!・・・どれも美味いぞ!」


「この赤いのは何だ?・・・辛い!これは辛いぞ!!辛いけど病み付きになりそうな辛さだ!」


「どれどれ?うひょー!これは効くー!この辛さだ俺が求めていたのは!」


意外な事に試食を食べてもらうと一番評判が良かったのがハバネロ風だった。当初予定していた50セットがあっという間に売切れてしまい慌てて追加分を作っているところだ。


「ハバネロ風が一番人気だなんて意外でしたね」


「私はあの辛さが一番人気だなんて信じられないよ」


「あれじゃねえか?男と女は味の好みが違うっていう」


「そうかも知れないね。辛いやつはどっちかっていうと酒のツマミに合うって感じだもんね」


結局、女性にはピザとガーリック、男性にはプレーンとハバネロ風が人気となり丁度二分した形となった。

結局今日一日で二千食ものチップスを販売することが出来た。

客からはこのチップスは普段どこで売ってるいるのかという問合せが多かったのだが、この露天の販売が初めてなのでどうしようかと考えた末、商人ギルド経由で店を構えることとなった。

セレオンが発案者ということでギルドでもまた一つネタが増えたと喜んで手配をしてくれた。

この後、ポテトチップスは全国的にブームとなり広まるのだが、”元祖”ポテトチップスを看板とする王都の店と”本家”を看板とするカーソンの店と二大勢力が全国展開して競い合うこととなるのだった。


「ふふふ、どう?私の呼び込みの成果とも言えるでしょ?」


「うん、姉さんの呼び込みがきっかけとなって雪崩れの様にお客が来だしたもんね。驚いたよ」


「そうよね、ユキノさん様様だよ。私じゃこうはいかなかったわ」


「そりゃあ、お前とじゃ色気が違うだろ」


「なによ!失礼な奴ね!判っていてもあなたに言われるとムカつくのよ!」


「まあまあ、二人とも落ち着いて。成功したんだからみんなの手柄だよ」


「エディ君がそういうなら。あっ、言うの忘れてた。今夜家で打上するからみんな来てくれるかな?」


「打上げ?」


「そうそう。うちの一門も今回の露天でいくつか出展してたのよ。それとうちの露天も含めて打上げをやるって話してたんだ」


「それって肉でるのか?」


「もう、あんたは食い意地張ってるわねえ。もちろん嫌と言う程出るから期待してくれていいわよ」


「やったぜ!肉!待ってろよー!」


「レオンって肉が好物だったんだね?」


エディは苦笑いをしながら会話を見守っていた。

露天の後片付けをした後でキリカの実家へと一同は向かった。

中央広場から職人街はそれ程離れていないので歩いても十分は掛からなかった。


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