娯楽文化
二度目の謁見の間にいる。前回と違うのは国王と一緒に王女も同席しているということだ。説明するのは一人でも二人でも構わないのだが、この王女はいろいろと裏がありそうで警戒しなくてはならないかも知れない。
「セレオン卿、待っておったぞ。して、世が頼んでおったものは解決したのか?」
「はい、全て解決できると思います」
「おお!そうであるか」
「お父様、セレオン卿に不可能はございませんわ。私の婿となる方ですから、当然と言えば当然ですわ」
「うむ、そうであったな」
ちょっと待って!国王まで納得してる。この親子既に話し合って囲い込みの体制に入っているぞ。これは作戦なのか??
「えっと、それでは説明を始めさせていただきますね」
都合の悪い事はスルーして早く終わらせよう。
「資源の課題については先日その解決方法をご説明しましたが、こちらの資料に詳細な方法と必要なものが記されています。一度ご覧頂きしかるべき専門家に判断していただければと思います。
そして、この王都の文化についてですが、いろいろ見て回りましたが、質素で娯楽や刺激が少ないという印象を持ちました。
そこでいくつかの娯楽を提供いたします。
まずはこれです」
エディはカードサイズの数十枚の束を見せた。
「これは何かな?小さなカードの様だが?」
「はい、これはカルタと言うものです。カードは二種類用意します。まず一つ目にことわざや、その地方の風習、有名な出来事など何でも良いですので50音順に短文にしてカードに書き込みます。そして二つ目のカードに短文の頭文字とその短文の内容を表す絵を描きます。絵のカードを全て並べて、読み手が順番に短文のカードを読んでいきます。
カードを挟んで対面で二人が向かい合って読まれたカードを取っていく遊びです」
「ふむ、それでこれがそのカードと言う訳だな」
「はい、これは私がサンプルで作ってみたものです。この読み手カードで”犬も歩けば棒に当たる”と読み上げたら、並べてあるカードの中から”い”と書かれたカードを向かい合った二人で取り合うのです」
「ほう、面白そうだな」
「これはどの様な意味ですか?」
「はい、犬が人の周りをうろつくと棒で叩かれるという事を表しています。意味はでしゃばると災難が降りかかるという意味です。ことわざや格言を集めるのが手っ取り早いですが、内容は自由なのでアレンジしてみても面白いですね。
このカルタは子供から大人まで皆が楽しめる遊びです。そして、もう一つの狙いとして子供に字を覚えてもらうということがあります。カルタを通じて字を覚えて識字率を上げるというものです」
「なるほど、そこまで考えておるのか、すばらしい」
「その遊びを普及させるために王都でカルタ大会を開催すると良いですよ。毎年1回開催して全国から強者を集結させるのです」
「娯楽の少ないこの国に相応しい遊びですね。さすがです。セレオン卿」
「その遊びについても詳細な説明は基本ルールをこちらに資料としてまとめておきました。サンプルのセットも5セット用意しましたので、これでご検討下さい」
「これはこの国の行事として定着すれば来訪者も増えるな。セレオン卿、感謝するぞ」
「案はこれだけではありません。他にもありますよ」
「なんと、そうなのか。わかった、続けてくれ」
「はい。つぎはこのボードです」
エディは二つ折りのボードを広げてみせた。
「これは何なのです?この様なものはじめて見ます」
珍しそうにエディの広げたボードを近寄ってじっくり見る王女だったが、何気にエディに近すぎる感がある。
「王女様、もう少し離れて下さいね。今から説明しますから。
これは”すごろく”と呼ばれる遊びです。ここがスタート地点でこのゴールを目指します。参加人数は二人?六人くらいまでが適当ですね。コマと呼ばれるこの小さな人形をそれぞれの物として、このダイスを振って出た目分コマを進めていきます。止まったコマに書かれている内容に従いながら一番最初にゴールに着いた者の勝ちというゲームです」
「私がやってみます。それっ・・・五ですね。1・2・3・4・5っと」
「階段から落ちて怪我をする(3コマ戻る)」
「なんですの?進んだのに戻らないといけないのですか?」
「はい、このボートは人生の縮小版と考えると判り易いです。進める目の数次第で波乱万丈の人生だったり、順風満帆な人生であることも可能です。これはスタンダードな内容のボードですが、職業を選んだり、ギャンブル要素を入れたりとアレンジも出来ます。それもこの資料に説明が書いてありますのでご覧下さい」
「すばらしい!この様な遊びを思い付くとは、やはりセレオン卿は天才だな。娘が執心するのも理解できる」
「これは私が生み出した遊びではありません。遠くの国で遊ばれているものをアレンジしてみただけですよ」
「それでもその遊びを知っているという知見としてもすばらしいぞ。この国の誰もが思いつかない事だ」
「流石私の旦那様です」
「いえ、その話はお断りしたはずですが・・・」
「いいえ!私は絶対に諦めませんよ!私と一緒にならないなんて国の大きな損失です」
「でもこの様に一緒にならなくても提案したりできますよ?」
「地方の貴族と王族では影響力が違います。何をするにも迅速に動く事ができますし。望んでも手に入れられないものがあるというのに拒否するなんて信じられません」
「まあまあ、今日はその話はよいではないか。しかし戦闘狂と噂されていたお前がここまで執心するとは変われば変わるものだな」
「そろそろ話を戻してもよろしいでしょうか?」
「おお、そうだった。すまない。先ほどの二つ以外にもまだあるのか?」
「そうですね。娯楽はとりあえず、この二つを育てていきましょう。浸透して文化として根付いたら次のアイデアをご提供します。
エディは用意していた次のアイデアの説明に移った。




