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食の文化

エディは娯楽以外に気になった点について説明をはじめた。


「娯楽はこれでいいとして、僕が気になったのはこの国の食文化です。どうにも質より量の感じがして味も塩と胡椒の味付け以外見たことがありません」


「ふむ、それはどうしたものか。料理と言えば塩と胡椒で味付けするというのが昔からの習わしでそれ以外口にする機会がないから誰も疑問には思わなんな」


「では、少し試してみましょう」


エディは腕輪から小型のコンロとフライパンを取り出した。


「今からステーキを焼きますね」


同じく腕輪から予め用意しておいたステーキ肉を二枚取り出して塩胡椒をふりかけフライパンで焼く。

一枚のステーキは焼いた後で一口サイズに切り分ける。


「これはいつものステーキではないか。だがいい匂いがして食欲がそそるな」


「はい、これは塩と胡椒に加えてガーリックをスライスしたものを一緒に焼いています。一口食べてみて下さい」


国王にフォークを渡して試食をすすめた。


「これは!?香りだけでなく実際に口の中で肉汁の旨味が強調されている様だ」


「どうです?肉の素材としての良さを引き立てるのに塩と胡椒だけでなく別のものを加えると更によくなるというのがお判りいただけたかと思います」


エディはそう説明しながら、もう一枚の焼きあがったステーキにビンに入った黒い液体をかけた。焼けたフライパンに落ちた液体がジュワッと音を立てて煙が舞い上がる。


「おお!これは何という芳醇な香りだ。こんなに良い香りなのだ、その肉もさぞ美味いのだろう」


「本当です。私はお肉が苦手であまり食べませんがこれは食べてみたいと思います」


ステーキを切り分け、国王と王女にそれぞれ食してもらう。


「おお!なんていうことだ。なんだ、この美味しさは?」


「この様な美味しいもの今まで食べた事がございませんわ」


それは玉ねぎをベースとしたステーキソースです。玉ねぎは肉との相性が良く、肉の旨味を引き出してくれます。今回は焼いた肉にかけただけですが、一緒に炒めると肉が柔らかくなります。

このソースは比較的簡単に出来ますが、もっと数多くの野菜や他の成分を入れて熟成させたものは料理として格別の美味しさを実現させてくれます。


「うむ・・・私達の今までの認識が間違っておったようだ。もっと色々な味があるなら食べてみたいものだ」


「私もこの様な料理であればお肉でも毎日食べたいと思います」


「今回は数種類の料理レシピをご用意しました。宮廷料理人の方に先ずは作っていただき、アレンジを加えてこの国の料理として完成させればよいかと思います」


「いや、参った。完敗だ。まさかこれ程ものだとは。で、その余っている肉は貰っても良いのか?」


昼食の後とはいえ、一口肉を食べただけでは満たされない国王は残りの分を食べ尽くした。

王女も遠慮がちながら少しだけお裾分けしてもらっていたので余程気に入ったのだろう。


「食は活力の源と言われます。美味しいもの食べたいという欲求や美味しいものを食べたという満足感で人は生きる力を得る事ができます。これを国民の生活文化に取り入れれば国力としてかなりの増強が図れるとは思いませんか?」


「うむ、その通りだな。今までは力をつけるために量を食べることを良しとしていたが、それよりも美味しく食べるという事が重要だったのだな」


「はい、その通りです。今後は料理を美味しく食べるために必要な調味料の生産や流通、調理などで新たな雇用や商機の発生が見込めます。そうすることにより経済が潤ってくるでしょう」


「少しは希望が持てるようになったみたいだな」


「新たな王都料理が産み出されるのを楽しみにしていますね」


「これ程の事をしてくれたセレオン卿には褒美を取らせねばならぬな」


「いえ、国民として当然の事をしたまでです」


「これから王都を中心として庶民に至るまで今回の偉業が誰の発案か知ることとなるだろう。そうなった時に功労者に国はなにも褒美をとらせぬでは立つ瀬がないのだ。そうだな、ではセレオン男爵は今をもって准子爵に昇爵する。是非は言わせぬぞ」


「セレオン卿が成功する毎に身分が上がっていく姿が見えます。何れ私の伴侶となるのに異議を唱える者が居なくなる程になるでしょうね」


エディにとっては昇爵は望むものではなかったが、流石に国王の言う事を聞かぬわけにはいかないので受けることとなった。


「そういえば今日は辺境伯は一緒ではなかったのか?奴にも一言いっておかぬとならんだろう」


「辺境伯はカレナさんが居ないなら行かないと言っておられました」


「まったく現金なやつだな。まあいい、では後ほど伝令を出しておこう。それで、セレオン卿はこの後どうするのだ」


「はい、特に予定がございませんが、ギルドに寄りたいと思っております」


「確か商人ギルドと工人ギルドの両方のシルバーランクと聞いたのが?」


「はい、その通りです。今後王都の改革ではお世話になることも多くなると思いますのでご挨拶しておこうと思いまして」


「そうか、わかった。ならば世の書状を持参すると良い。皆進んで協力をしてくれるだろう」

「ありがとうございます」


「文武両道で名誉も備えておるとは、やはり只者ではないな。しかもその若さでというところが信じられぬ」


「あらお父様、私は年の差なんて気にしませんよ。愛があれば年の差なんて気になりませんわ」


エディはそっちが気にしなくてもこっちが気にするわ!と心の中で叫んでいた。成人の大人の年齢3歳差というのは誤差の範囲だろうが、成長期である13歳のエディにとって王女の16歳はかなり年上に映っている。中1と高1が一緒になるというのは現代の人にとっても違和感しかないだろう。

このまま居ても碌な事が無いと判断したエディは素早く王城を後にした。もうしばらく来る事はないだろうが、その間に王女の熱が冷めている事を願うばかりだ。

エディは王都の商人ギルドに足を運んだ。


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