自主活動
授業が終わった後でエディは職員室に足を運んだ。
目的の担任であるカレンはすぐに見つかった。
「あら?セレオン君じゃない。珍しいわね、貴方が職員室に来るなんて」
「はい、折り入って先生にご相談があって来ました」
「え?何よその改まった感じは」
「いえいえ、そんな大した事ではありません。生徒の活動提案の承認をして欲しいだけです」
「活動提案?先ずは内容を聞こうかしら」
こうしてエディは自分達で考えた内容をカレンに話した。
「なるほど。生徒の活動を活かせる場という訳ね。やはり懸念としてはギルドとの関係かしら」
「はい、ギルドに対しては研究会を通じて提案を行なえば恐らくノーは出ないかと思います」
「それで学院から研究会へ上申するという訳ね」
「その通りです。授業の様な公式活動でなくても学院公認の自由活動としていただくだけで大丈夫です」
「費用はどうするのかしら?学院としても今年度の予算は決まっていて充当は難しそうよ?」
「費用はカーソン辺境伯にご相談させていただいて決めたいと思います。僕が出してもいいのですが、ここカーソンで行う催しなので一応、お声がけはしておいた方がいいと思いまして」
「ええ、その方がいいでしょうね。それにしてもやはりセレオン卿は一般の生徒とは違うわね」
「え?僕は普通の生徒ですよ?」
「普通の生徒がこんなに段取り良く事を運べる訳がないわ。各所に対しても顔が利くのもあるでしょうし。
わかったわ。それじゃあ、この件は私から学院長に報告して研究会へ上申してもらう様にお願いしてみるわ」
「ありがとうございます。はやりカレン先生は頼りになりますね」
「褒めても何も出ないわよ」
カレンに快諾を得たエディは職員室を出て教室へ戻っていった。
それを見送りながらカレンは呟く。
「ああ、あと10年私が若ければいい感じだったでしょうにね」
ボソっと呟いたが誰もその言葉を聞く事はなかった。
カレンはエディからの提案をまとめて学院長室へと向かった。
学院長も反対の意見はなく話は順調に進んだ。
研究会で出された学院からの提案に対して特に反対の意見もなく、逆に学院の生徒の成果を見れる良い機会である事と、生徒の意欲向上になるということで問題なく承諾された。
エディが提案したものはフリーマーケットと学園祭を足した様なもので場所は学院ではなく街の中心にある広場で開催することになった。
学院はセキュリティの関係上、一般の人が立ち入る事が出来ない事と、より多くの人に見てもらうなら広場の方がいいだろうという判断だ。
このイベントを市民祭と名付け学院だけでなく、市民からも出店を募集し大規模なものとなるようにした。
領主の計らいで設営に関する費用は市から支給されることとなった。
エディがカーソン伯のところへ話を持って行ったところカーソン伯が乗り気になってしまい大袈裟な程に盛り上がってしまった。
今年一回限りの行事ではなく毎年の恒例行事とし、反応を見てこれよりは小規模になるが月一回程度のイベントにして経済の活性化や市民の娯楽に繋げようとカーソン伯は考えていた。
開催時期は夏休みに入って1ヶ月後の時期に設定した。学院の夏休みは約2ヶ月間ある。遠くから通う生徒が実家に戻ることを考慮しての期間だ。今回の催しも遠方の生徒に関しては任意参加としている。学園行事ではなく自主参加企画であるため成績にも影響は無い。
催しの費用については市から充当されるため生徒達の負担になることはなく自由に活動する事ができる。
学院側としては自主的に生徒が活動することを好ましく思い、地域住民と接することや貢献することで様々な人達と接点を持つ事が出来、将来の職業に対する体験教育にも良いと判断していた。
「それにしてもこの様な大規模な催しにまでなるとは想像していませんでしたね。セレオン卿がこの学院に入られると聞いた時には驚きましたが良い意味で変わろうとしていますね」
「はい、入試試験の時は学院長がお止めにならなければ大騒ぎになるところでしたが、今では彼が能力と身分を隠匿してくれているお陰で上手く生徒にも馴染んでいる様です」
「あなたにも負担を掛けますね、カレン」
「まあこれも何かの縁でしょうね。あのセレオン創設者と縁を持てるというのは滅多にないことですから。恩師として恩を売れるだけ売っておけば私もいつか良縁に・・・」
「ふふふ、打算はあるみたいね。まあ頑張りなさいな。それでも駄目な時は私が何とかしてあげますので」
エディ達の担任のカレンは平均以上の美人だ。スタイルも抜群で女性として魅力を認めない人はいないだろう。
だが、完璧すぎるのと彼女の普段の態度が毅然としているため冷血な印象を持たれてしまう。
彼女の能力が氷結系であるのも起因しているのだが周囲の雰囲気温度を下げてしまう事と相手を見る視線に冷たさを感じてしまうのだ。彼女には自分の何が悪いのかと悩む日々で今までも少なからず縁談があったのに上手くいかないことに焦っていた。




