領主としての課題
セレオンも都市としてやっていくためには色々な課題がある。今机の上に積まれている課題は以下のものだ。
・冬季の対策
・市の税収問題
・教会の設立
・孤児対策
・街の治安問題
・北の森からの魔獣対策
などといったものだった。冬季の対策は水の多い街なのだが冬場は川が凍ってしまい水の確保や運搬のルートが使えなくなるものだ。
温かい今の季節に対策を考えておかなければ冬は乗り切れない。
こういった対策にかかる費用も今まではエディが捻出していたが、これからは税収で賄っていかなければならない。今年までは非課税だが来年からの徴収は市民には伝えてある。その徴収をどの様にするかが課題だ。これについては実と相談をしてるので何とかなると睨んでいる。
「この辺の冬は積雪は少ないにしても寒さは厳しいものがあるからなあ。暖房については対策が必要だろうね。
光熱費が嵩むと庶民の暮らしに負担が掛かるからなあ・・・
魔導具で対応するのが手っ取り早いかな?
丁度ラボも出来たところだし試作を作った方がよさそうだね。
とは言っても我が身一つなので治政の溜まっている分の処理もあるし大変だな・・・」
エディはこの書類の山を見ながら早く出来上がったラボを見たいという気持ちを抑えていた。
「教会は建設の方向でトーマスさんに任せてもいいだろう。孤児対策も教会に併設する孤児院でいいとして・・・
街の治安と魔獣対策か・・・」
エディは考えてはいるのだがなかなか答えが出ずに悩んでいるとドアがノックされユキノが入ってきた。
「帰って早々に大変ね。ごめんね。手伝ってあげれたらいいんだけど・・・」
「うんん、これは僕でないと出来ないことだから。お姉さんこそ、久しぶりに顔を合わせたばかりなのに仕事する羽目になってごめんね」
「うん、大丈夫よ。だからこうやって顔を覗きに来たんだから。はい、コーヒーでも飲んで一息ついて」
「ありがとう。お姉さんの煎れてくれるコーヒーは美味しいから好きなんだ」
「でしょ?焙煎コーヒーっていうのよ。元の世界でも飲んでたからね」
「そうだ。元の世界といえば、お姉さんの住んでいたところの治安ってどうだった?」
「私の住んでたところというか国はすごく平和だったわよ。もちろん治安維持のために警察という国の機関がそれぞれの街にあったけど、交番っていう出張所があって何かあれば近所の交番行けば対応してくれたから。地域住民とのコミュニケーションといった感じかしら。でも、元の世界でも国が変われば犯罪率や殺人などの件数が多い国もあったので一概には言えないわね」
「そうなんだ?簡単にはいかなそうだね。でも何故他の国より安全だったのかな?」
「ひとつは民度の違いかしら。道徳というのがあって宗教の教えでもあるけど学校で勉強と同じように人としてどう生きるべきかを学ぶのよ。
小さい頃から人の物を盗ってはいけないとか人には親切にしなさいとか様々なことを教えられてきたので自然とそうなった感じかな?
あとは島で海に囲まれている国だから外国から人が入って来なかったので単一民族として統率されていたのかもね」
「なるほど。参考になるよ。そういった良いところはこの街にも取り入れたいところだね。ミノル君とも相談してみるね」
「私で相談出来る事があれば遠慮なく言ってね。ところで、私に何か言い忘れてることないかしら?」
「えっと・・・あります。エドモン子爵のお嬢さん、キャセリーヌとの婚約の話が出ています」
「それはおめでたい事じゃないの?どうして私にすぐに言ってくれなかったのかしら?」
「なんて言うか恥ずかしかったというか言うタイミングを考えていたというか・・・」
「その人はエディの幼馴染の子だったわよね。カターシャさんから色々聞いていたけど願いが叶ったという訳ね」
「お姉さん、キャシーの事知ってたの?」
「そりゃあ、姉の情報網を侮ってはいけないわよ。私も屋敷でただ暇を過ごしてる訳じゃないわよ。エディに悪い虫がつかないかちゃんと監視・・じゃなかった、神様に祈ってるんだから」
「今監視っていいましたよね?どこに密偵がいたんだろう?」
「とにかく、私にも義妹ができるわけだから。今度ちゃんと紹介してよね」
「うん、わかったよ。キャシーにも話しておくね」
「約束よ。あまりお仕事の邪魔しちゃ悪いからこの辺で勘弁してあげるわ。お仕事頑張ってね」
「うん、ありがとう」
いつの間にか姉に頭が上がらなくなっていたエディだった。でも心配してくれているというのが伝わって嬉しい気がする。キャシーとも仲良くしてくれるといいなと思うエディだった。
その夜の夢の中・・・
「なるほど。課題が山積みという訳だね。その中でも街の治安や防衛対策は急務だろうね」
「そうなんですけど、人を集めるにしてもどうやっていいのやら皆目見当がつかなくて・・・」
「一つの案として武人ギルトから集うのと、国へ要請をしてもいいんじゃない?」
「国に?どうやって?」
「ここは辺境の地でしょ?北は魔物の巣で東西と南は他国に隣してるという言わば四方を常に脅威にさらされているところだよ。魔物は一先ず置いておいて、他国から見て急速に発展を遂げている街があったらどう思う?」
「そりゃあ魅力的なはずだから・・・そうか!侵略される恐れが高くなるってことですね」
「まあ落としどころとして領内で半分の人員を確保するから国も半分の人員を派遣してくれというところかな?もちろんこれは直接君が国に申し入れするのではなく辺境伯を通じて言うんだよ」
「理解しました。それで、残りの半分を自分達で確保というのが問題ですね」
「それも国中にお触れを出すといいよ。士官候補生募集!とかね。誰でも楽して上の役に着きたいとか一旗揚げたいとか思っているもんだよ。これからの組織となるとその可能性もある。地方でくすぶってる連中がやって来る筈だよ」
「そうですね、それでは早速募集をかけてみるとします」
「どうせなら何か呼び水となる様なものが必要かもね。宿舎がきれいとか装備や施設が充実しているとか」
「その辺も少し調べてみて対応します」
「うんうん、何事もまずリサーチからだね。いい判断だよ」
その後、辺境伯を通じて国へ兵の派遣を要請し、既存の兵士に加えて民間からも半数を募集することにした。
募集で集まった兵士を士官養成所という形で育成を行い、リーダークラスの人材を選び出し組織を作っていく取組に着手する。
これから育てる兵では他国の脅威に対応することは難しいため兵力を補うための算段も実と一緒に考えることにした。




