両親へのご挨拶
結局、振動軽減の方法に気付くのが遅かったエディは全体の2割程度の距離しか振動が軽減できずにいたのでエディのお尻はヒリヒリして痛い。
回復系の魔法が使えれば良いのだが、現在のエディでは痛みを軽減するための魔法を使うことが出来なかった。
「やはり回復系の魔法の習得も急がないといけないな・・・」
エディの独り言は馬車の車輪の音にかき消されてキャセリーヌに届くことはなかった。
エディが悶絶している中でキャセリーヌが平気そうにしているのを見て流石に貴族の娘だと感心していた。
本当はキャシーもお尻がいたかったのだがエディの前なのでその様な素振りを見せずに毅然としていただけだった。
立派な門構えの扉をくぐると一本の道の奥に屋敷が見える。
屋敷までの広大な土地には職人が綺麗に剪定している植木が並んでいた。植木が庭垣となって屋敷まで誘導している感じだ。
庭に対してもお金が掛かっている事や来る人の目を楽しませることも兼ねていることにエディは感心して風景を楽しんでいた。
屋敷の玄関前に到着した。
そこには出迎えの人達が既に整列して並んでいる。
「お嬢様、おかえりなさいませ」
メイド達が一斉に並んでキャシー達を出迎えた。メイドの人数は片側に4人ずついるので8人といったところか。もちろんこれが全員ではないだろうから相当な使用人を雇っていることになる。
エディの屋敷はまだカターシャしかいない。結構広い屋敷なのでもっと人を増やさないとカターシャの負担になってしまうなと反省した。
自分達の世話だけでなく今後は来客などの機会も多いだろうから相応の使用人は常に雇う必要があると理解した。
こうして貴族の屋敷を直に見ないと判らないものである。
そういった意味ではエディは今回のエドモン子爵の屋敷に招待されたのは願ってもない事だと楽しみにしていたのだ。
とは言え、あまりにキョロキョロ見回すのは失礼になると考えエディは極力周りを見回すのを控えていたのだが、目に映る光景全てが驚きの連続だった。
「お帰りなさいませ、お嬢様。そしてセレオン卿、ようこそお越しいただきました。長旅はさぞお疲れでしょう。お部屋へご案内いたします。お疲れでしょうからまずは身体をお安め下さい。
当主もお会いできることを楽しみにしておりますので後程ご案内に伺わせていただきます」
筆頭執事のエディへの歓迎の言葉を聞いてキャシーは驚いた。エディを連れて戻ることは事前に伝えてあったのだがこれ程までの歓迎で迎えるとは思ってもみなかった。まるで貴族が訪れた時の対応の様であったからだ。
今までこの屋敷に貴族以外の来客を正面玄関から連れてきた事がなかったキャセリーヌだったので家人がどの様な反応をするか判らなかったのだが、今の反応は些かというかかなり大袈裟に映っていた。
「それではエディ、私は着替えて参りますのでお部屋で休んでいて下さいね。両親への挨拶は少し休んでからにしますので緊張なさらずに寛いでいて下さいね」
「うん、わかったよ。それじゃまたあとでね」
エディは筆頭執事に連れられて来客用の部屋へと案内され、キャシーは自分の部屋があるであろう二階の階段を登っていった。
それから二時間くらい経ってからエディの部屋に先程の執事が呼びに来た。
挨拶はどうやら食事の席で行うらしい。屋敷の食堂へと案内された。
この屋敷の食堂はエドモン家のみが使用する部屋なのだろう。
テーブルとしては大きいのだが全員が座ったとしても8名程度の
広さしかない。その代わり部屋の内装や調度品を見る限り貴族の屋敷といった雰囲気だ。
この辺についてもエディの屋敷は見習わなければならない。それは豪華にするという意味ではなく貴族として誰を招待しても恥ずかしくない様にしておかなければならないからだ。家に戻ったらカターシャに相談することにした。
エディはキャセリーヌの隣の席を用意された。その向かい側が奥方で斜め前がエドモン卿だ。
「みんな揃ったようだね。キャセリーヌ無事に戻って何よりです。それとセレオン卿も我が屋敷にようこそおいで下さいました」
「お父様無事戻って参りました。それとエディを歓迎していただいてありがとうございます。多少演出がかっていて驚きましたが」
「エドモン子爵、お招きに預かりありがとうございます。娘さんにはいつもお世話になっております」
「エディまで。そんなに畏まらなくてもよろしいのよ。ですが最初のご挨拶は初めましてですわよ」
「何を言っておる。セレオン卿とは先週会ったばかりだぞ?」
「え??」
キャセリーヌは父親が何を言っているのか理解できなかった。初めてエディを招待したのだから顔を合わせるのも当然初めてのはずだ。
「セレオン卿も人が悪い。娘には何も説明していないのですね?」
「はい、いつかはと思っていましたが話す切欠がありませんでしたので今日説明をしようと思っていたのです」
「お父様!エディ!一体何の事を仰っているのですか?」
「君の目の前にいる幼馴染のエディ君はセレオン領の当主であるセレオン男爵だよ」
「ええ!?」
キャセリーヌは驚いた顔で父親とエディの顔を交互に見た。だがどちらも冗談ではないと頷いた。
「キャシーごめんね。早く打ち明ければ良かったのだけど、学院内では学院長から内密にする様に言われていたんだ」
「酷いです!私を騙していたなんて・・・・でも、エディが貴族ということは・・・」
騙されたことに気付き顔を真っ赤にして怒っていたキャセリーヌだが何か思い付く事があったのか急に笑顔に切り替わった。
「お父様、エディが男爵ということは私との交際を正式に認めていただけるという事ですよね?もちろん結婚を前提としたものです」
「ええ!?」
キャセリーヌの爆弾発言に今度はエディが驚く番だった。




