適正検査
受付は講堂前に机が並べられているのだが、受付が済んだ順に講堂の中に入る様に指示された。
国立学院の建物はカーソン市の中でも近代的な部類の建物で建築されてそれほど年数が経っている様には思えない。
カーソン全体に言える事だが、古い歴史を感じさせる建物が見当たらないのが不思議だった。
受付を済ませたエディは講堂の中へ足を踏み入れた。
講堂はステンドグラスの採光もあって明るい広い空間だった。
恐らく生徒を集めた集会とか催しが行われる場所なのだろう。
今日は試験のためのレイアウトになっているので普段がどの様な形になっているのかは判らない。
受験生は一人ひとりが受付で番号を割り振られており、試験は番号で呼ばれることとなっている。
エディは54番の札を受け取っている。
「はい、次。54番」
エディは呼ばれるがまま試験官の元へと駆け寄った。
「54番は僕です」
「それでは番号札を見せて。はい。次にこの水晶玉に手を置いて」
エディは言われるがままに従った。
「これは君のステータスを調べるものなんだよ。試験というよりも適正判断だから緊張しなくていいよ」
「は、はい!」
緊張しなくていいと言っても適正で何かマズイものでも出ないかとエディは冷や汗が出ている。
「はい、出たよ。君の才は”理”というものだね。魔力適正は・・・5段階中2だね。詳しくは紙に写しておいたので後で良く見ておくように」
そう言って試験官から紙を手渡された。
「あのう・・魔力適正の2というはやっぱり駄目なんでしょうか?」
「いやいや、勘違いする人がいるけどそういう訳じゃないよ。
魔力適正というのはバランスが取れていないと下がる傾向にあってね。しかも現時点での適正だから、学院で学ぶことで飛躍的に向上させることも出来るんだよ。
学院としては現時点の数値評価というよりも学院での成長度合いの参考にするといった意味で測定している感じかな」
「魔力適正のバランスですか?」
「魔力適正のバランスというのは、例えば威力が必要な魔法を使おうとすると引き出せる魔力は適正値が高い程多くなるんだ。
それとは別に魔力の保有値というのがあってこれも高くなければ引き出せる量は限られてくる。
この二つ以外にも魔力を操作する力、抑制する力も必要だよ。
つまり全体のバランスが保てていなければ実用では使い辛いものになってしまうということなんだ。
私の渡した紙にはその辺の数値も記してあるから。
具体的にどの数値がどうというのは実際に学院の生徒になってから学ぶことだよ」
「はい、詳しく教えていただいてありがとうございます」
試験官はエディの質問に面倒臭がることもなく順序立てて丁寧に教えた。
それを聞いたエディはこの様な先生のいる学院なら頑張ればきっと自分も立派に成長できるんだろうと確信した。
エディは適正検査を終えて受験生が待機している場所まで移動した。
先程試験官から渡された紙をエディは眺めていた。
ちなみに紙というのは従来では羊皮紙を用いており、非常に高価なものだったのだが、エディの考案で木材を原料とした製紙をセレオンの工房で生産しはじめたお陰で世間一般で紙が低価格で普及したのだ。その影響がここでも見る事ができた。
そして手渡された紙に書かれていたステータスは以下のものだった。
魔力適正:2
魔力量 :5
魔力操作:3
魔力制御:1
属性適応:火、水、風、土、光、闇
才:理
才技能:分析、分解、合成、置換
といった感じで記載されいた。
魔力量はかなり多いみたいだ。魔力操作は普通といいたところか。一番低いのは魔力制御でこれが適正値に影響を与えているらしい。
魔力制御というのは魔力操作と似た意味合いに見られがちだが、魔力操作というのはファイアボールで例えるとファイアボールをどこに向けて放つというコントロール系が魔力操作でファイアーボールの大きさや速度という要素が魔力制御となる。
魔力量の多いエディが魔法を放つと自分の意思に関係なく特大魔法を放出する可能性があり危険な状態にある。
この様なアンバランスな状態を指導により適正バランスに育てるのが学院が存在する意義であったりする。
もちろん魔力だけでなく職業としての適正値を伸ばしていくというのが学院のポリシーで魔力や才など幅広い能力に対しての育成機関なのだ。
エディは紙を見つめていたのだが違和感に気付いた。
数値がぼやけて見えるのだ。ひょっとしたら分析を使えばもっと別の物が見えるのかも知れない。
そう思ってエディは紙を凝視し分析を使ってみた。
魔力適正:Lv2(15,698/20,000)
魔力量 :Lv5(150,000/150,000)
魔力操作:Lv3(23,589/50,000)
魔力制御:Lv1(538/8,000)
属性適応:火(Lv1)、水(Lv3)、風(Lv1)、土(Lv5)、光(Lv1)、闇(Lv1)
才:理 Lv5
才技能:分析(Master)、分解(Master)、合成(Master)、置換(Lv2)
今までは自分のステータスでレベルしか判らなかったものが数値化されて見れる様になっている。
これは非常に便利だ。次のレベルアップまでの数値が簡単に判る。
属性や技能のレベルも折りたたまれているだけで、そこを指定すると必要経験値が表示された。
今までエディは魔法と呼べるものは使ってこなかった。正確には使わなかったのではなく使い方が判らず使えなかったのだ。
にも拘わらず水や土の属性レベルが上がっている。
エディはセレオンの開拓に惜しみなく才の技能を使ってきた。造成や護岸工事など土や水を扱うことが多かったのだが、それらと無関係とは思えなかった。
ちなみに才技能にある置換というのはセレオンの開拓作業を行っている間に才レベルが上がり習得した技能だ。
置換は言葉の通り物を置き換えることができる能力。
例えるならコップに入った水とその隣に小石が置いてあったとするとコップの中の水と石を入れ替える。これが置換である。
何でも置き換えられるという訳でなく、等価交換が基本となる。コップの中の水と小石は同じ質量分だけ交換される。初期レベルでは100パーセント交換が必須なのだがレベルが上がるとその比率が緩和される。エディのレベルは二段階なので80パーセントの許容値となっている。
置換は使うと結構便利な技能だ。
「この魔法水晶で書かれた能力値はこんな使い道があったんだね。これを今後参考にしていけば何を強化すれば良いか判るね。これだけでも今日ここに来た価値があるよ」
エディはしばらく紙を見つめながら今度どれを鍛えようか考えていた。




