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罪を憎んで人を憎まず

辺境伯のために施した馬車のカスタマイズはスプリングの追加とスタビライザーと呼ばれる左右の車輪のねじれを補正すして安定されるものを追加している。

このため路面への車輪の追従が良くなり馬車が跳ねずに振動も少なくなっている。

もちろん車両内のクッションも特別製だ。


「おい、坊主。なんだかいつもと乗り心地が違うぞ。乗り心地なんてもんじゃねえなこれは。

まったく揺れや振動がねえじゃねえか」


辺境伯は馬車の異変にすぐに気がついた。


「はい。長旅になるので馬車に加護を付与しておきました。浮遊の加護で馬車や馬は地面に接する事無く地面の少し上を浮遊して走る様にしています。そのため振動は一切ありませんよ」


「おいおい、一体どんな手品なんだ。こりゃあすげえってもんじゃないぞ」


「種明かしをすれば風魔法の刻印をした魔法石を馬車に組み込んであります。風の力で少しだけ浮いている状態を保っているのです」


「いままでの改造だけでも貴族の引っ張りだこだろう?更にこんなものが登場したら大騒ぎになるぞ」


「いえ、売るつもりはありませんよ。これは試験的に試したのとお世話になっている辺境伯へのお礼を兼ねて特別に付けさせてもらったのです」


「ふむ。そうか。まあ公にはしない方が要らぬ災いを呼ばねえからな」


辺境伯には風の魔法の浮遊という説明をしているが実は重力魔法での重力軽減で重力をマイナスに掛けた状態で浮遊させているのだ。しかも重力がないので進む力が進行方向に集中するため移動速度も通常状態よりも速くなっている。


静かな空間での移動時間は会話をするにも最適だった。普段あまり辺境伯と話をする時間がないのだが、

今は心置きなく話が出来る。むしろ会話をしていないと寝るだけという退屈な空間なのだ。


辺境伯とエディの乗る馬車は車内が対面のベンチシートになっており、方側が3人ずつ計6名の乗車定員

となっている。執事長は御者台に座っており、何かあれば小窓を開けてこちらに伝えてくる。

なので今は辺境伯とエディの二人だけだ。


「それにしても坊主は不思議なんだよな。最初に見かけた魚の捕獲方法にはじまって新しい製法や加工技術、見たことも聞いたこともない技技能で街一つを作っちまう。

更に古竜と知り合いになるなんて何処の冒険物語だって話だ。

誰が見ても普通じゃあねえだろう? 何らかの神託でもあるのか?」


「いえ、そんな神がかったものなんて一切ありませんよ。身の上のお話は最初の頃にさせていただきましたが、本当に何の技能も特技もなく下働きとして働いていた商家を役にたたないと3ヶ月で追い出されたくらいですから」


エディはその頃の自分の不甲斐なさを思い出し苦笑いをしながら頭をかいている。


「ですが、その頃に夢にある人物が出てくる様になったんです。その人物と会話をしているうちに様々な知識や技術が身に付いてきたというのが実際のところですね」


「それって夢神様ってことだよな?」


「辺境伯、どうしても神様に結び付けたい様ですね・・・ この話は信じて貰えないかも知れませんが、夢に出てくるのは僕より少し年が上の男の子なんです。 そして彼は実際に存在していて別の世界で生活しています。

夢を通じて僕と会っているという感じです。

その別世界というのは僕たちの居るこの世界よりもかなり文明が進んでいるのですが、魔法が一切無いというアンバランスなところがある世界です。 でも、ひょっとしたら魔法が使えないからこそ文明で補う必要があったのかも知れませんね」


「なんだ神様じゃなかったのか。別世界の文明ねえ・・・ そうか、それなら有り得るかも知れねえな」


「何か心当たりはあるのですか?」


「まあ、いくつかの英雄伝みたいなもんだがな。歴史上、何人かの英雄と呼ばれる人がこの世界では到底考えられない知識を持って力を振るっていたと言う話がある。それが夢の知識なのか本人の知識なのかは知る術もないが恐らくそのどちらかなんだろうな。

稀に流れ人という異世界から飛ばされて来たという人もいる。坊主の姉さんのユキノがそれだったな」


「はい。ユキノ姉さんは僕が夢で会う人と同じ国だと言っていました。だたそれが同じ世界なのか並行世界なのかは判らないらしいです」


「並行世界?聞いたことねえが、言葉の感じから意味は判るな。その世界と別の同じ世界が存在するということだな」


「そうです。意味はそれで合っていると思います。それで、並行世界かどうかを調べようと思って夢に出てくる人にユキノ姉さんの家族を訪ねてもらうことになっています。もし行方不明になっているのなら世界と時間が繋がっていることになりますので」


「なるほどな。まあ現実として受入難いもんだが、世の中には割り切れないものや理解し難いものは沢山あるからな。

坊主が古竜に気に入られているっていうのもその一つだな」


「古竜と仲良くなるというのはそんなに珍しいのですか?」


「おいおい、珍しいなんてもんじゃないぞ。古竜は神竜といわれていてな。この地方の人間にとっては守り神として崇められているんだ。 普段は人が立ち入ることの出来ない森の奥深くにいることもあるが、その姿を見た者は殆どいないと言われている。

そんな存在に”仲良くなりました”は無いだろう。どんだけ規格外なんだ?もう笑うしかないぞ」


「はあ、そう言われましても傷ついた幼竜を助けたのがきっかけでいつの間にか気に入られたというか一緒に戦ったというかですので特別どうこうしようとした訳ではないんですよ」


「まあそうだろうな。やましい心や利害を求めて会おうとしてもすぐに判ってしまうからな。

坊主は無欲というものあるだろうが闘争心の無いのが良かったんだろうな」


「でも神竜と呼ばれているということは神様ですよね?帝国はそんな存在を襲ったなんて

罰当たりですね」


「あいつらは昔からまともじゃねえからな。他国を侵略し蹂躙することしか考えてないんじゃねえか?その対象に人も神もなにもあったもんじゃねえんだろうな。

実際殲滅されたってことだから考え様によっちゃあ神罰が下ったようなもんだけどな。

俺としてはこのまま帝国本土も神罰の対象となって欲しいもんだ」


「いやあ、帝国にも善良な市民も多くいるんじゃないですか?そういう人達が対象となるのは可愛そうですよ」


「坊主のそういうところが古竜に気に入られたんだろう。罪を憎んで人を憎まずっていう言葉もあったな。

でも、本当の戦争が始まったらそんな事は言ってられねえぞ」


「はい、実際に経験された辺境伯が言われると説得力がありますね」


エディと辺境伯は馬車の移動中、会話が途切れる事無くずっと話が続いていた。

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