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衣装持ち

エディは執務室を出て執事長のお爺さんの後に着いていった。

なんだかんだでこの執事長と顔見知りになってから長い。

辺境伯は執事長に絶対的な信頼を置いており、この御仁の振る舞いも決して前には立たず、常に一歩下がって主人を立てる様は正に執事の鏡とも言えた。


連れられて来たのは衣裳部屋だった。所狭しと部屋中に豪華な衣服が掛け並んでいる。

やはり貴族はこういう部屋を持っていて当然なんだなと感心するエディだったが、掛けられている

衣装の一部を見て首を傾げた。

エディの身長でピッタリであろう洋服がずらっと並んでいたからだ。


「あのう、これって一体・・・」


「はい、これは旦那様がセレオン様のためにと仕立てを指示されて用意したものです」


「え?やっぱり僕のだったのですか?それにしてもすごい数がありますね・・・」


エディが驚くのも無理も無い。ハンガーに掛けられた衣服が数十着は並んでいるのだ。


「セレオン様のご趣味が判りませんでしたので少し多目に用意させていただきました」


「うーん、これは少しの範疇を超えているような・・・」


「どうです?お気に召しませんでしたでしょうか?」


「いえいえ、どれも立派過ぎて僕には勿体無いなと思いまして」


「王都での滞在日数がいか程になるか判りませんので多目に持って参ります故、ご遠慮は無用です」


「わかりました。では遠慮なく選ばせていただきます」


最初は遠慮していたエディだが、商人ギルドに所属している身なので洋服の生地がどれほど立派なものなのか見て判る。

仕立てにしても一切の妥協がなく一流の職人の縫製で仕立てられていた。


「これはかなり技術の高い職人の方が作られたみたいですね」


「お判りですか。流石セレオン様です。代々当家の専属で仕立てを行っている

職人が手掛けたものです。王宮への献上品を仰せつかることもあるくらいです」


「なるほど。それ程の人が居られるのですね。そんな立派な方に僕の服を作って

いただいたなんて恐縮です」


「服は着ないで飾っていればただの布切れです。着る者が居てこそその価値が

活かされるというものです」


「なるほど。そう言われてみればそうですね。では、これとこれとそれをお願いします」


「かしこまりました。それでは袖を通して頂いて仕立ての調整を行います。

残りの洋服についてはセレオン様の屋敷へ送らせていただきます」


「え?残りもいいのですか?こんなにありますよ?」


「はい、構いませんとも。先ほども言いました様に着ていただかないと価値はありませんからね」


エディは20着もの服が一気に増えた。王都へは5着程持っていくので15着をセレオンの屋敷へ

運んでもらうこととなった。


服を選ぶのにはそれ程時間は掛からなかったのだが、服以外にも貴族には小物も必要になってくる。女性程ではないが、男性でも実用性は全く考えられていない装飾的な小物を見に付けないといけないのだ。


例えば帽子であるとか、ブローチ、ブレスレットや指輪など。

服のポケットにはスカーフを入れて出しておかないといけない。


それぞれの服に合わせてアクセサリーも変えていくので組み合わせとしてはかなりのものとなる。

それらを選ぶのに予想以上に時間が掛かった。


「セレオン様、お時間もありますのでこれくらいでよろしいかと。もし足りない物などありましたら王都で直接ご用意しますのでご心配には及びません」


執事長が親切に細かく教えてくれるのだが、エディからすれば何が足らないのかすれも判っておらず言われるがままだった。



辺境伯と別れて丁度一時間経ったので荷物をまとめて玄関へと向かった。

そもそも王都に行く予定など無かったエディは荷物という程の物はもともと持って来ておらず、その殆どは執事長が用意してくれている。

荷物は全てお付きの家人が乗る馬車と一緒に付いてくるとの事だった。



玄関に足を運ぶとそこには既に辺境伯が待ち構えていた。


「おう、坊主。似合ってるじゃねえか」


「あんなにもたくさんの服をいただいてありがとうございます。自分ではなかなか服まで気が回りませんので助かります」


「お前は注目されているからな。これからは貴族としてそれらしい身なりをすることも必要になってくる。これを機会に勉強するといい」


なるほど。辺境伯は服を用意してこの事を伝えたかったのだと理解した。

これから行く王都には多くの貴族がいるため接する事もあるだろう。その貴族たちに田舎者の成り上がりと見くびられない為にも身形や態度は重要になってくる。

やはり長年貴族として生きてきた者たちと数年前までは庶民だった自分では同じ様にしていても見る者が見れば違いは明らかなのだろう。

これからは違った意味で戦いがはじまるのだという覚悟をエディは持たなくてはならなかった。


「王都へはこの馬車で行くのですね」


「おう!坊主のところのコーチビルダーで作った特注品だ。その辺の馬車の倍の速度は出せるぜ」


「あはは。そうですね。速度もそうですが快適性が段違いですからね。従来の馬車の乗り心地は

酷いもんでした」


エディのコーチビルダー製の馬車は辺境伯もお気に入りみたいだ。エディに早く乗る様に催促して

馬車は出発した。


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