自己防衛手段
エディは商人ギルド本部に足を運んだ。ギルド長は生憎不在だったため代わりの人が応対してくれたのだが、既に王城で提案した内容がギルドに伝わっているのには驚いた。
これから建設ラッシュとなるためセメントの材料や工人ギルドに対して鉄筋の発注を行わなければならない。その辺の段取りについてを話し合ったのだが、特に問題となるような事は起こらなかった。
続いての工人ギルドではエディが名乗るなりギルド中の職員や職人達が集まって取り囲まれた。彼ら職人達の間ではセレオンの技術が関心の的で自分達も技術を取り入れ様と試行錯誤を繰り返しているらしい。
セレオンはまだ出来たばかりの都市で将来有望なこの場所で働く人は他に移動することはまずない。そのためセレオンの技術は秘匿技術と思われているらしく謎のままだったらしい。エディが詳しく説明するとまるで神に祈るが如く感謝をされたのには驚いた。
来月くらいからセレオンの技術者を派遣して建築や素材加工の指導にあたるので彼らの疑問は早々に解決するに違いない。将来的にはお互いが行き来して交流を深める事が出来ると良いと思う。
宿屋に戻ったのは日没後だった。食事をしながら辺境伯に今日の王城での報告を行った。
「それにしても准子爵とはねえ。まあ異論はないのだがどんだけ早い出世をすりゃあ気が済むんだ」
ガハハを笑いながら頭をガシガシする。
「でもな、少し目立ち過ぎているかも知れねえな。気をつけろよ。宰相の一派あたりがちょっかい出してくるかも知れねえぞ」
「え?宰相って国の偉い方ですよね?何故狙われるのです?」
「宰相ってえのは王族を除いた中で一番偉い役職だ。その宰相に取り入って便宜を図ってもらおうとする輩は少なくない。目だった手柄を立てるなんて普通は難しいもんなんだが坊主がポンポンいろんな事やって手柄を立てちまうから周りの貴族としては面白くないだろう。
坊主に消えてもらった方が都合がいいと考える連中が何らかしら仕掛けてくる可能性があるっていう話だ」
「なるほど。そう説明してもらえると理解できます。そういう人達から見たら僕はかなり邪魔な存在ですね」
「貴族ってのは既得権益で守られてると考えてる連中だ。楽して儲けようなんて虫が良すぎる話だが、それをやってるんだ実際に」
「カーソン領は大丈夫ですか?」
「ああ、俺のところは実力主義だからな。今の子爵三家も先の戦争で功績をあげて獲得した領地の領主達だ。楽して儲けとか守りに入るなんて考えを持っちゃあいねえよ」
「そうですね。僕も研究会で実際にお会いしているので皆さんの事よく存じていますが不安になる要素は皆無ですね」
「今俺の方で怪しい動きをしている貴族について洗っているところだ。何か判れば教える」
「わかりました。ありがとうございます。暢気に構えていたら駄目ですね。注意を怠らない様にします」
「そうだな。坊主も准男爵だ。そろそろ専属の護衛をつけてもいい頃かも知れんな。まあ、うちの娘に勝っちまう坊主に勝てる賊なんている訳がねえけどよ。世間ではそうはそうは見えねえから余計な災いが降りかかるからな。護衛が普段いれば少しは警戒するだろうよ」
「そういうもんなんですね。威嚇のための護衛みたいなもんですね」
「坊主なら何か作っちまいそうで怖いけどな」
「いえ、ちょっと考えてましたよ」
冗談で言った言葉をエディが本気で考えていた事を知り驚きまくる辺境伯だったが最後には”ま、坊主だからな!”と笑ってガシガシするいつものパターンに収まっていた。
<夜の夢の中>
「ええ?また昇爵したのかい?今度は准子爵?順当に一段階上がった訳だね」
「ええ、そうなんですが、僕が上がると面白くない人達もいるそうで気をつける様に辺境伯から言われました」
「貴族にはお決まりのパターンだね。どうせ黒幕は宰相あたりだったりするんだよ」
「え?ミノル君、どうして知ってるのですか!?」
「やっぱりそうなんだ?いや、どうしてって、宰相が諸悪の根源なんて定番すぎるでしょう。他国と繋がっていて国家転覆を狙っていたりするんだよ」
「もしそれが本当なら大変な事ですよ」
「まあ、君の国の宰相がどんなだかは知らないけど、有り得ない事じゃないから用心した方がいいよ」
「それで相談なんですけど、護衛をつけるという話になっているんですが、何か良い方法はないですかね?」
「え?スケさんカクさんかい?」
「そのスケさんカクさんが誰かは知りませんが、辺境伯が威嚇のためにも傍に護衛を置いた方がいいっていう話だったので」
「エディも知ってるでしょ?水戸黄門だよ。徳川光圀公の護衛役の助三郎と覚兵衛のスケさんカクさん」
「ああ、前に話をしてくれたお話ですね。隠居した偉いお方が全国を漫遊して世直しするという」
「そうそうそれ。三国志で言う関羽と張飛だよ」
エディは真面目に反応するのがアホらしくなってスルーした。
「今の僕にはその様な人達との人脈がないので難しいかなと思ってるから。でも、なにも人である必要はないですよね?」
「お!そっちできた?何?ビット飛ばしちゃう?」
「何ですか?ビットって?」
「うーん、簡単に言うと護衛ロボットかな?ロボットは前に話ししたからわかるよね? 護衛対象の周りを浮遊していけ敵の攻撃を防御したり攻撃してくれる守護神の様な存在だよ。ファンネルって呼ぶ人もいるけどね」
「それはすごいですね。防御はわかりますが、攻撃とはどんなのですか?」
「主にレーザー攻撃かな?光の束を集約させて高密度の熱エネルギーとして放出させるんだよ」
「ふむふむ、それって光魔法で実現できそうですね」
「お?チャレンジしてみるかい?ちょっと待ってね。今サンプルモデル出現させるから」
ミノルはイメージで自身の周辺に4体のビットを出現させた。
「へえ、これがそうなんですね。浮遊させるのは重力魔法、防御には硬化魔法、攻撃には光魔法。うん、なんとなく出来そうな気がしてきました」
「この前の刻印の定着化が役立ちそうだね。考え方なんだけど、ロボットというのは命令された通りにしか動かないんだよ。
でもその命令を複雑化させたり、自由裁量を持たせる様にすれば命令を受けなくても行動してくれる様になるよ。でも、これはすごく難しい技術なんだけどね」
「術式刻印では実現できませんかね?」
「どうだろう?最初はいろいろ教えてあげないといけないけど、一度覚えたものは学習して次からは自分で操る事が出来る人工知能という技術が確立出来たら実現可能に思えるね」
「人工知能ですか・・・なんか神の領域の様な響きですね」
「これはひとつの考え方なんだけど、魔法の術式をプログラミングの手法でまとめればどうだろう?プログラミングっていうのは実効命令みたいなもので、素の状態では何もしないロボットをこういう条件ならこう動きなさいという命令を入れておけばその通りに動くというものだよ」
「術式のプログラミング化ですか・・・難しそうですね」
「なんちゃら高校の劣等性とかでやってたからできるよ、きっと」
「それって何かのタイトルですよね?前に言ってたアニメってやつじゃないんですか?」
「おお!最近はエディも判ってきたねえ、そうそう、アニメの情報だよ」
「プログラミングになるかは判りませんが、術式をパターン化には出来そうです。圧縮刻印を使って無数の術式を書き込んでおいて必要に応じて組合せを呼び出すという方法なら・・・」
「おお!すごいね。圧縮という言葉が出てくるあたりすばらしいよ!」
「そうなんですね。膨大なデータを入れるためには圧縮技術が必要だし、暗号化を組み合わせると真似される事もなくなるよ」
「なるほど、頑張って実現させてみます」
「それじゃ、まずは明日のためにその1だね」
「ん?何をするのです?まずはミノルのプログラミング講座だよ。二進数と十六進数をやってからC言語いくよ」
こうしてエディはミノル先生の講座を延々と受講し魔術とプログラムの融合という道の領域の技術に関して挑戦することとなった。




