見つかった遺物
「ところでミノル君、そちらの夏休みの課題?取組?確かサルベージって言ってましたよね?順調に進んでいますか?」
「うん、順調にいってるよ。まあ、順調に行き過ぎて怖いくらいなんだけどね」
「何かあったのですか?」
「探していた船を無事見つける事が出来たんだけど、その船の積荷を見てビックリの状態だよ」
「なにかとんでもない物が積まれていたのですか?」
「まあ、とんでもないと言えばとんでもないな。古代の遺物が積まれていたんだよ」
「え?僕が持っている古代兵器の様なものですか?」
「うーん、どうだろう?恐らく兵器ではないと思うよ。でも気になることがあってね。その遺物を調べたらそっちの魔法の術式に近い刻印が刻まれていたんだ」
「術式の刻印ですか?確かミノル君の世界では魔法は存在していなかったですよね?」
「うん、現在は確実に存在していないよ。昔はどうかはわからないけど」
「是非見てみたいのですが、どの様なものか見せてもらうことは出来ますか?」
エディとミノルは夢でリンクしている。その夢の中では自在に物を操ることが出来る。物を作ったりするのは当然としてエディとミノルの意識の共有化もできたりした。
「記憶がどこまで正確かわからないけど、見てみるかい?」
「はい、それじゃあ確認しますね」
エディはミノルの意識にリンクし脳の記憶にアクセスした。
『これは?石かな?石版と呼ぶには形が丸いし、どうやら違うみたいだね』
ミノルの意識にリンクしている間はお互いに会話をすることが出来ない。今エディが話をしているのは全て独り言だ。
『刻印は・・・』
エディは石をひっくり返して底面を見た。そこには小さく細かく刻まれた術式の様なものを確認することが出来た。
『お、あった。これだな。これはやっぱり術式に間違いないね。何なのかちょっと分析で見てみよう』
エディは分析で遺物を調べた。マジックレギュレータと出ている。どうやらこれは安定装置の様なものらしい。刻印には安定化を図るための手法が込められていた。
『この術式は今やろうとしている安全制御に大きく役に立つかも知れないな』
エディは刻印式を細かく記憶の中に保存した。
「どうだい?何かわかったかい?」
「ええ、判りました。これは魔力安定装置ですね」
「ってことは昔は魔法が使えたってことかい?」
「どうやらその可能性が高いですね。別の考え方としてこちらの世界から逆にそちらに転移したという可能性です。こういった遺物は一つしかありませんでしたか?」
「まだ船内を全部調べてないから判らないけど、ひょっとしたらまだ見つかるかも知れないよ。何しろ深海での探査だから少しずつしか出来ないからね」
「判りました。また見つかったら教えて下さい。何かのヒントになるかも知れないですから」
「了解! それにしてもミステリーだよね?。まさかこんなところで君の世界とこちらの世界が繋がるなんてね。
ひょっとしたら魔法が使えるようになったりして?ヤバイね。メテオとかやっちゃう?」
「何ですか?そのメテオって。嫌な予感しかしないけど一応聞いておきます」
「魔法といえばメテオだよ。別名流星落としという星を落として攻撃する魔法さ」
「絶対に駄目です!そんなことしたら世界が崩壊してしまうでしょ?ファンタジーというのがどういう世界を指すのか知りませんが、そんな魔法が使われる世界は確実にこの世の終わりの世界ですよ」
「まあ、ゲームと現実では違うだろうね。大丈夫、メテオなんて強力な魔法はどうせ使えないから。せめてエクスプロージョンくらいで」
「もう突っ込むのはやめておきます。どうせそれも破壊力の物凄い魔法なのは想像つきます」
エディはミノルの妄想に付き合うのも疲れたので会話をスルーすることに決めた。そして何かミノルに確認しなくてはいけないことがあったことを思い出した。
「そういえばミノル君にお願いしていた件なのですが」
「お願いって?ああ、ユキノさんのことを調べる件ね。大丈夫、ちゃんと覚えてるよ。日本に戻ったら調べるよ」
「ありがとうございます。助かります」
「でも、今回の遺物を見て思ったんだけど、何らかしらの繋がりで異世界を行き来するというのは有り得る様に思えてきたよ。問題は何故ユキノさんが突然飛ばされてしまったかだけどね。
でもその原因が判ればひょっとしたら自分の意思で異世界にトラベル出来る様になったりするかもね」
「それが出来たらすごいことですね」
「まあ、でもそれがもし実現しているのなら世の中にはもっと交流している人の痕跡があるはずなのに見つからないという事は夢物語に終わる可能性もあるけどね。まあ焦らずパズルのピースをひとつずつ嵌めていこう」
エディはミノルとの会話を長い時間続けた。久しぶりということもあって話をする内容も多岐に渡っていた。
そして翌朝。
「おはようございます。辺境伯」
「おう!坊主。起きたか」
エディが朝起きて食事のために食堂へ向かうと辺境伯は既に起きており食堂で食事を済ませていた。
「辺境伯は朝早いのですね」
「まあ、昨日はいろいろあったからな。なんか寝付けなくて気付いたら朝になっちまってたんだ」
「なんだ、寝てないんじゃないですか。大丈夫ですか?」
「ああ、平気だ。戦時中なら3・4日寝ずに戦うなんて日常だったからな。これくらいで影響があるような柔な体じゃねえよ。
それに今日は特にすることもないしな。坊主は国王の課題をやるのか?」
「それについてはほぼ終わりました。でも、あまり早く回答してしまうとカーソンに早く帰らないといけないので辺境伯に悪いかなと思いまして・・・」
「いらねえ気を遣ってるんじゃねえよ。カレナは合同の演習があるとかで一週間くらいは戻ってこないぞ」
「あれ?そうだったんですか?親衛隊なので王女様といつも一緒なのかと思ってました」
「お前、親衛隊が一体何人いると思ってるんだ?50人以上いるんだぞ。十人単位の小隊で昼と夜を交互に警備してるんだ。配置も交代制で決まっているからな」
「そうだったんですね。なんだ残念ですね。次の謁見の際に一緒に居るのなら又会えると思っていたんですけどね」
「まあ、仕方がねえさ。だが、これからは気軽に会えるからな。今度休暇をもらったらカーソンに来るって言ってたぞ」
「そういう話をしていたんですね。本当によかった」
「これも坊主のお陰だな」
辺境伯がガハハと豪快に笑いエディの頭をガシガシした。
「もう出来ているのなら王城に連絡して謁見の段取りをしてもらった方がいいみたいだな」
辺境伯は宿で警護にあたっていた兵士に命令し王城への伝令を出した。しばらくして王城からの使いが宿屋に到着した。
王城からの回答で午後から謁見するとの事だ。
そして午後までの間は課題の整理をして早目の昼食を取ってから王城へ向かった。




