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思わぬ再会

入学試験では学院長自ら合格を言い渡されたエディだったが、それには条件が付けられた。


入学試験で見せたエディの実力は余りにも非常識だった。

それが工業都市セレオンを開拓したセレオン男爵自身だと知れば皆納得しただろうが、まさかその男爵本人が国立学院の入学試験を受けているとは誰も思わなかった。


学院ではエディを入学させる事は決まっているのだが、他の生徒達とどの様に接すれば良いのかが意見が分かれるところだった。


結論として、エディにはセレオン男爵を名乗らない事、能力を含めた世間の”常識”を覚えてもらう事。

この二点を了承してもらう形で決着がついた。


エディだけの特別授業は二週間に渡って行われた。

学院側が大丈夫と判断した時点でエディは一般生徒と同じクラスに開放される事となった。


一般クラスとはいっても一番優秀な生徒のクラスであるAクラスだ。


生徒達はそんな裏事情を知らないのでエディをAクラスに満たない成績だったので補修を受けてようやくAクラスに上がれた欠員補充の”補欠”だと思っていた。


担任は女性の先生だった。どこかで見た顔だなあと思っていたら思い出した。入学試験の時に防御系スキルの係官だった人だった。

名前をカレンといい、年はユキノと同じくだいだろうか?赤い髪の毛を後ろでまとめたスタイルの良い理性的な感じだ。


「はい皆さん、席について下さい。今日からこのAクラスに加わることとなりましたセレオン君です。皆さん仲良くしてあげて下さいね」


「皆さん、はじめまして。セレオンと申します。宜しくお願いします」


エディが挨拶すると周囲からクスクスと笑い声が漏れてくる。補欠じゃないかと露骨に発言する者がおり、それに端を発してクラス中が笑い出して感じが悪かった。


だがそんな中で一人の女生徒の反応は違った。


「うそ・・・エディ?・・・エディですわよね!?」


突然自分の事をエディだと言う少女。どこかで会った事があったか?金髪でストレートの髪の少女・・・キャシーだった。

エディの覚えているキャセリーヌとは全く違っているのだが、順調に成長するとこの様になるのかな?と言った感じだった。


「え?ひょっとしてキャシーかい?」


「エディ!!生きていたのですね!!心配しましたのよ!!」


キャシーは周りの目も気にせず席を立ちあがりエディへと一目散に駆けて抱き着いた。

突然のラブシーンに周りも唖然としていた。

キャシーは抱き着きながらもずっと泣いていた。


「ハイハイ、感動の再会は済んだかな?あとでゆっくりしてね。今は授業中ですからね。セレオン君は後ろの空いている席に座ってくれるかな」


なんとかキャセリーヌを引き剥がしてエディは先生の言う席に着いた。

席に着くのを確認した後、カレンは何事も無かったかの様に授業をはじめた。


エディとキャシーの再会に周りが驚いている中で面白くもなくエディを睨みつける視線があった。


「あいつ・・・補欠の分際で・・・」


コルソン子爵の子息、エドワードだった。波乱の予感がしていた。


エディが合流するまでの二週間で教室内でも仲の良い者同士が集まったり派閥が出来たりしていた。

エドワードの周りには貴族の子息達が集まっている。エドワード以外はこの領地でなく隣や遠方の領地から来ている貴族の生徒だ。

この集団は貴族至上主義でやたら偉そうな発言と傍若無人な振る舞いで周りの生徒達からは煙たがれていた。


授業が終わった後はキャシーの質問攻めが待っていた。


とは言え、自分の身分は生徒には言わない様に学院から言われているのでその辺りはぼやかして話をしている。


それからというものエディがどこへ行くにもキャシーが付いてくる様になり、昔さながらの状態となった。


だが当時と違うのはキャシーが小さな女の子ではなく年齢以上に大人びた淑女になっていた事だ。

子供の頃は頭一つ分背が小さかった筈だが、今はそれ程の身長差はない。キラキラと輝く水色の瞳は当時よりも大きく輝いている。


エディも教室で最初キャシーと目が合った時にはドキっとした。


廊下を歩く時などはキャシーが腕を組んでくるので双丘の感触が腕にあたりエディも平常心ではいられなくなる。やはり小さな子供の頃とは違うのだ。

最近、姉のせいでトラウマとなっていたエディなのだが幸いにしてキャシーは小ぶりというか平均的なものだったので圧迫感を感じる事はなかった。


「キャシー、もう少し離れないかい?」


「何故です?私はエディとこうしていたいのです」


全く引き下がる気はないらしい。まあ嬉しくないと言えば嘘になってしまうが周りの視線が痛いのだ。所々から補欠のくせにいい気になってと聞こえてくる。


流石にキャシーもトイレに行くというと付いてはこない。エディが解放される一瞬だ。

エディがトイレに向かおうと廊下を歩いていると人相の悪いニヤケ顔の連中が立っていた。エドワードと派閥の連中だ。


「おい、補欠!止まれ!」


「何ですか?それに補欠・補欠って皆さん言いますけど僕は補欠なんかじゃないですよ?」


「うるさい!下民!俺たち貴族に盾突こうっていうのか?生意気な!」


やれやれ、どうやら勘違いな人達の集団らしい。面倒臭い。


「あれれ?どこに貴族の方がおられるのですか?見当たりませんが?」


「ふざけるな!俺はコルソン子爵だぞ!」


「え!?まさかコルソン子爵様の跡を継がれたのですか?それはおめでとうございます。まさか跡も継がれていないのに子爵を名乗られているのですか?だとすればこれは些か問題発言ですね」


「な・お前!!」


痛い所を突かれたという感じだ。コルソン子爵を名乗っていいのは父親だけなのだ。ここにいる全員が跡取りかも知れないが現時点で貴族を名乗っていいのはエディ只一人だ。だがここで自分の身分を明かすつもりは毛頭なかった。


これ以上話すことはないとばかりにエディが通り過ぎようとしたところを後ろから肩を掴まれた。


「まだ話しは終わってない!」


意外としつこい。さてどうしようかと思っていると後ろから声がした。


「貴方たち!!何してるのです!!!」


声の主はキャシーだった。エディの戻りが遅いと心配して様子を見に来たのだろう。


「キャセリーヌ・・・いや、別に何もしてない。ちょっとした挨拶をしていただけだ。いくぞ!」


エドワードと取り巻きはお決まりの捨て台詞を言いながら戻って行った。


「エディ、大丈夫ですか?何かされませんでした?」


「うん、大丈夫だよ」


「私はあの人達みたいに貴族を鼻にかけて威張り散らす人が大嫌いなのです」


「キャシーは昔からそうだったよね」


そうだった。エディは思い出した。子供の頃にエディを馬鹿にした貴族の子供に怒って取っ組み合いの喧嘩をキャシーがしたことを。キャシーはエディの事になると見境がなくなり普段の淑やかなキャシーと同一人物かと疑う程に豹変する。

今回もそうならなかった事に胸を撫で下ろした。


「なにかあったら私に言ってください。エディの事を守りますから」


「あは、ありがとう。でも僕がキャシーの事を守るナイトでなくてはね」


エディの言葉にキャシーは頬を赤く染めた。


その後エディの側には常にキャシーという”護衛”がいるため自称貴族達は近寄ることが出来ずにいた。


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