国王からの依頼
「セレオンの発展については聞き及んでいる。通常なら王都は地方都市より数年進んでいるものだが、セレオンは見たことのない技術が数多く使われており、これは年数で解決できるものでは到底ない。
ここ王都は長い歴史の中発展を続けてきた。だが、この限られた空間で出来る事には限界がある。既に飽和状態といっても良い」
「この王城へ来る途中で少しだけ街中の風景を見ましたが活気があってすばらしいと思いましたが?」
「確かに表面上はその様に見える。だが、この王都の限られた場所に十万もの人が住んでいるのだ。その人数の食料や資源を確保し続けるのは難しくなってきているのだ」
「なるほど。人口密度の超過ということですね。都の防壁で囲っているからそれより外へは簡単には広げる事ができませんよね」
「うむ、その通りだ。広げる事ができないので積み上げるしかない。この都の建物は上へ上へと伸ばしていくしかない状態なのだ」
「効率良く住居を用意する方法はございます。カーソンもそうでしたが、建物は石やレンガを積んだものが殆どですが、これには限界があって高く積みすぎると重さに耐えられなくなって崩壊してしまいます」
「毎年その問題で何件もの事故で死傷者が出ている」
「でしたら従来の工法でなくコンクリート製の住居を作ればよいでしょう。セメントという素材で固めたものです。粘土よりも更にやわらかい状態で成型できるので自由自在に形をつくることができます。
強度を上げるために適当な間隔で鉄の棒を縦と横に入れておけば遥かに頑丈な建物ができます」
「それはセレオンで実績のある方法なのか?」
「はい。基本的にセレオンの建物はコンクリート製です。頑丈なので敵が攻めてきた際の防衛にも役に立ちますし、火災にも強いです。
肝心の人員の収容率ですが、5階建てくらいで比較すると4倍くらいの収容率があげられます」
「それは本当か!?ならば住宅事情が解決するではないか」
「老朽化して危険な地域から着手するのが良いかと思います。コンクリート建築に関してはセレオンの建築職人に担当させましょう」
「な、だから言っただろう?坊主は斜め上をいってるんだよ。このコンクリートていうのはよ、頑丈なだけじゃなく恐ろしい程早い工期で完成するんだぜ。セレオンが一夜で出来上がったって噂されるくらいだからな」
セレオンが一夜で出来たがったと言われる原因はコンクリート工法というよりもエディの合成で建物を築いたからだ。だが、エディは主に基礎部だけを行い、あとは職人達に任せているので全くの嘘という訳でもなかった。
「まあ、それは大げさですけど。ですがこれからの建築工法が革命的に変わることは確かです。実は五階以上に建設することも出来ますが、階段の上り下りが大変なので移動手段として魔道具があったほうが良いでしょう。これはもうすぐ完成する予定です」
「やはりセレオン卿は次元が違うみたいだな」
「坊主、これだけじゃないんだろ?考え付いた事を言ってみろ」
「はい。人が多く集まると起こる問題として住宅事情もありますが、環境問題の方が深刻なのではないかと思われます。
資源の消費が多いので木材などは周辺の伐採に植林が追いついていないのでは?」
「うむ、セレオン卿の言う通りだ。この王都の周辺の山は森林伐採が進んで木々が失われている」
「林や森がなくなるということは、そこに住んでいた動物達もいなくなるということで生態系が大きく崩れてきます。
植林はこれまで通り続けていくとして木材の消費を抑えることにしましょう」
「木材は冬場の暖を取るのに必ず必要なのだが、その量を抑えることは難しいと思うのだが・・・」
「木材の廃材はどうされています?」
「使わなくなった材木は殆どが細かく砕いて薪にしているな」
「これもセレオンの新しい技術なのですが、木材の廃材は細かく砕いたものを圧縮して再び木材として利用する事ができます。
更に小さく砕いたものを固めてペレットという薪の材料にも出来ますし、暖以外の明かり用の火などは菜種などの油を使うと良いでしょう。
料理に使うコンロの火もこれで流用できます。
そして、この暖や料理に使う火も魔道具で解決できます」
「おお!解決方法があるのだな!先ほども出てきたのだが、魔道具というのは一体どういうものだ?」
「火や水、風を起こすのに魔法を使う方法がありますが、これは術者が発動させる必要があります。
魔法というのは術者により術式の発動を念じる事で具現化されますが、この術式を刻印化させて魔力を込めた石に書き込んでやるこで術者が魔法を発動することなく魔力が尽きるまで魔法を使う事ができるというものです」
「聞く限りではかなり便利そうだが、それは簡単に扱えるものなのか?」
「実現すればそうなります。今研究しているのは魔法の術式を石に定着させるというところです。いかなる条件化でも暴走することなく安全に作動するための安全術式を組み合わせて制御をする方法で解決をしようとしているところです」
「セレオン卿は魔法にも長けているというのは初耳だな」
「魔法もそうですが研究する事が好きなのです。探究心が旺盛なもので」
「なるほどな。それで、その課題はいつ完成しそうなのだ?」
「はい、このところ研究に時間を割くことが出来ませんでしたのでセレオンの研究室に戻れば夏休みが終わるまでには完成するかと」
「そういえばセレオン卿は国立学院の学生でもあったのだな。もうその域まで達していれば学ぶことなどないのではないか?」
「いえいえ、私の知識など知れています。知らない事も沢山あるので学院での勉強は有意義ですよ」
「そういうものなのか。わかった。ではそれが完成したら教えて欲しい。それなりの報酬は用意させよう」
「承知致しました」
「それとだな・・・」
国王からの課題はこれで終わりではなかった。
例えば食文化であったり、娯楽であったりと。緊急度は低いのだが、これらも何らかの案があれば言って欲しいとの事だったので数日の猶予をもらい案を考えるという事で落ち着いた。
国王との謁見が終わり謁見の間を退室しようとしたエディに背後から声を掛けられた。




