親と子の違い
<ある日の夜の夢の中>
「それで、国立学院はどうだい?思った通りの場所だったかな?」
「はい、図書館の蔵書も思った以上にありましたし、授業も含めて学院で学べる事は多いですね」
「それは良かった。で、領地の治政にも役立ちそうかい?」
「そうですね。学院から学ぶというのもありますけど、生徒側からも得るものは多いです。学院には色んな立場の人が集まってきますから今まで気にもしていなかった様な事に気付かされる事も多くありますよ」
「なるほどね。でも、補欠には笑ったなあ。魔法の高校の劣等生かと思ったよ」
「いえ、本来補欠なんてありませんよ。まあでも能力で差別というのはないですね。ですが、一部の貴族の人達が偉そうにしていますね」
「おお!それって定番じゃん!で、エディはいじめられているの?」
「どうなんでしょう?あの人達から見たら目障りな存在みたいですよ」
「一発ガツンとやってやったら?この前教えた秘孔をつけば身体が爆発するよ」
「何言ってるんですか!あれ、本気にしたんですからね!あと数秒で爆発するって言われて!!」
「ごめん、ごめん。あれは冗談が過ぎたね。まさか君があれ程までに狼狽えるとは思っていなくて逆にこっちが焦ったよ」
「まったく。貴族と言うのはややこしいのですよ。力ずくというのは逆効果で更に恨みを買ってしまいますよ」
「でも、その悪ガキはエディの知り合いの貴族の息子なんでしょ?」
「どうやらそうみたいです。父親はすごくいい人なんですけど。なんでしょうね?」
「いや、結構そのパターンはあるよ。野球選手とか、俳優とか。父親はすごく立派なんだけど、息子や娘は不祥事やらかしたり暴力的だったりね。まあ、大体社会的制裁を受けて消えていくんだけど」
「野球選手や俳優が何か知りませんが、ミノル君の世界にも似た様な話があるんですね」
「まあねえ。父親の持つ権力というか実績や影響力を自分のものだと勘違いしちゃうんだよね。あと、周りがチヤホヤするのも悪いね。親が甘やかすケースも多いし。
でも、君に危害を加える前になんとかした方がいいんじゃない?
僕がいればポアしてあげるんだけどね」
「また訳のわからないことを・・・。でも、事が大事にならないうちに何とかしようと思うよ。
近いうちに父親の子爵と会う予定だから、その時にそれとなく言ってみるよ」
その月の研究会が終了した後にエディはコルソン子爵に話しかけた。
「コルソン子爵、ちょっとよろしいですか?」
「はい、セレオン卿。何でしょうか?」
「コルソン子爵のご子息は国立学院に通われていますよね?」
「はい、その通りです。そういえばセレオン卿も今、学院に通われていると聞きましたが?もしや我が愚息が何かご迷惑をお掛けしましたでしょうか?」
「まあ、私にだけと言う訳ではないのですが、少し問題を起こしてまして・・・」
「やはりそうでしたか。なんとお詫びしていいのやら。実直な性格の兄に対して次男の方は誰に似たのか高慢な態度が目に余り都度注意はしていたのですが・・・」
「まだ大きな問題は起きていませんが起きてからでは遅いので一応お耳に入れておこうと思った次第です」
「ご配慮ありがとうございます。私からきつく言い聞かせておきます」
息子のエドワードに比べて父親のコルソン子爵はまるで別人の様に穏やかで人当たりの良い人だ。長男もその血を継いだようで実直で父の補佐をしっかりと務めている。ひょっとすると評判の良い兄に対して何かと悪い噂しかされない自分にエドワードは腹立たしかったのかも知れない。だからといって彼の行動は決して許されるものではないのだが。
数日後、学院でのエドワードは普段以上に荒れていた。恐らく父親にきつく叱られたのだろう。怒りのぶつけようがなくイライラしているのが誰の目にも明らかで普段一緒に居る取り巻き連中でさえも近寄り難かったくらいだった。
その日の放課後、エディは図書館に向かった。一般には公開されていないこの学院の生徒だけに許可された書籍を読むためだ。
そしていつもの通りその側にはキャシーの姿もあった。
「ねえ、エディ。夏休みはどうするのですか?何かご予定はおありですか?」
「夏休みかあ。そうだねえ、しばらく家に帰っていないので家でゆっくりしようかな?でも休みの間はここの図書館に来れないのが残念だよ」
「エディったら、何も休みの時までお勉強の事考えなくてもいいでしょう。特に決まったご予定がないみたいですね。・・・それでは私の実家にご一緒しませんか?」
「え!?キャシーの実家??なんで?僕が?」
「貴方が行方不明になって私が散々探したというお話はしましたよね?その時両親に無理を言って捜索をしてもらいましたの。最初は両親も身分の違いがどうのってとりあってくれなかったのですけど私があまりにしつこくお願いするものだから最後には協力してくれるのになりました。消息不明になったことを知った時も一緒に悲しんでいたのですよ。無事に見つかったのですものちゃんと報告しないといけないでしょ?」
「う~ん、そんなことが起っていたとは・・・知らぬが仏とはこの事だな・・・」
「もう、何を言っているのですか。覚悟を決めて下さい。これはチャンスなのです!」
「え?チャンス?何の?」
「いえ、それはこちらの話です。気になさらないで下さい」
「よくわからないけど、心配を掛けたのは本当だから、わかった。一緒にいくよ。でも報告というかご挨拶するだけだよ?」
「ええ、それで結構ですわ」
いつも以上にキャシーはご機嫌で笑顔だった。
そんなキャシーと廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
振り向くと同じクラスで見掛けたことのある男女だった。




