味のバリエーション
「た・ただいま・・・」
「今日は何日?」
「え?えっと・・」
「貴方が出て行ってから何日たった?」
「・・・2週間くらい?」
「どうして帰ってこなかったのよ!心配したのよ!!」
「万一のためにと張り付かせていた霞の追尾は振り切るし、連絡よこさないし、何考えてるのよ!貴方の身になにかあったのかと心配したじゃない!」
「ごめんなさい・・・」
いつもの何倍もの勢いで怒られるエディは謝るしか言葉が思いつかなかった。
エディも成り行き上そうなっただけでカーソンからこちらに連絡を入れてもらっていたからと言い訳をしたのが悪かった。火に油を注いでしまいユキノの小言は延々と続いたが、仕舞いには泣き出してしまい大慌てだった。エディは心配してくれる家族が居る事を肝に銘じてこれからはちゃんと連絡をすることにした。
「これはお詫びの印に・・・」
エディは空間収納からポテトチップスを取り出しユキノに渡した。
「私は物で釣られませんからね・・・なにこれ?ポテチじゃない?どうしたの?」
「国王様に王都の名産が欲しいと言われて産物のガロイモをポテトチップスにする方法を提案したんだよ。でも、ミノル君の言っていたジャガイモとガロイモは似てるけどちょっと違うみたいで試行錯誤でようやく同じような物ができたんだよ。で、これはその沢山作った試作品だよ」
「そうなのね・・・って国王様って貴方なにやってたの!?」
ユキノはカーソンより王都へ顛末報告にいくとしか聞かされていなかったが、まさか国王と会って話をしているとは思わなかった。そして報告ではなく名産の考案を頼まれているなど想像もつくはずがない。
「まあ、いつもの通り流されてそうなったって感じかな?それより食べてみてよ?美味しいよ?」
「ええ、じゃあ味見を・・・パリっ」
ユキノは一枚のチップスを口に入れ咀嚼する。続いて二枚目、三枚目とどんどん口の中に入れて頬張っている。
「なによこれ?スナック菓子のポテチなんかじゃないわ。北海道で揚げたてチップスを手作りしてもらった時と似た味わいがする。素材の良さが感じられる食べ応え。はっきり言って美味しすぎるわ」
「喜んでくれてありがとう。最初の試作ではベチャベチャしてサックリ感が出なかったんだけど、いろいろ試しているうちに今食べたのくらいに出来る様になったんだよ」
「久しぶりに前に住んでた時の事思い出したわ。これ、絶対売れるわよ。カーソンで作るの?」
「カーソンもセレオンもガロいもの産地じゃないからすぐには無理だけど、ガロいもは比較的育て易い作物だから、今後ガロいもの栽培にも力を入れ様と思っているよ。明日、カーソンの自由市の最終日なんだ。露天で出してた武器と防具が完売しちゃったから、明日はこのポテトチップスを売ろうと考えていたところだよ」
「そうだったのね。きっとかなり売れるはずよ。でも、どうせやるならいろんな味を用意した方が面白いかも知れないわよ」
「いろんな味ってどんなの?」
「私の世界であったのがコンソメ味にチーズ味とかね。工夫すればいろんな味に出来るはずよ」
「なるほど。チップスに振りかけるスパイスを工夫すればいいのかな?」
「安心なさい。明日は私もついていくから」
ユキノは何故か大張り切りだった。
せっかく機嫌が直ったみたいなのでエディはユキノのやりたい用にさせる事にした。
ユキノをクリアしたエディは次の難関である領主代行のトーマスのところへと向かった。彼は執務室で溜まった書類を淡々と処理をしていた。エディに気がつき目があった時にはどこのホラー映画かというくらいに目の下にクマが出来ヤツレている姿に悲鳴を上げそうになった程だ。
思考が上手く働いていない恐れもあるのでエディはトーマスに仕事を終わらせる様に言い帰らせた。かなりトーマスに頼りきりだったエディは反省し机に積み上げられている1メートル近い書類を空間収納に収めた。今夜は徹夜でこの書類を片付けるつもりだ。
恐らく一枚一枚に目を通し、決裁なりコメントを入れるにしても通常でいけば3~4日は掛かる量だ。だが、エディには取っておきがある。
空間収納した物は何故か夢の中で取り出すことが出来た。そして再び収納する際に上書きを念じれば夢の中で施した内容に上書きされる事が判った。夢の中での時間は無限大で疲れもないとあっては何日掛かろうがエディにとっては問題がない。この法則に気付いた最近ではエディは夢の中で研究を行ったりしている。研究機材も着々と夢の空間に用意出来つつあった。
先日の護身用のビットも夢の中でミノルと一緒に研究を続けていた。
「またこりゃすごい量の書類だね」
「ちょっと留守している間に溜まった書類です。やはりセレオンは開発段階にある都市なので申請書類も通常の都市の倍以上あるみたいです。
それだけでなく、前例のない事をする関係で領主の判断を仰ぎたい申し入れも多く来ているんですよ。これらの書類は単に承認印を押して終わりという訳でなく、こちらで適正は回答をしないといけないので時間が掛かるんですよ」
「なるほど。僕はデスクワーク苦手だから手伝ってもあまり戦力にならないかも知れないよ」
「いいえ。ミノル君にお願いする訳にはいきませんよ。むしろミノル君には先日の課題の方を解決してもらった方が有り難いです」
「魔法のプログラム化だったよね。魔法で演算化が出来ればかなり凄い事になると思うよ」
「人工知能って人より優れて逆に人の脅威になることはないのですか?」
「そういうSFものはあったね。掃除用ロボットが落雷を受けて自我を持つ様になって人間を滅ぼすためにロボット軍団を率いて世界を恐怖に陥れるってやつとか、サイバーダイン社のロボットが人間と敵対するとか」
「人は過ぎたる事をすれば神の怒りに触れるということでしょうか?」「神の存在はどうか判らないけど、刃物も使い様で危険だったり便利だったりするでしょ?それと一緒だよ」
「そうですね。どう活用するかですね」
「まあ、最悪の事態を想定して対処をしておくのも開発者の義務だとは思うけどね。それが出来ないならやめておいた方がいい」
「それには僕も同意です。まあ、まだそこの領域までは到底及んでいませんけどね」
「”制御処理・演算処理・記憶処理・入出力処理”これらが実現出来れば完成したも同然だよ」
「従来の魔法では制御と演算の一部しか表現していませんでしたがこの二つは何とかなりそうです。問題は記憶処理と入出力処理ですね」
「難しく考えるとこはないよ。どちらも元は1か0の組み合わせだからね」
「プログラムを言語化するでしたよね。そこが今ひとつ理解できないところでして・・・」
「それじゃ、その仕事が片付いたら補習だね」
「うわあ、当分寝れそうにないですね・・・」
「ここは疲れ知らずだからどんどんいくよ」
結局夢の中で結局一週間程の時間を過ごしたエディだった。




