顛末報告
王城は小高い丘の上に建てられている。宮殿と呼ぶには機能的であるため王城と呼ぶ方がしっくりくる。
こういった城が丘の上など高い所に建てられるのには理由がある。
守りに徹し易いからだ。城の城壁を崩すものとして破城槌や投石器などが有名だが、その重く大きいものを押すのは平地でも骨が折れる。それを斜面や段差のある場所まで移動させるだけでも大変なのだ。
城の周りに堀りがあるのも同様で用意に近付く事が出来ず登る事も困難だ。実際の戦闘では梯子をかけたり現地で組み立てたり攻略する側も工夫を凝らしている。攻城を成功させるのにはその辺の状況を理解した上で戦略を立てる必要がある。
そういった観点で見ればこの王城は攻め側にとっては非常に攻め難い造りをしており、戦慣れした者の設計である事がわかる。
「おう、ようやく着いたぞ。ヤレヤレだな。」
「ここが王城なんですよね?それにしても、すごい造りですね。想像以上です」
エディは自分で城とまでは言えないがセレオンの屋敷を設計しているのでその凄さが理解できた。
「この国は四方を他国に囲まれていて今まで戦いの歴史の繰返しだったからな。この城を落とされたらいくら他で戦果を上げてもそれまでよ。だから落とされ難い城を作る必要があるんだ」
「戦いに勝つため必然的にこの城が出来たという訳ですね」
エディとの会話を進めながら辺境伯は誰に何を告げるでなく城の中へと入っていく。
警護についている兵士も辺境伯の姿を確認するなり道を開け姿勢を正し直して敬礼をしてくる。
「皆さん辺境伯の事をご存知なのですね。王城の中に入るのも手続きとか身体検査で大変かと思いました」
「まあ、俺が一緒ならそんな煩わしい事はしねえよ。通常はこうはいかねえけどな」
ガハハと豪快に笑いながら辺境伯は通路を進んでいく。
どの位歩いただろうか。今居るフロアは絨毯からして毛足の長さが異なり高価な事がわかる。そして目の前の扉は金をあしらい豪華絢爛という感じの物だった。ここが国王謁見の間に違いない。
警護の兵が辺境伯の到着を告げると扉が両側に開き中の光景が視界に入ってきた。
想像していたよりも豪華さはなかったが、国王の部屋と呼ぶには相応しい内装や調度品だ。
部屋の奥に座するのが国王陛下に違いない。確信はあったが今回が初対面であるエディにとってそれを確かめる術はなかった。
「おう!待たせたな」
え?辺境伯、一体なに言ってるの?相手は国王様だよ?
いつもと変わらぬ口調の辺境伯に唖然としたエディだった。
「辺境伯!相手は国王様ですよ!」
なんとかこの場を繕わなければと必死にエディはフォローをする。
「ははは、構わんよ。私とそいつは戦友であり腐れ縁で付き合いも長いからな。だが、私にぞんざいな口の利き方するのはこいつぐらいなものだ。困ったやつだ」
エディの必死さを見かねて国王が気にすることはないと声を掛けた。
「おめえが国王なんて似合わねえ事してるからだろう。もともと俺たちは愚連隊なんだからよ」
「そう言うな。国王っていう立場はそれなりに大変なんだぞ。お前も地方都市の政をしているのなら判るだろう」
「まあ、お互い望まなねえ立場になっちまったってことだな」
話を聞いていると国王と辺境伯は戦友であり親友の様だ。こんなやりとりをしていても周りで誰も咎める者がいないのが不思議だった。
「それで、君がセレオン男爵だな。セレスから話は聞いている。工業都市セレオンを興した手腕は見事だ」
「はい、お褒めいただきありがとうございます。私が工業都市セレオンを治めているエディ・セレオンです」
「いろいろと聞きたい事は多いのだが、今回は別の件で召集しているからな。奇襲工作の話を詳しく聞かせてくれないか」
エディは今回の奇襲工作と半年前の出来事について詳しく話をした。
「その話は全て真の事なのか?」
「はい、全て真実です」
「そうだとすれば竜神に助けられたということだな。俄かに信じ難いことではあるが」
「深緑の森の獣や魔物を利用しようとしなければ恐らく不干渉だったと思います。それに自分の子供まで危険に晒されていたので怒りを買ったのでしょう」
「なるほど・・・影のガゼロの命運も尽きたということだな」
「その人物が首謀者なのでしょうか?」
「恐らく十中八九そうだろう。他国に工作を行い魔物や獣を使って戦力を削いで国を落とすのが奴の手口だ。多くの国がその手でやられている。各国の暗殺対象者のトップに名前が挙がっているはずだ」
「そんな人物だったのですね。最後はあっけなかったですが・・」
「奴も虫に食われるとは思ってなかっただろう。だが相応しい死に方とも言えよう。
顛末については理解した。この話はここまでだ。
それで、セレオンの発展を遂げたセレオン卿に私から頼みがあるのだが」
「私にですか?なんでしょうか?ご期待に副えるか判りませんが・・・」
「なに言ってやがる。坊主は絶対斜め上のことやってくれるぜ。賭けてもいいぞ」
今まで黙って傍で聞いていた辺境伯がここぞとばかりに口を挟んできた。




