商人ギルド
セレスは籠の中を覗き込むと驚いた顔でエディに確認した
「これは・・・獣除けじゃねえか!よくこんなもの採れたな?この辺で採れるもんじゃねえし、獣除けのあるところは何故か獣も多くいる危険な場所の筈なんだが・・・」
「はい、答えは簡単です。獣除けを塗っているから獣が寄ってこないだけですよ」
「なるほど。そりゃあ確かにそうだな!にしたとしても大した度胸じゃねえか。だがな、獣除けでも効果のない猛獣や魔獣もいるからな。度胸だけじゃどうにもならねえぞ。運が良かっただけか?」
「はい、それも事前に聞いていましたので単なる獣除けだけでなく、そこから抽出した濃縮エキスを発酵させると臭いが数倍に高まり絶対に寄ってこないんですよ。人間には違いがよく判らないんですけどね」
「おいおい、そんな方法どこで聞いてきたんだ?俺でも知らないぞ?」
「まあなんとなくですが、いろいろ実験してみて効果を試したら偶然出来たって訳です。たまたまですよ」
「たまたまでそんなもんが出来たら凄えぞ?それを売ったとしたら行商の商人や貴族やらがこぞって買いにくるんじゃねえか?」
「それは凄いですね」
「お前気楽だな。金持ちになるかも知れないのによ。獣除けはいいとして、一緒に入っている薬草なんかも貴重なものが多いな。これを高い頻度で納入できるんだったらギルドで引っ張りだこだぞ?」
「ギルドですか?」
「おうよ!商人ギルドだな。商品の販売や買取だけでなく素材を仕入れたりするからな。貴重な物程高くなるし、お金があっても品物が手に入らないってことも結構あるみたいだしな。坊主みたいに貴重な材料を頻度高く持って来てくれたらギルドとしてもいろんな使い道が出来るって訳だ。もちろん顧客も喜ぶ話だしな」
「なるほど、そうなんですね。でもギルドっていうと敷居が高いというか僕みたいな下民がおいそれと立ち入れる場所ではありませんよ」
エディの言う下民とは階級の一番低い者を指している。
能力や職を持たない”下民”
農業を営む”農民”
能力を学ぶ学生”学人”
商いを行う”商人”
技工を使う”工人”
武術を使う”武人”
役人の”官人”
そして貴族
最高位の皇族
となっている。
商人から武人まではどれが偉いという訳ではないが、それぞれの職種でもブロンズ・シルバー・ゴールド・最高位のマスターと四段階に分かれておりその階級は絶対的なステータスを持っている。
職業毎にギルドがあり、そのギルドへの貢献度でランクの昇級が行われるがブロンズからシルバーへの昇級は並大抵の努力では上がれないと言われている。
そんな職種や階級の制度もあることからエディはギルドなんて自分とは関係のない上の世界という認識だったのだ。
「まあ普通はそういう反応だわな。だがこれもいい経験だ。坊主一緒についてこい」
そう言いながら有無を言わせずエディをセレスは引っ張っていった。
歩いて10分くらいか、街の中心に近い位置に商人ギルドはあった。ここは各ギルドが集まる言わば官庁みたいなもので商人ギルドの両端には工人ギルドと冒険者ギルドが建ち並んでいる。
武人のみ冒険者と軍人の二種類に分けれており、軍人の場合は軍の管轄となるためギルドは存在しない。
商人ギルドはこの時代にしては珍しく立派な建物で3階建の大きな石造りの建物だった。
商人ギルドの扉をくぐると中にいる人達の目が一斉にこちらに集中した。
「おう!邪魔するよ。マスターはいるかい?」
そんな雰囲気をものともせずセレスは受付にマスターの呼び出しを行った。
それを見ていたエディはセレスの態度に対して怒鳴られるか追い払われると思ったのだが、意外にも受付の女性は血相を変えてマスターを呼びに行った。
そしてしばらくして先程の受付の女性とその後ろからギルドマスターと思わしき男性が一緒に階段を降りてきた。
「セレスさん、ここでは何ですのでこちらにどうぞ」
マスターは引きつった顔で会議室の様な場所に入ることを勧めた。
結構広めの会議室は30人くらいは入れる様な場所で机と椅子がロの字に整然と並べられている。
「で、本日はどの様なご用件で?」
「いやあ、忙しいところ悪いな。いやな、今日はあんたに面白い坊主を紹介したくて連れてきたんだ」
マスターの視線がセレスからエディへと移った。
エディはというと蛇に睨まれたカエルの如く固まっていたのは言うまでもない。
「は、はじめまして。エディと申します」
「で?この少年がどうしたのです?」
「まあまあ、先ずはこれを見てくれよ」
反応の良くないマスターにセレスはエディの籠に入っていた採集品を机の上にぶちまけた。
「・・・これは!?確かに貴重なものばかりですね。これをこの少年が採集してきたというのですか?」
「おうよ!しかもそれだけじゃないぜ、エディは凶悪な獣や魔獣を近寄らせない魔除けの調合も作れるんだせ?」
「それは本当ですか!?」
マスターは半信半疑というよりもほぼ疑わしいという目でこちらを見ていた。




