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国王と辺境伯

エディが国立学院の入学試験を受けていたのと同時刻にカーソン辺境伯は王都にある王城へと来ていた。


ナルタニア王国の王都は国のほぼ中心に位置しており、カーソン辺境伯領は王都のほぼ南に位置する。

カーソン辺境伯領から王都までの道のりは馬車でほぼ2日の距離である。

直線距離での移動ならもう少し早く着くのだが、カーソン辺境伯領の北には深緑の森という魔物や獣が多く棲む危険地帯であり、そこは回避する必要があるため迂回する分、多くの時間を費やすこととなる。


エディの開発した魔除け剤の効果でも深緑の森を真っ直ぐに突っ切るのは無謀と言えるため誰も実行しようとしない。

何よりも馬車が通る様な道が存在しないため道づくりから始めてまで行こうとは思わなかった。


むしろ通常の迂回ルートでも深緑の森から溢れてきた魔物や獣に襲われる事が多かったのが魔除け剤のお陰で無事に通れる事になった事の方が喜ばれた。


「やっぱり坊主の作った魔除け剤ってえのは優秀だな。今までなら絶対2・3回は戦闘になっていた筈だが、今回は嘘の様に襲撃がなかったからな」


「はい、セレオン卿 様様でございますね。魔物に襲われることのない分いつもよりも早く到着しております」


「なあ、爺よ。やっぱり俺がここに来なきゃいけなかったか?俺はどうもこういう堅苦しいところは苦手でなあ」


「はい、この度は定例の謁見ではなく国王直々のご指名によるものですので」


「またあいつが面倒を押し付けて来たりしねえだろうな」


「お口が悪くございますよ。国王に忠実な家臣の目もありますので謹んでいただきたく存じます」


「はいはい、判りました。判りました。おっと、この先だな。では行ってくる」


「はい、いつも通りお待ちしております。くれぐれも失礼の無き様、お気をつけ下さい」


カーソン伯は国王謁見の間の前で執事長の爺と別れて単独で入室をした。当然武器の類は事前に預けてある。


謁見の間の奥には国王と思わしき人物が腰を掛けていた。

後方には護衛の国王親衛隊が並んで控えている。


「おお!セレス、やっと来たか!わざわざすまんな」


「まったく、人使いが荒いぜ。ここの国王さんはよ」


爺に予め注意されていたにも関わらず普段通りの口調をカーソン伯は崩さなかった。


「まあそういうな。出来れば俺も昔みたいにお前と暴れまくりたいんだが周りが許してくれんでな」


「そりゃあ一国の国王ともあろう者がその辺で暴れ回ったら示しがつかんだろうよ。

で、今回呼んだのは又厄介事か?」


「まあそう急くでない。最近カーソン辺境伯領がいろいろと面白いみたいじゃないか。話を聞かせてもらいたくてな」


「おう、最近になってようやく領地らしくなってきたって感じだな」


「魔除け剤、あれもお前のところから出てきたんだったな。あれは国の財源としても治安の維持としてもかなり助かっているぞ」


「あれはうちの領地にいる小僧の考えたもんでな。他にもかなり変わった者を発明しては驚かせてくれてるぞ」


「この前言っておったセレオン男爵だったな」


「ああ、あいつのお陰でカーソン領が一気に活気づいたからな。今頃、国立学院の入学試験を受けているところだな」


「学院か。まだ十三歳だったな?」


「おうよ。確かに十三歳なんだか、大人と変わらねえというかそれ以上に感じる事があるぞ。まあ、とは言え、俺からすれば息子みたいなもんだけどな。今はトーマスが補佐についていろいろと教えていることろだ」


「お前のところも将来有望な若者がいて安泰だな」


「そうだといいんだけどな。で、今日の話の本題は別にあるんだろ?世間話をわざわざするために俺を呼んだ訳でもあるまい」


「ああ、その通りだ。今から20年程前、今のカーソン辺境伯領を他国から取り返した戦いを覚えているか」


「そりゃあ、忘れろっていう方が無理だろ。敵も味方もかなり死んだ激戦だったからな」


「我が国に領土を取り返された敵国は被害も甚大だったため国内もかなり混乱しておった。その隙に攻め込んで国を落としたのがザリウス帝国になる」


「ガリウス帝国な。漁夫の利を得るなんてセコイ真似しやがる。こっちはなんとか撃退することが出来たけどな」


「まあ、地理的にこちらの方が遠かったのが幸いしたな。連戦であったためガリウス帝国も一気に攻め入る事が出来なかったのだろう」


「で、そのガリウス帝国がどうしたって?」


「最近また動向が怪しくなってきている」


「ああ、こっちでもそれとなく探っているが、そう遠くないうちに攻めてくるだろうな。今は獲物が肥えるのを待ってるという感じだな」


「何か対策は打ってあるのか?」


「まあ、それなりにはな。さっきの小僧の話になるが、セレオンは工業都市と同時に防衛都市としての役割を持たせてある。

都市を構築する段階で防衛を考えているから、そりゃあ凄え鉄壁の守りとなるって寸法よ。あの坊主の発想はどこまでも俺を驚かせやがる」


「なるほど。対策があるなら安心だな。何しろこちらから軍勢を送るにしても数日は掛かるからな。援軍の到着までに落とされていたのでは目も当てられないから何としても持ちこたえて欲しい。


私もそのセレオン卿に会って見たくなったな」


「そんな事、本人に言ってみろ、腰を抜かしてしまうぞ。あれは想像以上に小心者だからな」


「そうか。でも会いたいのは本当だ。これから自領もカーソンも益々大きくなっていくだろう。国としても何らかしらの褒賞を与えない訳にもいかないだろう。それにナルタニア全体の国力を上げるためにも彼の力を借りたいと思っている」


「なるほど。まあこれから学生になって勉強しようって感じだからな。俺の方から機会を見て伝えておこう」


「うむ、頼んだぞ。で、今夜はゆっくりしていくんだろ?久しぶり語り合いながら酒でも飲もうではないか」


「おう!そのつもりだ。若い奴らにもカーソン奪還作成の雄姿を語らないといけねえからな」


ガハハとカーソン伯は高笑いをした。

後ろに控えている親衛隊の何人かの顔が引きつっている。恐らくその武勇伝を延々と聞かされた経験があるのだろう。


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